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コンテンツは「メディア」ではなく「カタリスト」に
スターバックスで一番小さいドリンクのサイズは、ご存じの通りスモールです。その次に大きなサイズがトールで、グランデと続きます。今やもう当たり前になってしまって何も感じませんが、これには最初少し違和感を覚えました。標準サイズがわからないのです。中庸を重んじる日本人としては、まず小さいサイズと大きいサイズがあって、その中間を「ミディアム」としてほしいところです。そうすると何となく、サイズが選びやすくはないでしょうか。
「メディア(media)」というのは、「ミディアム(medium)」の複数形です。ミディアムというのは、上記の用法のとおり中間を意味しますが、複数形があることからもわかるように、中間にある「もの」、間に入る「もの」、という具体的な意味も持ちます。メディアの本来の意味は、この「間に入るもの」です。中間にあって媒介するもの。広告の文脈で、何と何の「中間にある」ものなのか、といえば、企業と消費者です。何を媒介するのかというと、企業と消費者のコミュニケーションです。
大前提として、本稿におけるメディアとは、ヤフーや日経新聞など広告主が広告メッセージを配信する場所を示すだけではなく、上記のとおり「消費者と企業の中間にあって企業のメッセージを媒介するすべてのコンテンツ」を意味します。広義のメディアとも言えそうですが、実際そう考えないと、全てが広告メッセージである広告主のブランドサイトが、なぜオウンド「メディア」なのか理解できないはずです。
トラディショナルメディアが凋落し、デジタルメディアの時代がやってくる。ペイドメディアだけではもう消費者にリーチしきれず、オウンドメディア・アーンドメディアの重要性は高まるばかりだ。こうした議論のなかで、企業と消費者の間に入ってメッセージを媒介する「メディア」という発想自体の妥当性は、あまり議論されてきていないように思われます。
結論を急げば、トラディショナルであれデジタルであれ、ペイドであれオウンドであれ、そもそもメディアという発想自体が、近く賞味期限をむかえると筆者は考えています。その代わりに台頭してくるのが「カタリスト(触媒)」と名付ける概念です。企業と消費者の間に入ってメッセージの伝達を媒介するのがメディアなのであれば、カタリストは、1.消費者と消費者の間に入って、2.消費者同士のコミュニケーションを、3.促進するものです。
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