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初めて風俗に行っておっぱいを吸いながら泣いた話

ポエム

2013年ごろの僕のエバノポエム日記から、再掲したくなりました。ポエムなので、特に面白みとかは別に無いです。

 

 

風俗。

 

甘美な響きである。

 

木枯らしが街の木々をメタメタとなぎ倒しながら冬の訪れを最高に感じさせる中、当時住んでた田舎町の路地裏の一角のファミリマートで僕はネオンの輝きが最高にロックンローラーで、なんだか感慨深く思っていた。口の中には、ジョージアエメラルドマウンテンを含みながら路地裏の風俗街へと吸い込まれていた。

 

「風俗」

 

 

「風俗である」

 

 

小学生時代にあれだけ女性とのかかわりを持つことで魔女狩りのごとく烈火の差別の炎に焼かれた時代はもう終わったのである。齢15を超えたあたりからいつの間にか女性とかかわりを持つには「money」が必要となった。財布の中の諭吉はいつもよりニヤリと不適な笑みを浮かべている。そう、もう終わりなのだ。何の取り柄も無い男は女性とかかわりを持つために「money」を用いる必要がある。

 

諭吉はいつもよりいくらかハードボイルドな笑みを浮かべる。

 

「今日は成長させてもらうぜ」

 

諭吉を人差し指と中指の間にはさむとお目当ての店に向かって軽く礼をした。

 

敵地ーである。一般的な大学生活を送る中で特に不満があったわけではないが、僕はこの風俗という世界に足を踏み入れたくなった。通常の生活を送っていればなかなかであることは無い。桃源郷。heven。ジーザス。神はいなかった。

 

 

「お一人様ですか?」

 

 

黒服の男が尋ねる。黒さと狭さ、90年代の黒人映画の片隅に出てくるような袋小路の奥にファンキーさと共に奥にお目当ての店はあった。

 

「最高にROCKな雰囲気がする」

 

この風俗という性的産業に僕は大学生活で決定的に抜け落ちた何かを埋めるものが存在する。性的な渇望を満たすためではない。欠落した何かを埋めるものがそこにはある。そんなイマジネーションが4限を終えてやたらと長い講義室の階段を下りるときに天から振ってきたのである。お金を払って女性を買う。最高にパンクだ。ジョンレノンなんてクソ食らえ。時代はいつだってパンクでファンキーやつらが作りあげてきた。僕はその道程の上をなぞりたいだけだった。

 

虚像と虚構にまみれたこの現実の中で現実のものと怪しいmoneyをRealにしてくれる。今までの価値観ではよくわからない。その先に何か見えるものがある。当時の僕はそう確信していた。

簡単に言えば本気で感性がバグっていた。

 

 

店に入る。薄暗い店内の待合室ではミラーボールの光に反射したネオンとEDM調のMUSICが流れている。「Realだー」当時の僕はそんなことを思った。

 

バーカウンターの片隅ではヴァカルディが怪しく鎮座していた。

黒くくたびれたソファには、男たちが座っている。年代はさまざまだ。僕と同じくらいから、60近い老人まで。この待合室の中に敵意は存在しなかった。僕たちは、風俗の待合室の中だけで、本当に心のそこから笑顔で手を取り合える。そこに、差別もマウンティングも存在しない。平和な世界。自分の予感に間違いがなかったことをここで確信した。

 

 

今からこの諭吉と交換する事で僕は女性の乳房にたどり着ける。これは紛れもなくREALな事実である。黒服に諭吉を渡す。財布の小銭いれから500円玉が僕に「hello」と挨拶した。hello world. 等価交換ー?そんなことはわからない。価値観など、時代と感情の上下で一瞬で霧散する。僕は史実からそれを学んできたつもりだった。

 

 

飲み物をたずねられ、ウイスキーをロックで頼んだ。こういうときに頼むものはウイスキーである。ヴォイニッチ手稿にもそれは明確に記されている。

 

「こんばんわ~お若いんですね。」

 

 

目の前に女性が現れた。うら若い。うら若き乙女である。それは紛れもなくうらわかさだった。

 

「なんでこんな子がー風俗なんかで働いているんだろう。」

 

そんな考えが脳裏によぎる。脳裏によぎるという言葉自体陳腐だが、事実よぎったのだ。すさまじいスピードでよぎった。本当によぎった。脳裏のF1レースである。ここで挫折するわけにはいかないー。まだ、試合は始まったばかりである。負けてたまるか。チクショウ。

 

 

「普段なにしてるのー?」

「お店にくるの、おじさんばっかりだからすごくうれしいー!」

 

 

 

 

普通だ。

 

 

 

 

普通の女性だ。

 

 

本当に普通だ。一般事象。地球が回るように、ボールが地面に落ちるように、とても普通のうらわかさだった。The normal.

