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トラウマ
家に帰ると、母が文太君の話をふってきた。どうやら隼から聞いたらしい。しばらく文太君について追求されていると、
「なになに!ぶんたさんの話!?」
隼がとんできた。
「ねえねえ、ぶんたさんに会いたい。」
「……文太君好き?」
「うん。すき。なんかね、おねえちゃんやかえでくんは、いっしょにいて、おちつくんだけど、ぶんたさんは、がんばろうってきもちになる。それが、たのしい。あとね、しゃしんたくさんとったから、見せたいなー。」
隼は大分文太君のことが好きらしい。母も乗り気で、文太君を家に呼ぶ話になった。
「え、いい。行かない。」
即決!やっぱり断られた。
「でも、隼に会うのはいいよ。」
「あ、本当に。良かった。また会ってくれると嬉しいな。」
「まー……本当は挨拶くらい行ったほうがいいんだろうけど……。」
「でも、無理にとは言わないよ。」
「そうもいかないんじゃない。やっぱ《おれ》達の事考えたら。」
「うちの母親は偏見ないから安心して。」
「考えておく。でも、ちょっとねー。人の家っていうのが、苦手でね。」
「……。そうなんだ……。あの、無理強いしてるわけじゃなくて……。」
「色々頑張ってはいるんだけどね。昔のトラウマを、体の方が未だに覚えていて、引きずってる。飯だって、いつになったら食えるんだろう。」
そういって、今日も飲み物だけだった。やつれている、というわけでも無いから大丈夫なのだろうが。
隼の携帯番号を渡した。危機感が云々と文太君は言っていたけど、文太君は信頼できるから大丈夫。何かあったときのためってことで。そう言うと、文太君は自分の連絡先も隼に教えておいて、と言った。
そう、ずっと、友達でいられると思っていた。こうやって、たわいも無い事を話していられる。それが、少しでも彼の、彼らの力になればなぁと、思っていた。
本当に悩んだ時は本腰をいれて、相談にのってあげよう、それくらいの気軽さで。私は医者でもなければ専門家でもないし、ただの女子大生だ。だって、一人はつらい事を知っている。
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