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カナリア 作者:みなっち

第二章 文鳥

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バラ園 ~文太視点~

 急遽、休講になるとは思はなかったな……。今日はカナもいないし、どうしようか。家に帰るか。そう心の中で呟いて歩き出す。

 川を渡って大きな公園を抜けて、20分ほど歩いたビジネス街にあるマンションが我が家だった。大きな公園は、イルミネーションや催し事など、色々やっているが、今の時期はバラだ。赤、黄色、白、ピンク、紫……とにかく綺麗だった。橋の上からでも香ってくるのではないかと思える程、惜しげもなく咲き乱れている。天気もいい。趣味ではないが、偶にはいいのではないかと、階段を降りる。
 花の香りが一層つよくなって、思わず咳き込む。想像以上だ。そんなバラに釣られて公園はいつも以上の人で溢れかえっていた。別段、花と関わる生活をしていないため、冗談みたいに大きく咲くバラに驚く。中には自分より背丈のあるヒマワリのようなバラもあった。せっかくだしな、という事で、携帯を取り出して一枚だけ撮っておいた。人の方が沢山写った気がするがいいか。思ったより、バラの香りに酔う。早めに抜け出してしまおう。
 バラ園を抜けて大きな広場に出る。子供たちが遊んでいて、小学校が終わった時間帯なのだろう。

「……あ。」
「!!!!」
 カナの弟だ。何してるんだろう。こんなところで、一人で自転車を持って突っ立っている。
「こんにちは。」
「こ……」
「学校帰り?」
「あ、違う?自転車できたんだ。」
「こ、こん……こんにちは……」
「こんにちは。名前覚えてる?」
「ぶ、ぶんた……さん……」
「隼だっけ?もしかしてバラ、見に来たの?へえー。お姉ちゃんは?」
「おねえちゃんは、こういうの、あんまり、きょうみなさそう……」
「あはは、ぽい。へー、隼ってバラ好きなんだ。珍しいって言われない?」
「……キモイって言われた。」
「まじで?」
「おんなみたいって。」
「へー。そうなの。綺麗じゃんね?おれの同居人にも、花が好きなやついるよ。男なんだけどね。」
「ぶんた……さんは……?」
「おれは、興味ないけど、別にキモイとは思わないかな。むしろ、綺麗な物をちゃんと綺麗って思える心は綺麗だなって思うよ。」
「?」
「かっこいい、って事。だって、こんな綺麗な物を、女っぽいからってだけで理解しようとしないのは勿体無いと思わない?」
「えっと……」
「ごめん、バラ見に行くんだったよね。邪魔したな。」
「あ……えっと」
「……。チャリ、置く所ないもんな。おれが、持ってやるよ。ほら、好きにバラ見にいきなよ。」
 そう言うと、隼はものすごく戸惑った。まあ、結局おれが押しに押して、
「あ、ありがとう……。…………。わーいわーい。」
 と言ってバラ園に走っていった。なんだあのはしゃぎっぷり。本当にすげー好きなんだな……。

「あ、あの、ぶんたさ、ん!ありがとう。」
「楽しんだ?」
「うん!きれいだった!えへへ。」
「なんだ、そんな風に笑えるんじゃん。」
「……。おれ、えっと……しゃべるの……うまくなくて……」
「何で?」
「なんで!?」
「何一つ不自由してないじゃん。優しい姉さんがいるじゃん。あれ、兄さんもいたっけ。何、不満なわけ?」
「……。」
「もしかして、色々と世話やかれすぎて、自分で考えるのやめちゃったタイプ?」
「ぶんたさんの言ってることは、むずかしい。」
「そう?もっと自由に色々したら?って。」
「……。」

「隼は何が好き?」
「好き……。しゃ、写真。」
「えっ写真!?またえらい渋いの好きだな。へーいいじゃん、いいじゃん。かっこいいな。」
「カメラ、で、色々とるの、おもしろそうだなって。かえでくんが、カメラ、好きで……。おれも、いいなーっておもってて。」
「え、撮ろうよ。」
「でも、まだ早いって。みんな言うから。」
「好きに早いも遅いもないし。子供が遠慮なんかすんなよ。あー、でもアレか。写真撮るだけじゃないよな。デジカメだとPCもいるってなると、確かに早いかもな。」
 あ、今携帯型音楽プレイヤーでも写真撮れるし、それならいけるか……?
「ちょっと知り合いに聞いてみるよ。」
「えっええっ」
「多分、いけると思う。子供時代に、子供だから、って理由で断られるのは、一番よくないとおれは思ってる。」

「……。ぶんたさんは、いろいろ、できなかったの?」
「うーん……。おれ、小さい頃に両親が離婚してて。色々我慢したよ。我慢した結果、コレになったんだけど。」
「あっ……ご、ごめんなさい。……いいたくなかった?」
 へー、この歳で人に気を遣えるんだ。
「すごいすごい。」
「?????」

「じゃあ、調達できたらお姉ちゃんに渡しておくな。気をつけて帰れよー。」

--------------
「というわけで、これ。」
「ナニコレ!?スマホ?」
 いつものように、カナと食堂で勉強をしている時に、スマホを差し出した。
「前に使ってたやつ。」
「ん??」
「―――を、隼にあげて。」
「隼に?!」
「この間、偶然会ったんだよ。写真撮るの好きそうだったから、何かカメラ無いか木場に相談したらコレもらった。古いっていっても一年前とかだし、別に十分でしょ。」
「いいの?わー……ありがとう……!きっと喜ぶ……!知らなかったな、写真好きなの。」
「自分の弟だろ。」
「弟なんだけどねー。引っ込み思案というか、今すごく難しい時期。男の子だし、楓に結構頼りっきりな所あるかも。あ、仲が悪いわけじゃないよ。」
「ふーん。ま、そういうのも必要なのかも。」
「?」
「あんまり気を遣わなくていい兄弟っていうの。」
「文太君は、妹いたよね。どんな感じなの。」

「……。内緒。」


 -------------
「何で泣くわけ。」
 ――”あいつ”が泣いてる。
「だって、気持ち悪いって。」
「何が。好きなら好きって胸はれよ。いいじゃん、綺麗じゃん。なんだっけ。―――…菊?」
「ガーベラ!!!あ……。……文太は、赤いガーベラが似合う。花言葉は、常に前進、チャレンジ。」
「へー。岡目は?」
「岡目は…ツワブキかな?黄金色に花が沢山咲くんだ。」
「花言葉は?」
「困難に負けない。」
「へーなるほどなるほど。木場は?セイは?」
「木場はロウバイでセイはやっぱりブルースターかな~。」
「へー……こりゃたしかに気持ち悪いわ。」
「き、傷ついた!!!」
「花、育てないの?小さいやつなら、いけるんじゃないの。」

「枯らすと、かわいそうだから。」
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