北大西洋条約機構(NATO)の指導者たちは8日、ポーランドの首都ワルシャワの大統領宮殿で夕食の席に着き1日を締めくくった。ロシアおよび、NATO内における東欧の地位について、ロシア政府に強力なメッセージを送る必要性に関する厳しい協議が行われた。
世界最強の軍事同盟であるNATOの首脳は1人ずつ、慎重な言い回しで口々に結束を誓った――ギリシャのアレクシス・チプラス首相が切り出すまでは。
チプラス氏はほかの首脳とは対照的に、もうロシアとの対立を終わらせるべきだと述べた。61年前にワルシャワ条約の調印を照らしたのと同じきらめくシャンデリアの下で、チプラス氏は公式見解から逸脱し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とパートナーシップを組むべきだと訴えた。米国のバラク・オバマ大統領はすぐさまその立場を打ち消した。
2014年以来初めてNATO首脳が全員集まったワルシャワサミット。結束を誓う数十件の公式声明が出される中で、ロシアとの関係をめぐる分裂の兆候が顕著になった。
ワルシャワでの2日間の公式討議は、NATOの新たな軍事体制を定めるさまざまな技術的文書と政策を生み出した。欧州の秩序の基盤を揺るがしている幾多の安全保障上の脅威と政治的な変化のさなか、外交官らが本当に努力したのは29カ国のブロック(注:加盟交渉中のモンテネグロが参加)をしっかりまとめることだった。
■フランスにいら立つ東欧諸国
サミットに向けた準備期間中に、ドイツのフランク・バルター・シュタインマイヤー外相は、ポーランドで防衛の軍事演習を行ったNATOを、ロシアと「戦争をしたがっている」と批判した。またサミット直前になって、フランスのフランソワ・オランド大統領は、ロシアを敵ではなく「パートナー」として扱うべきだと述べた。
NATO高官と一部加盟国の政府高官数人は先週末、両氏の立場を「国内に向けた政治的な策略」として一蹴した。あるNATO高官は、サミットの密室では「オランド大統領は完全に別人のようだった」と話している。
だが、すべての関係者がこの見方を取っているわけではない。あるNATO高官は懸念を次のように説明する。
ロシアとの関係改善を求める声の高まりを、純粋な国内政治工作と見なすことは容易だが、欧州連合(EU)に関する英国の国民投票の結果があらわにしたように、欧州各地で国内政治が次第に国際的な議題を動かすようになっている――。
ロシア政府と対処する際にかねて最もタカ派の立場を取ってきた東欧のNATO加盟国は、いら立ちを強めている。