スポンサーリンク 廃墟フェチにとって最高峰はここだ!! 2016/7/13 2016/7/13 ノルウェー, 彼女と世界二周目 2016年7月2日(土曜日)【ノルウェー】 スバールバル諸島昼前、気がついたらこんなところにいた。「もうダメ………私動けない…………あぁ!崩れるー!!怖いー!!」「大丈夫!!大丈夫だから手につかまって!!」ガラガラと崩れ落ちる足元の岩場。急斜面で捕まるところがなく、下を見ると人が豆粒みたいに歩いている。ビュービュー吹きすさぶ山おろしで髪の毛が舞い上がり、股の下を通り抜けていく。はるか遠くには氷河が横たわる雪山が広がっていた。昨日のこと。歌っている時にガイドの人とお話をした。「僕らまだハイキングとかしてないんですかど、どこかオススメのところってありますか?ライフルなしで行けるところがいいんですけど。」「それだったら2番炭鉱とかいいよ。種子貯蔵庫よりも全然面白いよ。」2番炭鉱というと、町から内陸方面に向かって歩いたところにある左手の山の中腹にズゴーっとそびえる巨大な廃坑跡だ。その異様な存在感に下から写真を撮ったのを覚えていた。「あそこって入っていいんですか!?」「あぁ、中に入って探検することができるよ。でも気をつけてね。そこは自己責任だからね。」廃墟フェチの俺からしたら世界最北の炭鉱の廃墟なんて垂涎もの。日本でも、山の上に取り残された炭鉱町や観光ホテルの跡地とか数々の廃墟を探検してきたけど、だいたいどこも立ち入り禁止になっているので中に入るのは難しい。でもその2番炭鉱は今もたまに物好きな観光客が探検に行く場所として容認されているんだそう。しかもだ、それだけでロマンが半端ないことになっているのに、そこに輪をかける話を聞いた。お寿司屋さんのアズサさんに2番炭鉱のことを聞いたら、こんな話を教えてくれた。黒い缶の話。誰がやっていることかはわからないけど、この世界中の色んな僻地に、とある黒い缶を隠して回っている人がいるんだそう。その缶の中にはなにやら秘密の暗号が書かれており、全て集めるとひとつのメッセージか何かになるんだという…………その世界中に散らばったミステリアスな黒い缶のひとつが、あの2番炭鉱のどこかに隠されているとのこと。ぐおあお………………世界最北の町、その廃坑の廃墟の中に、秘密の鍵のひとつが眠っているなんて…………まるでドラゴンボール!!ここまで聞いて行かない手はない。そうして俺たちは朝から山に足を踏み入れた。ビュウ!!と風が吹いて、体がよろめいた。ガラガラ………と崩れ落ちる足場の岩。「これって絶対こんな危険な道じゃないよ………もっと簡単な道があるはず………」「で、でももうここまで来てしまったら引き返せないから…………なんとか進もう。大丈夫、俺の手につかまって!!」町外れから山に登り始めたんだけど、相当な急斜面で、しかも山肌は細かい岩に覆われており不安定この上ない。身軽な俺でさえズザー!っと滑ってしまう。転がり落ちたらどこまでも止まることができないほどの角度で、カンちゃんは恐怖に顔が引きつっている。周りには壮大な山々が連なっており、今日は天気がいいおかげで海の向こうの雪山の連山までくっきりと見晴らすことができた。そしてその分、自分たちがものすごい場所にいるとわかって足がすくむ。ふと、足元の岩を見ると、岩の表面になにか木の模様のようなものがついているものがあった。そういえばテレサの旦那さんがブラックストーンを見つけたら持って帰ってくるといいと話していた。旦那さんが持っていたブラックストーンには、古代の植物の模様がくっきりと刻まれており、それはまさに博物館なんかで見る化石の一種だった。この最果ての島ではそんな化石がそこらじゅうに転がっているんだそう。でも、もちろんそれを拾い上げる余裕なんてなかった。なんとか一歩一歩、少しずつ少しずつ山肌にへばりつきながら進んでいき、斜面の向こうに巨大な廃坑が見えてきた。