警察官銃撃 大統領「アメリカは分断されていない」

アメリカで警察官による黒人の射殺事件が相次いだあと、警察官5人が銃撃されて死亡した事件を受けて、人種間の分断が改めて懸念されるなかオバマ大統領は、「アメリカは分断されていない」と訴え、不安感の払拭(ふっしょく)に努めました。
アメリカでは南部テキサス州ダラスで、警察官による黒人の射殺に抗議するデモのさなか、警察官5人が黒人の男に銃撃されて死亡し、事件の背景に、警察が黒人に対し差別的な対応を取っているとする怒りがあるとの見方が出ています。
アメリカ社会で人種間の分断への根強い懸念が改めて浮かび上がるなか、オバマ大統領は、訪問先のポーランドで行った記者会見の冒頭、今回の事件に言及しました。
この中でオバマ大統領は「アメリカは分断されていないと確信している。あらゆる人種のアメリカ人が事件に怒り悲しんでいる」と述べました。そして容疑者の黒人の男について「正気とは思えない男が黒人を代表していることはない」と述べて、不安感の払拭に努めました。
一方、警察の捜査の現場で人種によって扱いに差がみられることについて「この問題が解決しないことに怒りがあるが、これがわれわれが望む社会の姿ではないという認識のもとでの結束もある」と述べ、社会全体で解決に努める必要があると訴えました。
オバマ大統領は週明けにも、銃撃事件が起きたダラスを訪れる予定で、犠牲となった警察官を悼むとともに結束を呼びかけたいとしています。

「問題の根源に米社会の差別と偏見」

民主党系でオバマ大統領の政策立案を支えるシンクタンク、アメリカ進歩センターで、人種問題などを専門とするトッド・コックスさんは「事件は、アメリカ社会、特に司法、警察の分野で人種問題が依然、深刻な問題であることを示した」と述べました。そして、テキサス州の事件では、容疑者の男が直前に起きた白人の警察官が黒人の男性を射殺した事件を契機に犯行に及んだとみられることについて、「白人の警察官の中には、黒人に対する根強い恐怖心がある。それは、白人と黒人の間に横たわる不安感を映し出したものだ」と述べ、警察の過剰とも言える対応の背景を指摘しました。
そのうえで、「警察官が、現場で直面する問題にどのように対応すればいいのか教育、訓練が十分になされていない。組織的な問題がある」と述べ、オバマ政権が進める警察、司法の改革を一段と進めていく必要があるという考えを示しました。
また、「問題の根源には、アメリカ社会の差別と偏見がある。黒人は、教育と雇用の機会が奪われておりこうしたことが若者の犯罪につながっている側面もある」と述べ、ことし11月の大統領選挙に向けて、人種問題を巡る議論が真剣に交わされるべきだと強調しました。