自民、公明の与党が圧勝し、「改憲勢力」が衆参両院とも3分の2を超えた歴史的な参院選で、もうひとつ史上初の動きがあった。

 民進、共産、社民、生活の4党が32の1人区すべてに野党統一候補を擁立したことだ。

 結果は11勝21敗。3年前は野党がばらばらに戦い、わずか2勝だった。今回、自民党の27年ぶりの単独過半数を阻んだことも含め、共闘には一定の効果があった。

 4党の候補者一本化を主導したのは、安倍首相の政権運営に危機感を抱く学生グループや学者らでつくる「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」だった。政策協定をつくり、背中を押した。

 いわば、市民の声と行動が実現させた野党共闘だった。

 選挙後、民進党の岡田代表は「市民を中心にして各党が集まったのは今までにないことで、これは新しい日本の民主主義がはじまったと私は思っている」と評価した。

 ならばこそ、この新たな潮流を、今後にどうつなげてゆくのかが次なる課題だ。

 4党は、外交・安全保障や原発・エネルギーといった基本政策に違いがある。政策協定では各党が合意できる表現で折り合ったため、与党などから「野合批判」も浴びた。

 それでも参院選は政権への中間評価でもあり、「ストップ安倍政治」という政治スローガンを強調する戦術も奏功した。

 一方で、政権への対決姿勢だけでは、無党派層の山を突き動かせないことも、今回の選挙ではっきりした。

 安倍首相は依然、衆院解散・総選挙の時期を探っている。

 野党共闘が次に試されるのは、衆院選でも連携し、小選挙区に統一候補を立てられるかどうかだ。

 ハードルは高い。衆院選は政権選択を問う選挙だからだ。

 各党が政策の違いを乗り越えて、政権をともに担えると有権者に信任される必要がある。

 とりわけ自衛隊は違憲だとする共産党が、安保政策を民進党とどうすり合わせるのか。

 民進、共産両党は消費増税をめぐる考え方も違う。社会保障政策に優先順位をつけ、財源の裏打ちのある短期、中期、長期の工程表をつくれるのか。

 政治が緊張感を取り戻し、国会のチェック機能を強めるためにも、「自民1強」に対する野党陣営の立て直しが急務だ。

 当面、秋の民進党の代表選に向け、市民主導の野党共闘がどう論じられるのかに注目する。