韓国MD配備 東アジア安定のために
米国と韓国が、最新鋭の地上配備型ミサイル防衛(MD)システムである「終末高高度防衛(THAA( サード)D)ミサイル」を在韓米軍基地に配備すると決めた。東アジアの平和と安定に役立つものとしてほしい。
宇宙空間まで上昇した弾道ミサイルを大気圏再突入の前後に撃ち落とす装備だ。韓国の現有システムでは対応が難しい北朝鮮の新型ミサイルを迎撃できるとされる。
米軍は、数年前から朝鮮半島への配備を検討してきた。韓国は消極的だったが、今年初めに行われた北朝鮮の核実験と長距離弾道ミサイル発射を受けて積極姿勢に転換した。
北朝鮮のミサイルへの対処能力が強化されることは、日本の安全保障にとっても利益となる。日米韓の連携をさらに強めるため、日韓の防衛協力も進めてほしい。秘密情報を交換するための取り決めである軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結へ向けた議論が望まれる。
北朝鮮は反発している。配備決定の発表翌日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射し、11日には「物理的対応措置」を予告して韓国を脅した。だが、挑発的な対応は周辺国の危機感を高めるだけである。
韓国が消極的だった背景には中国の反対があると見られている。
中国が反発するのは、装備に含まれる早期警戒用の「Xバンドレーダー」が高性能で、中国国内まで監視できる可能性があるからだ。
中国の習近平国家主席は韓国の朴槿恵(パククネ)大統領に直接、配備に反対する姿勢を伝えていた。米韓による発表後には王毅外相が、北朝鮮だけを対象にするという韓国の説明を「説得力に欠ける」と批判して再考を求める考えを表明した。
米韓には、あくまで防衛用の装備であることへの理解を中国に求める姿勢が必要だ。一方で中国にも、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決へ向けた一層の努力を期待したい。
韓国にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国の意向を完全に無視することは難しい。そして韓国ではいま中国による経済的報復を恐れる声が出ている。中国は責任ある大国として、隣国からこうした疑念を持たれないようにすべきであろう。
韓国内にも懸念材料が残る。配備先として有力視される地域では既に反対運動が広がっている。有事の際に攻撃対象となることへの懸念や強力な電磁波による健康被害の恐れが反対の理由に挙げられる。
米韓は来年末までの運用開始を目指すという。翌年2月までという朴大統領の任期を意識した可能性があるが、日程ありきの姿勢は望ましくない。地元の納得を得られるよう丁寧な説明に努めてほしい。