すさまじい禁断症状
「10年ほど前でしょうか。仕事がうまくいかず、ヒマな営業所に飛ばされたんです。それまで自分は一線でバリバリやっているつもりでしたからショックでしたよ。会社に出てもなんとなく体がだるく、鬱々とした日が続いて、ああこれは『心の風邪』だと思いました。
心療内科に行ったらデプロメールを処方された。しばらく飲んだのですが、効果が実感できず、医者から『ではパキシルも処方しましょう』と言われた。こうして私の薬漬けの日々が始まったのです」
こう語るのは長沢康英さん(62歳、仮名)。薬を飲み始めた当初は、うつ症状が軽くなったと感じた。しかし、同時に思わぬ副作用も出始めた。
「急に落ち着かなく感じ、イライラすることが増えました。ささいなことで家族に当たり、妻からは人が変わったようだといわれた。それでも自分はうつ病と戦っていると信じて、薬をやめるつもりはなかった」
現在、日本で使われている主な抗うつ剤はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬。デプロメール、パキシルなど)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬。サインバルタなど)と呼ばれるもの。
人が幸福感を感じるセロトニンや、やる気や自信を生むノルアドレナリンといった物質が脳内に長くとどまるように働きかける薬だ。
「しかし薬を飲み続けるとセロトニン症候群という副作用が生じることがあります。セロトニンが過剰になりすぎて、逆に不安、焦燥、興奮などに悩まされるのです」(大学病院心療内科医)
不安を消すために飲んだ薬が、新しい不安を生む——なんとも矛盾した話だが、よくよく考えてみれば、副作用もなく幸福感や自信だけを心に植え付けてくれる薬などあるわけがない。薬剤師の深井良祐氏が語る。
「うつ病や不眠症、統合失調症は長く治療することになる。その過程で薬を少しずつ減らしていければいいのですが、逆に副作用などを抑えようとしてどんどん薬を追加する医者が多いのです。実際、一度に何種類もの抗うつ剤を飲んでいる患者さんはよくいます。そうなると、これらの薬はやめるのが難しい」
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