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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:cross-sectional 製薬会社スポンサーの食事提供と医師処方パターン

JAMA 論文 薬剤 研修医教育

製薬会社スポンサーの食事提供と医師処方パターンPharmaceutical Industry-sponsored meals and physician prescribing patterns for Medicare beneficiaries

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.2765
Published online June 20, 2016.
【背景】
 製薬会社からの資金提供と同じ製薬会社のブランド名薬剤処方率の関係は明らかになっていない。米国では、製薬会社の資金提供データとMedicareの処方率記録は公的に利用できるようになった。
【目的】
 製薬会社スポンサーの食事(およそ値段の80%を製薬会社資金で賄われている)を食べている医師とMedicare受給者のブランド名薬剤処方率の関係を調査する。
【デザイン・セッティング・患者】
 連邦Open Payments Programの資金提供データ(2013年8月1日〜12月31日)と個々の医師の処方データをMedicare  Part D(2013年一年間)と合わせて横断研究が行われた。
 対象者は、下記4つのMedicare処方薬剤を処方した者。4つとは、①スタチン、②選択的β遮断薬、③ACE阻害薬/ARB、④SSRI/SNRI
 上記4薬剤(ロスバスタチン・ネビボロール・オルメサルタン・デスベンラファキシン)を宣伝した製薬会社スポンサーの食事を食べた医師を明らかにし、データは2015年8月20日から12月15日までで解析された。
【曝露】
 特定の薬剤を宣伝した製薬会社スポンサーの食事 
【メインアウトカム】
 宣伝された薬剤の処方率を同クラスの代替薬と比較した。処方量・人口統計学的特性・処方医の専門性などを調整した。
【結果】
 27万9669人の医師が4薬剤合計で6万3524件の資金提供を受けていた。95%が食事での資金提供で有り、平均値段は20$以下である。
 ロスバスタチン(クレストールⓇ)はスタチン全体の8.8%(SD:9.9%)に処方され、ナビボロール(本邦未発売)は選択的β遮断薬 3.3%(SD:7.4%)、オルメサルタン(オルメテックⓇ)はACE/ARBのうち1.6%(SD:3.9%)、デスベンラファキシン(イフェクサーⓇ)はSSRI/SNRIのうち0.6%(SD:2.6%)だった。
 食事提供の回数が1回の場合、他のコントロール薬剤と比較して、ロスバスタチンの処方頻度はOR 1.18:1.17-1.18ナビボロールの処方頻度はOR 1.70:1.69-1.72オルメサルタンの処方頻度はOR 1.52:1.51-1.53デスベンラファキシンの処方頻度はOR 2.18:2.13-2.23と有意に多かった。食事回数が増えたり、食費が20$を越えたりすると、更に処方率が高くなった。

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(本文より引用)
【結論】
 製薬会社スポンサーの食事は宣伝されたブランド名薬剤の処方率増加と関連した。関連性はあるが因果関係かどうかは不明である。

【批判的吟味】
・今回調査した製薬会社の食事を食べている医師は14万4804人、男性 76%、内科 19%、家庭医 20%、循環器科 6%、精神科 5%、卒後年数 6-20年 37%、21年以上 61%
・論文のPECOは、
P:Medicareデータで処方および製薬会社との関係が評価可能な医師
E:製薬会社資金提供の食事を食べている
C:製薬会社資金提供の食事を食べていない
O:主要4薬剤のブランド名処方頻度
T:横断研究
・元々値段が高いことが問題なのでは?として、米国では100$以上は禁止していた模様ですが、値段の問題ではないことが明らかになっています。
・もちろん、因果関係の証明は難しく、あくまでも記述研究での相関関係にあるということではありますが・・・
【個人的な意見】
 いやあ、結構衝撃のデータです。もちろん横断研究ならではの限界もあり、因果関係もはっきりしませんが、これだけ用量依存・金額依存があるというのは驚きです。まあ、やっぱりダメですよね。皆さん、ランチョンセミナーとか薬の説明会とかホントお気をつけ下さいませ。

✓ 因果関係は不明だが、製薬会社スポンサーの食事は宣伝されたブランド名薬剤の処方率増加と関連した