セクハラに悩む被害者から個人的に相談を受けた彼氏や上司が、被害者に依頼されて、本人を代理して加害者と示談交渉を行うことはよくあることです。
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代理人となった人がその示談交渉の費用を被害者に請求すると弁護士法に違反する疑いがありますが、無償で交渉を代行する場合には法律的な問題も生じません。
(トラブル等の法律事件に有償で関与できるのは、弁護士法によって弁護士に限定されています。当ブログ運営者は行政書士なので、示談交渉には一切関与できません。)
ただ、交渉の過程で代理人が過剰な請求や威圧的な言動を行うと、加害者から恐喝罪等の疑義で逆に告訴されるリスクがあります。
そのような事例として、2014年11月14日のIZA(産経新聞デジタル版)では、次のような記事を掲載しています。
以上がこの事件の概要です。
この巡査が彼女の依頼によって個人的に示談交渉の代理をしたこと自体には問題はありません。
セクハラの慰謝料として取り決めした100万円の金額も、事件の性質を考えれば不当に高額とまでは言えません。
しかも、その金額は加害者側から自主的に提示した金額です。
19歳の巡査の立場に立てば、身近な存在の彼女を守るために行ったことで、法的にも正当な行為であったのに、実に気の毒な結果になってしまいました。
「被害者の立場なのにナゼ?」という気持ちが消えないことでしょう。
将来ある若者に酷な結果になったと思いますが、これに挫けず頑張ってほしいと願います。
それでは何が問題になったのでしょうか?
それは示談書を作成していなかったこと、警察官という立場を語ったうえで支払い期限前に請求のメールを十数回に渡り送信し、それについて加害者が圧迫を感じたことのようです。
大学を休学することも、(自ら提示した金額とはいえ)100万円という金額を用意することも、学生にとっては容易なことではありません。
それに対して、警察官という立場を利用したとも受け取れる状態で、十数回も督促のメールを送れば、加害者の学生が窮することは想像できます。
結果論になってしまいますが、交渉によって示談が成立したとき(=口約束が成立したとき)に、セクハラ行為の事実認定や慰謝料の支払い方法などを明確に文書化し示談書を作成していれば、支払い期限前に何度も督促のメールをする必要は無く、相手方に過剰なプレッシャーをかけるリスクも減りました。
また、支払期限が経過しても支払いが無ければ、作成した示談書を証拠資料として、粛々と債権回収の法的手続をとればよく、それに恐喝の疑いがかかる余地はありません。
示談の条件についても、学生に100万円の支払い能力があるかどうかを見極めないといけません。
どう考えても一括支払いは厳しいと考えるのが普通です。
そうであるなら、慰謝料を分割支払いとするか、両親に相談をした上で保証人となってもらい、状況によっては両親から支払ってもらうというところまで交渉が必要となるはずです。
この事例では代理人の対応が問題視されていますが、被害者本人が示談交渉に当たる場合でも、同様の注意は必要です。
事件の被害者本人であっても、加害者に対して過剰・不当な請求を行えば恐喝罪や強要罪等に抵触するリスクはあります。
それは慰謝料の金額だけではありません。
例えば、不倫の加害者に対して、転居や勤務先の退職を求めるケースは多いのですが、加害者がそれは難しいと言っているのに、それを強要する場合にはトラブルになってしまいます。
被害者には正当な損害賠償請求権がありますが、その限度を超えた過剰・不当な請求までは許されるものではありません。
トラブルの当事者になって感情的になると、そのあたりの見極めを誤ることもあるので、冷静な第三者的視点も持たねばなりません。
粘り強く交渉をして条件の合意が出来ても、示談書を作成しなければ、加害者が約束を守らない場合でも法的対応をすることが難しくなり、結果として執拗な請求を繰り返してトラブルになるケースも多いものです。
口約束だけで安心せず、示談書を作成するところまで、気を抜かずに実施しておきたいところです。
合意内容の書類作成については、当職が運営する示談書エクスプレスにて承っております。
事後のトラブルを予防するための示談書作成はお任せ下さい。
代理人となった人がその示談交渉の費用を被害者に請求すると弁護士法に違反する疑いがありますが、無償で交渉を代行する場合には法律的な問題も生じません。
(トラブル等の法律事件に有償で関与できるのは、弁護士法によって弁護士に限定されています。当ブログ運営者は行政書士なので、示談交渉には一切関与できません。)
ただ、交渉の過程で代理人が過剰な請求や威圧的な言動を行うと、加害者から恐喝罪等の疑義で逆に告訴されるリスクがあります。
そのような事例として、2014年11月14日のIZA(産経新聞デジタル版)では、次のような記事を掲載しています。
自ら彼女のセクハラ示談交渉が19歳巡査の職を奪った
