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英国のイラク検証に見習え

2016/7/9付
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 失敗を検証し、教訓を学ぶ。この能力があるかどうかで、国家の行方も左右されかねない。この点で日本の現状はかなりお粗末だ。政策決定の検証に努める他国の姿勢を、真剣に見習うべきだ。

 英国の独立調査委員会が6日、2003年に英国がイラク戦争に参戦した経緯などを検証し、報告書を発表した。

 この委員会は09年、ブラウン首相(当時)が設置した。開戦当時のブレア首相を含む約150人の政府や軍、情報機関関係者を聴取したほか、数々の機密文書の閲覧も認められたという。

 200万語以上にのぼる報告書は、軍事行動は法的な根拠が乏しかったと総括。イラク政策が不完全な情報や分析にもとづいていたと断定した。この検証は英国にとって、同じような失敗を防ぐための貴重な足場になるだろう。

 米国でも、対イラク開戦を決めたブッシュ政権(当時)が自ら独立調査委を設け、05年に約600ページの報告を公表している。

 ひるがえって、日本はどうか。当時の小泉純一郎政権は大量破壊兵器があるという前提でイラク戦争を支持し、復興支援のため現地に自衛隊も出した。この経緯について、政府はまともな検証をしてこなかった。

 12年、民主党政権の指示を受けた外務省が戦争を支持した経緯などを調べて「検証結果」をまとめたことはある。

 戦争支持は「おおむね適切」と結論づけたが、公表されたのはわずか4ページの要約で、聴取の対象者も伏せられた。約7年かけて検証し、膨大な報告書を公表した英国とは比較にもならない。

 武力行使した米英と、復興支援などにとどまった日本とは同列に論じられない――。政府はこう主張するが、理由にならない。オランダは攻撃に参加しなかったが、戦争を支持した経緯を調べ500ページを超える結果を発表した。

 検証力の乏しさは日本の大きな欠点だ。政治家や官僚はこの体質を放置せず、改善してほしい。

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