16 合わせ酢の殺菌効果
Q 食酢には殺菌効果があるといわれていますが,これを合わせ酢とした場合の殺菌効果を教えてください。
A 食酢の主成分は,酢酸です。酢酸は,強力な殺菌力があり,微生物が増殖できる限界pHは,他の酸よりかなり高いようです。例をあげますと,サルモネラ菌に対しては,クエン酸を使うとpH4.05以下では,また,酢酸を使うとpH5.40以下では増殖できません。しかし,酢酸=食酢ではありませんし,また,食酢を単独で食品の調味に使うことはまれで,合わせ酢として使うのが普通です。
その場合,その殺菌力が変化することは充分に考えられます。このことについて,モデル実験のデータがあります。
食酢の殺菌力に及ぼすブドウ糖と食塩の効果
区分 | ブドウ糖 | 食塩 |
バクテリア | 弱められる | 強められる |
カビ類 | 強められる | 弱められる |
酵母類 | 弱められる | 弱められる |
また,実際に合わせ酢を使用して,バクテリアに対する殺菌効果を求めた実験では,砂糖を加えて甘酢にすると殺菌力が弱くなり,食塩を加えて二杯酢にすると強くなり,砂糖と食塩を加えた三杯酢にすると,甘酢と二杯酢の中間位の殺菌力になることがわかっています。それから,しょうゆを使った二杯酢,三杯酢は,食塩を使った場合より殺菌力が弱くなったそうです。それは,しょうゆを使った場合,合わせ酢のpHが約1.0上昇することに原因があるようです。この様に,食酢の殺菌力は,これに他の調味料を加えることにより大きく変化します。
加工しようとする食品の成分は,多種多様なものですから企業でこの知見を応用する場合には,対象とする食品を使って予備実験を繰り返す必要があります。(註:日本食品工業学会誌,第28巻,第7号,1981年に掲載された,円谷らの研究報告を参考にしました。)
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