“京都府警の19歳の巡査は、彼女に性的な嫌がらせをしていた相手(学生)と自ら交渉し、示談金100万円で決着を図った。しかしトラブルに発展し、府警から処分を受けて依願退職する羽目になった。示談金の金額を最初に持ちかけたのは相手の方で、示談金も実際に支払われていなかったが、府警は警察官を名乗って起こしたトラブルである点を重視。「倫理的に問題がある」と処分に踏み切った。”
“最初に接触したとき、元巡査は女子大生の希望を男子学生に伝えている。それは「男子学生が休学すること」だった。しかし、男子学生にとって休学は簡単な選択肢ではないだろう。そう思った元巡査は休学の希望を伝え、「示談という選択もある」と提案した。”
“その日は具体的な話はせず、そのまま別れ、5月下旬、再び話し合いの場が持たれた。今度は女子大生も交え、京都市内のショッピングモールで3人で面会した。このとき、男子学生が100万円を支払うことで示談とするよう持ちかけてきたという。2人は了承、示談金の支払期限は7月末までと決めた。”
“問題は解決したかにみえた。しかし、示談金の支払いは口約束だったこともあり、元巡査は約束が履行されるのか不安になったのだろうか。7月末が近づくと、男子学生の携帯電話に支払い期日を確認するメールを十数回にわたって送信した。”
“7月中旬になって、男子学生が支払いに困って親族に相談。親族は「警察官による恐喝ではないか」と思い、男子学生を伴って府警に相談し、ついに事態が明るみに出た。”
以上がこの事件の概要です。
この巡査が彼女の依頼によって個人的に示談交渉の代理をしたこと自体には問題はありません。
セクハラの慰謝料として取り決めした100万円の金額も、事件の性質を考えれば不当に高額とまでは言えません。
しかも、その金額は加害者側から自主的に提示した金額です。
19歳の巡査の立場に立てば、身近な存在の彼女を守るために行ったことで、法的にも正当な行為であったのに、実に気の毒な結果になってしまいました。
「被害者の立場なのにナゼ?」という気持ちが消えないことでしょう。
将来ある若者に酷な結果になったと思いますが、これに挫けず頑張ってほしいと願います。
それでは何が問題になったのでしょうか?
セクハラに対する正当な慰謝料請求がどこで間違ったのか?
それは示談書を作成していなかったこと、警察官という立場を語ったうえで支払い期限前に請求のメールを十数回に渡り送信し、それについて加害者が圧迫を感じたことのようです。
大学を休学することも、(自ら提示した金額とはいえ)100万円という金額を用意することも、学生にとっては容易なことではありません。
それに対して、警察官という立場を利用したとも受け取れる状態で、十数回も督促のメールを送れば、加害者の学生が窮することは想像できます。
結果論になってしまいますが、交渉によって示談が成立したとき(=口約束が成立したとき)に、セクハラ行為の事実認定や慰謝料の支払い方法などを明確に文書化し示談書を作成していれば、支払い期限前に何度も督促のメールをする必要は無く、相手方に過剰なプレッシャーをかけるリスクも減りました。
また、支払期限が経過しても支払いが無ければ、作成した示談書を証拠資料として、粛々と債権回収の法的手続をとればよく、それに恐喝の疑いがかかる余地はありません。
示談の条件についても、学生に100万円の支払い能力があるかどうかを見極めないといけません。
どう考えても一括支払いは厳しいと考えるのが普通です。
そうであるなら、慰謝料を分割支払いとするか、両親に相談をした上で保証人となってもらい、状況によっては両親から支払ってもらうというところまで交渉が必要となるはずです。
被害者本人が示談交渉をする場合でも同様の注意が必要
この事例では代理人の対応が問題視されていますが、被害者本人が示談交渉に当たる場合でも、同様の注意は必要です。
事件の被害者本人であっても、加害者に対して過剰・不当な請求を行えば恐喝罪や強要罪等に抵触するリスクはあります。
それは慰謝料の金額だけではありません。
例えば、不倫の加害者に対して、転居や勤務先の退職を求めるケースは多いのですが、加害者がそれは難しいと言っているのに、それを強要する場合にはトラブルになってしまいます。
被害者には正当な損害賠償請求権がありますが、その限度を超えた過剰・不当な請求までは許されるものではありません。
トラブルの当事者になって感情的になると、そのあたりの見極めを誤ることもあるので、冷静な第三者的視点も持たねばなりません。
粘り強く交渉をして条件の合意が出来ても、示談書を作成しなければ、加害者が約束を守らない場合でも法的対応をすることが難しくなり、結果として執拗な請求を繰り返してトラブルになるケースも多いものです。
口約束だけで安心せず、示談書を作成するところまで、気を抜かずに実施しておきたいところです。
合意内容の書類作成については、当職が運営する示談書エクスプレスにて承っております。
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