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改憲ライン「3分の2」認知浸透せず

当選確実と報じられ、壇上で「全国最後の1議席をいただいた」と喜びを語る中西健治氏(中央)=横浜市中区の事務所で11日午前0時28分、福永方人撮影

 安倍晋三首相の改憲姿勢を批判する野党の訴えは届かなかった。10日に投開票された参院選で、改憲勢力は憲法改正を発議できる3分の2を占めた。自民党はアベノミクスの継続をひたすら訴え、憲法問題は隠された格好だ。有権者は暮らしに密接な経済政策や福祉を重視して1票を投じた。憲法を巡る議論は深まっていない。

 「かみあわないまま終わった」。東京・永田町の民進党本部で10日深夜、岡田克也代表におびただしい数のフラッシュがたかれた。改憲阻止を掲げた民進党に対し、憲法の「争点隠し」で臨んだ自民党。明暗は分かれた。

 「3分の2」−−改憲ラインを示すキーワードはそもそも、有権者に認知されていたのだろうか。

 毎日新聞が10日、全国の有権者150人に街頭でアンケートを実施したところ、6割近くにあたる83人がこのキーワードを「知らない」と回答した。投票した人に重視した政策を聞くと、経済や社会保障政策など暮らしに密着したテーマを選ぶ人が多かった。「憲法改正」を選んだ人は1割に過ぎなかった。

 「それって雇用関係の数字じゃない?」

 10日午後3時過ぎ、東京都北区のJR赤羽駅前。アンケートに応じたビル管理業の男性(29)は、「3分の2という数字を知っていますか」との質問にそう答えた。「改憲に必要な議席数」と説明すると「えっ、9条がいじられるってこと? みんな知らないんじゃないか」と驚いた。

 アンケートは投票率が50%前後にとどまることを見越し、投票した人と投票しなかった人の75人ずつに聞いた。「3分の2」の質問では、投票した人のうち29人が、投票しなかった人では54人が「知らない」と回答した。大半の人が正解を伝えても「ふーん」と無関心な様子だった。

 「3分の2」の意味を知った上で、別の政策を重視した人も多い。鹿児島県の自営業の男性(57)は「地方の零細企業を営む身としては景気対策が最も重要だ」と話した。

 安倍首相は10日夜も改憲内容に言及することはなかった。自民党が憲法への言及を避け続けたことで、改正論議が盛り上がらなかった面は否めない。

 富山県の会社員の女性(21)は棄権した理由をこう語った。「何が争点か知らない。適当に投票するなら、棄権した方がいいと思った」。低い投票率だった今回の選挙で改憲勢力は念願だった「3分の2」を占め、国のかたちを変える動きが本格化しようとしている。【まとめ・川崎桂吾、山崎征克】

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