あれが2番炭鉱か………………とんでもないところにあるんだな……………はやる気持ちを抑えながらゆっくりゆっくり進み、ようやく、ようやく建物の横まで来ることができた。あまりの安心感にどっと力が抜けた。ふぅ……こんな危険な道じゃないと来られないなんて、もうすでに冒険気分はマックスだよ。そして意を決してボロボロの建物のドアに手をかける。ギィ………と音を立てて開いたドア。真っ青な空の下、暗闇の世界に踏み入った。「カンちゃん、足元気をつけてね。床が抜けるかもしれないから俺の後を同じようについてきてね。」「うん、わかった!」建物の中は見事なまでの廃墟だった。木造の建物なんだけど、あちこちが壊れており、外の光が漏れこんでいる。人の手から離れて放置されている建物が持つ独特な寂寞が、木板にこびりついている。ここは坑道から掘り出した石炭を選別し、ゴンドラに載せて港へと送っていた作業場だったんだろう。様々な機械が錆びついたまま取り残されていた。壁にはベリベリに破れて色あせているけど、女の人のセクシー写真が貼られているのも見られる。きっとここで働いていた男たちが慰めに貼ったものなんだろうな。こんな世界の最果てで雪山を眺めながら働いていた男たちは、どんなことを考えながら穴を掘っていたんだろう。建物の中はとにかく寒く、震えるほどだった。あちこちに吹き込んだ雪がこんもりと積もっており、所々は氷に覆われている。ワイヤーを巻き上げる巨大なウィンチも、氷に埋もれて固まっていた。それは坑道も同じだった。暗闇の湿った建物の中、iPhoneのライトで足元を照らしながら奥へ歩いていくとトロッコのレール伸びており、それをつたっていくと、ひときわ暗闇に覆われた坑道の入り口があった。ここか…………と息を飲んで足を踏み入れようと思ったんだけど、その入り口は完全なる氷で閉ざされていた。支柱の木材までが氷で埋まっており、中に入ることは不可能だった。ほんの少しの隙間もない。天然の開かずの扉によって廃坑は封印されていた。いやぁ…………こりゃ冒険心がかきたてられるわ。この先に秘宝でも隠されてそうだけど、誰も中に入ることはできないんだな。ちなみに世界中にあるサンタクロースの住んでいるという場所。この坑道もまた、サンタクロースが住んでいると言われている場所のひとつなんだそうだ。建物の中にはトイレやロッカールームなど、様々な小部屋があった。真っ暗闇なのでなかなか怖いが、どんどん奥へ奥へと入っていく俺にカンちゃんも果敢についてきてくれる。工事のドリル、何かの瓶、棚など、当時のものがライトに照らし出され、木造の建物の古びた雰囲気が時代を感じさせてたまらない。廃墟って本当刺激的だ。しかし、どれほど探しても例の黒い缶は見つからない。建物の裏手、山の斜面を登るスダボロの木のハシゴがあったので、そこそこ腰が引けながら登っていく。とんでもない高所で、あちこちが崩れ落ちており、振り返ると壮絶な山並み。こいつはたまらん。でもやっぱりここにも黒い缶はない。最初に山の斜面を登りすぎたことで2階から入っていたようで、建物の中にあった長い階段を降りて、さらに1階を探検した。1階はまだ保存状態が良く、石炭を運ぶベルトコンベヤーなんかの大がかりな機械が、稼働していたころの姿をすっかりとどめながら錆びついていた。そして人の出入りの跡もあった。柱には、ここは歴史的な建造物なので物を壊さず丁寧に見学してくださいね、なんていう親切な張り紙までしてあるのには驚いた。日本だったら危険だから立ち入り禁止!!ってのが普通だ。結局ぐるりと回ってガッポリと大きな穴の開いた入り口らしきところまで出てきてしまった。そこには色あせたノートが取り残されてあり、ここに探検に来た物好きたちの名前が記されていた。ノートには日本人の名前はなく、せっかくなので金丸文武、神田奈緒と書き込んでおいた。