南相馬で解除 常磐線の小高−原ノ町が運行再開
東京電力福島第1原発事故で福島県南相馬市に出ていた避難指示が12日、ほぼ全域で解除された。避難指示が出た原発周辺11市町村で対象住民が1万人を超える解除は初めて。5年4カ月に及ぶ長期避難や放射線への不安から、多くの住民は避難先で新生活を始めており、帰還は一部にとどまる見通しだ。
解除の対象は、放射線量の高い帰還困難区域(1世帯2人)を除く、同市南部の小高区全域と原町区の一部の計3487世帯1万807人。帰還に向けた準備宿泊は691世帯2006人(10日現在)の登録にとどまる。子育て世代の大半は戻らない一方、高齢者ばかりになった地域のコミュニティーをどう維持するか、課題は山積している。
この日は不通になっていたJR常磐線小高−原ノ町間(9.4キロ)の運行も再開。車窓から田園風景に見入る乗客も多く、沿線のあぜ道で「おかえり」と横断幕を掲げ、手を振る住民の姿もあった。
小高駅であった避難指示解除の式典で、桜井勝延市長は「これが復興の終わりではなく本当のスタートだ」と述べた。同県浪江町から原町区の仮設住宅に避難している東海林(しょうじ)サチ子さん(60)は常磐線に乗った後、「浪江から原町の理容学校に通ったときの思い出の電車。懐かしい景色を見て『私も頑張らなきゃ』と思いました」と感激していた。残る不通区間の相馬(福島県相馬市)−浜吉田(宮城県亘理町)が今年中、竜田(福島県楢葉町)−小高間も2020年3月までに運転を再開する。【大塚卓也】