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カナリア 作者:みなっち

第二章 文鳥

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文太の事情

 私達は、セイに教えてもらったカフェにやってきた。
「前来た時は秋の味覚パスタが美味しいかったんだけどまだやってるかな~。」
「……。…………。あー……。おれ、飲み物だけでいいや。」
「いいの?もしかして体調悪い?」
「うーんっと、そういうワケじゃないんだけど。むしろ調子よかったから、食えるかなって思ったんだけど、やっぱ駄目だな。」

 !!!!
「あ……!も、もしかして外食恐怖症とか?ごめん!気づかなくて。」
 そういえば、私と会う時、文太君が食べてるの、見たことなかった。いつも飲み物だけ注文して、私が食べるのを見てるだけ。

「いや、なんでカナが謝ってんの。意味無く謝んのやめて。おれが誘ったんだから。ごめん。というわけで、気にせず食べて。」
 そう言われても食べ辛い!
「人が食べてる所をみるのはキライじゃないよ。カナなんか美味しそうに食べるなーって。羨ましい。」

「一口だけでも、食べてみる?」
 さつま芋と鶏肉のクリームパスタ。さつまいも、と呟くので、店員さんに取り皿を頼もうとしたら……
「あー。」
「何その口。」
 餌を待つヒナ鳥のように口をぱっかりあけて、待っているこの姿勢は。もちろん、食べさせて、という事なのだろうが。文太君は、私をからかうのが好きだ。ここでギャーギャー騒ぐのは文太君の思うツボだ。意を決して、サツマイモにフォークを突き刺して、その口にフォークを押し込んでやった。

「んんん!!あつい!」

 おいしい?と聞くと、そうじゃなかったのだろう複雑そうな表情を返してきた。暫く口をもぐもぐさせて、お冷で一気に流し込んだ。駄目だった?と聞くと、詰まりながら美味しかった、と言う。

「食べられたね。」
「……あ、そう、だね。」
「けど、文太君、まだマシな方じゃないかな。ひどい人って、店入っただけで気分悪くなる人いるよね。あと焦れば焦る程だめだし、ちょっとずつ頑張ればいいし。大丈夫だった思い出を積み重ねていくっていうのかな。」

「何の話?」
 文太君はさっきから、ポカンとしている。
「え、外食恐怖症の克服方法?」
「おれ、それじゃないよ。」
「違うの!?」

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「文太とはうまくいってる?彼、ちょっと取っ付きにくいんじゃないかなって心配してたけど。」
「あー……そうですね。ビックリする事は多いですけど、付き合っていく内に色々分かって面白いですね。意外と面倒見良かったり。」

 紅茶の美味しい喫茶店。木場君のお気に入りの場所で、私たちは他の同居人との近況について話していた。

「そうだねー。表現方法が極端すぎて気づいてもらえない事が多いから損してると思うけど。優しいよね、文太は。彼は特に、一人で頑張った。必死に必死に頑張った。生きる為に。―――でも、そんな彼が、一人だけ。救えず、見捨ててしまった人がいる。だから、更に頑張っているのかも。」
「……?木場君……。」

 見捨ててしまった人?いったい文太君の過去に何があったんだろう。全く話の意図がつかめなくて、切り出そうとした私を遮るように、木場君が席を立った。

「じゃあ、そろそろ行こうか、カナさん。今度は一緒に、舞台を観に行こうね。」
「あ、はい!ぜひぜひ!」
 何事もなかったように、笑いかける木場君に、慌てて返事をした。
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