ここが一般的な建物の入り口みたいだった。あぁ、黒い缶、発見できなかったな。でもひとつ発見してしまったら他のが気になって世界中の僻地に行かないといけなくなるところだった。ロマンはあるけど、ここに来られただけでも充分ロマンだ。うー、まだ体が震える。大満足だ。スバールバルの観光は種子貯蔵庫とここに来られたことでもう思い残すことはないくらいに大満喫。最高に楽しかった!!そして帰り道はそこから踏み跡の道があって車道まで15分で降りられた。俺たちさっき死にかけながら1時間半も山の斜面をクライミングしてきたのに!!!レインディアも笑うわ!!!!スバールバル2番炭鉱、マジでオススメ!!でも完全自己責任で!!!テレサの家に置かせてもらっていた荷物を取りに行き、アメイジングだったよー!!とみんなに写真を見せた。すごい!!と驚いているテレサや息子たち。この可愛い息子がテレサの性格をそのまま受け継いで、明るく、そしてとびきりピュアに成長するといいな。テレサ、パパさん、ジェイク、そしてテレサの兄弟のみなさん、本当にありがとう!!おかげで生き返ったよ!!「あ、フミさん、今海辺にベルーガが大量に近づいてるみたいですよ。私も今見に行ってたんです。見たほうがいいですよ!」いつものお寿司屋さん、キタに挨拶に行くと、シェフのアコさんがそう言った。アズサさんは今日は遅番らしくお店にはまだ来ていなかった。ベルーガといったら白イルカのことだ。さすがは自然の宝庫、スバールバル。そういうことならと、のんびり歩いて海辺に向かった。今日は風が強く、歩いていてよろめくくらいだった。でも空は雲ひとつない快晴で、きっと今日ハイキングやクルーズツアーに参加した人は最高の景色を堪能していることだろうな。海辺にやってくると、そこには数人の家族連れがいて暖かい日差しの中で子供たちがはしゃぎまわっていた。ベルーガはどこだ?と海を見てみるが、それらしきものの姿はない。そりゃそうか。大量に出ているとは言っても、そんなにずっと同じ場所にいるはずもないよな。とっくに遠くに行ってしまったか。波打ち際にベンチが置いてあったのでカンちゃんと座って海を眺めた。遠くに見える山並みと氷河。頭上をカモメが飛び、そこにあのアングリーバードが襲いかかっており、カモメも迷惑そうに逃げている。のどかな夏の時間。きっと、つかの間の暖かい季節なんだろうな。あと2ヶ月もすれば太陽は傾き、1日中夕陽が続く季節になり、冬の極夜になると4ヶ月間の暗闇がやってくる。なんて不思議な島なんだろうな。今まで住んでた日本という土地からしたらこんなに季節がめちゃくちゃなところもない。いや、逆にウルトラはっきりしてるのかな。ここにいることがそれだけで本当にスペシャルなことに思える。今までいろんなところまで行ったけど、この世には面白い場所はまだまだ残っている。全部に行くことはできないだろうけど、知らない場所に行きたいという想いが残っている限り、俺は俺でいられる。その想いを我慢しなくていいカンちゃんという人と出会えたことだし。あぁ、幸せだなって心から思える。今日は朝から山登りしてヘトヘトになっていたので早めに寝ることにした。アズサさんに挨拶に行き、目をつけていた町外れの小屋に行って、そこのベンチに座ってパンを食べながらビールを飲んだ。目の前には壮大な山がすごーっとそびえている。こんな光景、またしばらく見られないだろうな。でもきっとまた心が踊る場所に行くぞ。小屋の中にマットを敷いて寝袋に包まった。カンちゃんがすぐに横でフゴフゴいびきをかきはじめた。疲れてたんだろうな。可愛いなぁ。さぁ、明日はオスロに戻るぞ。~~~~~~~~~~~~~~~~~~ブリスベンの宿をアゴダでとってくださったかたがいました!!ラムチョップ食べたい!!いや、ゴールドコーストのラーメン横丁でラーメン食べまくりたい!!どうもありがとうございます!!