接種後に体のしびれや痛み、記憶障害などの健康被害が報告されたとして、厚生労働省が子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の積極的な接種勧奨を中止して3年。「このまま中止が続けば子宮頸がんの患者が増えてしまう」と危機感を募らせる日本産科婦人科学会などの学術団体に対して、被害者団体は「治療法がないのに接種を再開するのは時期尚早だ」と主張する。被害者らは月内にも、国とワクチンメーカーを提訴する方針で、問題は長期化する可能性もある。
しびれや痛みなどHPVワクチン接種後の副反応として知られていない症状が報告されたとして、厚労省がHPVワクチンの積極的な接種勧奨を中止したのは平成25年6月。原則として無料で接種でき、健康被害が出た際に治療費などが受け取れる「定期接種」となってわずか2カ月後のことだった。
厚労省は患者の追跡調査を行うとともに、接種後の痛みを治療する協力医療機関を27年3月までに全都道府県に整備。日本医師会も診療の手引きを作り、患者への対応をまとめた。
こうした動きを受け、日本産科婦人科学会や日本小児科学会などの17学会は今年4月、「ワクチンの有効性は認められており、接種後に生じた症状に対する診療体制も整った」として、ワクチンの積極的な接種を推奨するとする見解を発表した。
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