伊沢友之
2016年7月12日20時58分
自分の毛髪の「種」を培養し、頭皮に植えれば脱毛症に悩む頭に髪がよみがえる――。そんな再生医療技術の実用化を目指すと、京セラと理化学研究所、医療ベンチャーのオーガンテクノロジーズ(東京)が12日発表した。神戸市を拠点に共同研究を進め、2020年の実用化を目標にする。
理研の辻孝チームリーダーの研究グループが開発した器官再生の技術を使う。自らの後頭部から採取した髪の毛の「種」を医療機関などで培養し、脱毛部分に外科手術で戻せば、「畑」にあたる頭皮の下で種が育って頭髪が生える仕組み。マウスでは12年に再生に成功しているという。
現在普及している治療法には、後頭部の頭皮を切り取って患部に一本ずつ移植するやり方があるが、この場合、頭髪の数は増えない。今回の再生技術を使えば頭髪の数も増やせる。採取する髪の数も、今までの20分の1程度の100本程度で済む見込みだという。
3者は今後2年かけ、治療効果や安全性を調べ、生産技術を開発する。京セラは微細加工技術で、「種」の製造工程を自動化する機械などで貢献する。最終的にはコストなどを見極めて実用化の判断をする。
日本の再生医療ビジネスは、臓器再生など高度医療に取り組むケースが多い。一方で、脱毛症の患者は国内に1800万人以上とされ、ヘアケアや育毛剤、かつらなど関連市場は年4350億円ある。理研の辻リーダーは「実現可能な分野から実績を上げ、ほかの臓器再生の事業につなげていきたい」と話す。
再生医療技術を使った毛髪再生では、資生堂もカナダのバイオ会社と技術提携し、6月に東京医科大の研究チームなどと臨床研究を始めると発表。18年中の事業開始を目指している。(伊沢友之)
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