 

「これはFAKEなんじゃないかー?」そんなことが頭によぎる。普通の女性にmoneyを渡すことによって乳房にありつける。その事象に僕は過度な期待を抱いていた。目の前には普通さとうら若さだけが横たわっている。諭吉を呼ぶために僕は一日かけてmake moneyの必要性に迫られた。そんなFAKEに一日が消えるのは、いくらか心にしこりが残る。

 

 

女性の上半身裸体が顕になり、僕のひざの上に乗った。ずしんとした重量感。

ここは、一般的に言うおっぱぶというやつである。

 

「じゃあーいいよー。」

 

うら若さが僕に声をかけた。脳がバグった。金銭を渡すことで乳房にありつける。そんなある意味での常識が、僕の中では完全に非常識である。ある地域での常識は、ほかの地域では非常識である。僕はその非常識のレールの上に乗ったことを完全に理解した。

僕は童貞だった。

 

そして、当時大学生だった僕はこじれにこじれにこじれをこじらせていた。

 

乳房に関しての物理的接触に置いて、意味合い以上の感想は無い。だから特にそれについて書きたいことはない。ただただ、FAKEであった日常がREALであったことを実感した。

 

「僕はお金を払っておっぱいを吸っているー。」

 

「僕はお金を払っておっぱいを吸っているー。」

 

「僕はー」

 

 

「目の前にいた普通のうら若さの乳房にむしゃぶりついている。」

 

そうして、

 

 

泣いた。

 

 

泣いていたのだ。

 

 

「こんな普通の女性のおっぱいを吸っている。」その事実はすさまじかった。

「こんなのよくないよーやめようよー」そんな言葉が何度も浮かんだ。浮かんだ。

パーティーバルーンが空に飛んでいくような感じで、浮かんだ。

 

「いや、しかし僕はおっぱいを吸っている。」

 

そんな人間がそんなことを言えるわけがない。吸っている。吸っていたのだ。

ぼくはすさまじくおっぱいを吸っている。そこに言い訳できる事なんてない。

確実だ。実に確実だ。アメリカ映画の祖母の作るオートミールはゲロほど不味いと相場が決まっている。そういう確実さが、そこにはあった。

 

そこには、ただ風俗でおっぱいを吸いながら勃起している男の姿があった。

 

 

 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”

 

 

いやもうこれはどうしたらいいのかわからない。完全に思考停止。ピーガシャン。動けない。いや、おかしいでしょう、なんで僕は普通におっぱぶに来てみただけなのに泣いているんよいや、意味がわからない。っていうか、お金もったいない、普通にスーパーでも買い物をすればよかった。うーん困ったいや、うーん。

 

ここで完全に素に帰った。いや、アルコールのせいでよっぱらっていたわけではない。そういう時期なのだ、そういう時期だったのだ。本当に当時は定期的にそういう思想に僕は陥っていた。素に帰るともう早い。当時は心の中にホンモノを飼っていたが、そいつの支配勢力が今と比べてもすさまじく強すぎたのである。

 

そうなると弱い。とことん弱い。なにがフェイクだリアルだ。急に恥ずかしくなり、時間を終えるとそそくさと家に帰った。しかも童貞だから、咬んでしまって「痛い」と怒られた」ただのアホである。

 

 

 

 

 

 

と、そんなことを昨日の夜から放置していた少し硬くなった果汁グミ100%グレープ味を噛みながら思い出した。果汁グミのおいしさ、

これは、心にすさまじい感性バグ男を飼っていた時期と遜色して換わらずREALである。

 

そんなことを思い出していた。