2016年7月12日(火)

人工知能から学ぶ、独創的な学習の方法

“マネジメント”からの逃走 第51回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
若新 雄純 わかしん・ゆうじゅん
人材・組織開発プロデューサー/慶應義塾大学特任講師

若新 雄純福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。
若新ワールド
http://wakashin.com/

執筆記事一覧

若新雄純=文
1
nextpage

人間の「学習の壁」

これまで、人工知能というものは計算や処理が速く精度が高いだけで、囲碁や将棋のような複雑な発想や思考が必要なゲームでは人間に勝てない、と言われていました。人間の打つ意外性のある手は、機械にはなかなか対処できないものだと考えられてきたからです。

ところが、最近の人工知能は、むしろ人間のほうが「その手は何だ?」と驚くような独創的な手を打つようになり、その上に処理の速度や精度も非常に高いわけであり、いよいよ敵わない存在になってきたようです。

先日、とあるテレビ番組の特集で、人工知能の「学習方法」が紹介されていました。僕たち人間にとって、とても示唆に富む内容だったと感じました。

番組の中では、学習段階の人工知能に簡単なテレビゲームをやらせていました。人間になにかしらのゲームを提供するような場合であれば、そのやり方や進め方、コツなどを教えるのが当然です。ところが、その人工知能には、ゲーム細かいルールや進め方などはまったく教えずに、ただ、「高い点数を取れ」という指示だけでゲームをスタートさせていました。

当然、最初のうちはどうしていいかわからずに、無茶苦茶な動きをして、すぐにゲームオーバーになってしまいます。しかし、何度も何度も失敗を繰り返しひたすら試行錯誤するうちに、偶然うまくいく方法を見つけたりしながら、ゲームの進め方を学習していきます。するとその過程の中で、もともと「やり方」を細かく教わっていないために、「より効率的な方法」や「普通ではない変わった進め方」などを自由に発見していくのです。つまり、最初から常識やパターンの枠がない分、失敗が多く効率が悪いようにみえて、結果的には独創的なやり方を身に付けることができるようなのです。

僕たちは大人になるにつれて、何かをこなすとき、まずはやり方をできるだけ細かく具体的に教わり、上手な人を真似するようになっていきます。そのほうが、当然ある程度の合格レベルまではすぐに到達することができます。しかし、枠にしばられ、それ以上の「独創的」な段階にはなかなか進めない。そんな、僕たち人間の「学習の壁」を感じました。

PickUp