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カナリア 作者:みなっち

第二章 文鳥

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結婚願望

(あれ、文太君と連絡が取れないな。)

 授業が終わった後なら、いつも返信くれるのだが。
 ”レポートを出すので、もしかしたら遅れるかもしれない。先にご飯どうぞ、または中止でもいいよ。”という旨のメールを送っていた。電話もしたが出てくれなかった。

 思ったより早く済んだので、そのまま学食にいこうとした途中。見慣れた顔が視界に入ったので、近寄る。寄ったはいいが、建物で見えていなかった。文太君に話しかけている女性の、背後に回る形に接近してしまった。声をかけようとしてそのまま固まる私を、文太君は女性越しに見つけた。
 ――そして、いつものように子供っぽく笑う。

「ありがとう。おれ、好きな人がいるんだ。こんなおれに、告白してくれて、嬉しかった。気持ちに応えられなくてごめん。じゃあ、また明日、ゼミで。」

 告白場面でしたか。本当タイミングが悪い。急いでその場を離れようとしたが、逃がすまいと私の名前を呼んで、この場を切り抜ける理由に使った。
「カナ!待たせてゴメン。飯、行こう。」
 !!!!

「ごめん、タイミング悪くて。」
「いや、バッチリだったよ~。お陰で助かった。」
「助かったって……。綺麗な人だったけど、良かったの……?」
「えーなんか、気を遣いそうじゃん。すぐ泣きそう。」
 えっ、そこなんだ気にするところ。

「おれ口悪いからさぁ、鈍いヤツか頭悪いヤツじゃないと駄目なんだよね。」
「自覚は、してるんだ。ていうか文太君、好きな人いるんだ。」
「そうそう、カナ。」
「また、そうやって棒読み。」
「あはは。断る時の常套句じゃん。」
「へー……。そういや文太君には彼女いないの。」
「……。聞くかね、そういう事。つーか居たら、こんな風にカナと会ってない。」

「おれは嫌だけど。彼女が男友達と2人で遊ぶ、なんてさ。」

「……そうかな。」
「カナは別にいいとしても、相手は十中八九は嫌がると思うけど。話すのすら嫌なんじゃない?」
「……。」
「女の人って、普通は束縛強くなるっていうしそこまで想像できないって、恋愛したことないんだね。」
 返す言葉もない。反論したいけど、図星だ。

「フフ。いいよ、カナはそれで。今は友達がたのしーし。しばらくはフリーでいてよ。ほら、おれと、おれ達と友達でいてくれるんでしょ。」

「…………。そんなカナでも将来は結婚とかしたいんでしょ。」
「えーっと…あんまり、強くはないけど、子供は欲しいなーって思うから、結婚はしたいよ。いつかね!」
「あはは、でもあんまり、積極的ではない、っと。」
「……うっ……。」

「あ、別に馬鹿にしてるワケじゃないんだよ。子供が欲しいって思えるのは、とても素晴らしい事だと思う。家族がいて幸せな証拠だ。沢山愛してあげて。」

 そして、文太君は、至極当然のように、私に話した。

「親は、子供に愛情を与えるのが当然と思われてるけど。愛情を知らない子供は、育て方も与え方も知らない。おれは、子供好きだけど、四六時中は無理だな。自分の血だなんて、家庭なんて想像しただけ怖気がするね。あとさ、万が一、子供が出来たとしても、それっておれの子供なのかな。なんか複雑だよね。」

「カナに、早く愛せる恋人が出来る事を祈っているよ。」


 そう、文太君は友達。
 それを望んだし、文太君もそのポジションが、どうやら気に入ったようだ。実際、気を遣わなくていいし、気を張らなくてもいい。

 もちろん、直ぐの話じゃないのだが。
 ―――”おれは嫌”か。

 文太君に彼女ができたら私とは遊べなくなるんだろうな、と思うと少し寂しかった。
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