2001年から1年間放送された『ウルトラマンコスモス』で、コスモスと一体となって地球を守る主人公・春野ムサシを演じた杉浦太陽さん。それまでのウルトラマンとはちがい、怪獣を「殺さない」強さとやさしさを兼ね備えたウルトラマンという設定のコスモスは、「自分の性格に合っていた、出会うべくして出会ったヒーロー」。子供の時、最初に見たのはウルトラマンタロウで怪獣の友達がいっぱいいたのを覚えている、という杉浦さんに、撮影秘話や、ウルトラマンについての思い出、好きなストーリーやお気に入りの怪獣について、うかがいました。
子供たちに憧れの目で見られて、ちゃんとしなくちゃって。
ウルトラマンコスモスとムサシと僕は、性格的にけっこう共通する部分があるんです。だから、この役は自分に合ってるな、と思いました。撮影するにつれて、それぞれの人格がさらに融合していく感じもあった。
当時はヒーローブームだったので、ニュースにも取り上げられて反響があり過ぎるほどで、ホントびっくり。
ウルトラマンコスモスを初めて見た子供たちにとっては、ああ、これがウルトラマンなんだ!って、新しい出会いになるわけですよね。昔からいるけど、初めてのウルトラマン。今の子供たちには、今の作品なんだな、と感じて。撮影当初、僕はまだ19才だったんですけど、子供たちから憧れの目で見られるので、プライベートでもちゃんとしなくっちゃって、責任感が生まれましたね。今、20才くらいの人たちから「小さい頃から見てました」ってよく言われます。当時は、かわいいキャラクターもたくさんいたので、ヒーローものなのに、女の子のファンもいっぱいいたんですよ。「初恋のひとがムサシでした」って言われると、すごくうれしいです。
この間、熊本の被災地を訪問した時も、子供たちがみんなウルトラマン人形を持って集まってきてくれたんですよ。
ええっ、各家庭にあるの?みたいな(笑)。その時、最新ヒーローだったウルトラマンエックスだけじゃなくて、コスモスの人形を持ってきてくれた子供たちもけっこういて「知ってるの?」って聞いたら、「知ってる!」って。感激しましたね。
初めて怪獣を「殺してしまう」回が、一番、心に残っています。
だいたい一話完結なんですけど、僕にとって一番思い出深い話は、第28話から30話までの連続した3話※1です。それはウルトラマンコスモスが変身してパワーアップする“エクリプスモード”に目覚めるまでのストーリー。初めて怪獣を「殺してしまう」回でもあります。コスモスが“エクリプスモード”になって、そこから新たな力が芽生えていく。悩んで、かっとうして、力だけじゃダメなんだ、やさしさと強さと、それを同時に発揮する勇気がいるんだって。コスモスも、ムサシも、僕も、人間的にすごく成長することができた話なんです。だからずっと心に残っています。
第31話「ゴンを救え」で登場したクレバーゴンも思い出深いですね。アイツ、とにかく重たいんですよ。スーパーハイテクロボットなので、中に機械が入ってるんで。「ゴーンッ!!」って叫んで、クレバーゴンを持ちあげてスキップでグルグル回るシーンがあったんですけど、あまりにも重すぎてスキップできなくて。NG10連発でした。
隊長役だった嶋大輔さんからは「太陽はスキップができない人間だ」なんて言われるし(笑)、カメラテストだけで、もうクタクタでしたね。
※1 第28話「強さと力」・第29話「夢見る勇気」・第30話「エクリプス」
好きな怪獣を1つだけ選ぶのは、むずかしいなぁ。
好きな怪獣をどれか1つ、と言われたら、うーん、悩みますね。むずかしいなぁ。
でも、なかでも好きなのはヒッポリト星人かな。最強でしょ。ウルトラ5兄弟を倒しまくりましたからね。みんな固まらせましたよね、ブロンズ像に。さらに、ウルトラの父は最強だと思ってたのに、父までもやられちゃう。ヒーローがあんな風にやられちゃうのは見たことなかったですからね。衝撃でした。なんだよ、父、肝心なところで!って(笑)そんな思い出があります。エレキングも好き。ウルトラセブンとの戦いで角を切られちゃうところとか。あとは、カネゴンやジャミラもよく覚えてますね。本当は人間なんですよね、どっちもかわいそうでね。ああいうヒューマンストーリーも好きでしたね。マグマ星人とかバルキー星人とか、ヒト型の宇宙人も好きです。
いつもイベントで共演してたので知り過ぎているっていうか、すごく親しみがあるんです。
コスモスの最終回に、教えが凝縮されています。
『ウルトラマンコスモス』は、僕が19才の時にクランクインして、21才でアップした作品なのでちょうと子供から大人になる時期にかかっているんですね。だから、コスモスは僕の先生であり、人生の師匠といえます。65話を通して、いろいろ成長できたんですけど、最終回※2にその教えが凝縮されています。
最後は、秩序の話なんですけど、敵のカオスヘッダーを最後で許すというところがコスモスの結末のすごくいい所だと思うんですよね。あそこで、カオスヘッダーを倒しちゃったら、何の秩序もなく、結果、戦争では強いものが勝つという話になっちゃいますから。すべてを許す心を持つコスモスっていうのは、ほかのシリーズには無い作品だなぁと思います。
すべてを許そうって、なかなかなれないですよね。僕は3人子供がいますけど、いつもコスモスの教えを話しているんです。「どんな時も、やさしさを忘れないようにしなさい」って。逆に子供たちからは、「パパ、ウルトラマンなんでしょ、筋肉あった方がいいよね」って言われて、カラダを鍛えるようになりました。父親としてウルトラマンであり続けたいし、強いお父さんでなくてはいけないので。僕に憧れてやさしさを持ってもらえば、いい子に育つと思うんで。筋トレをあきらめそうになった時は、いつも子供の「パパ、筋肉いっぱいあって、カッコいいんだよね」って言葉を思い出しますね。いい刺激です。これからもずっとコスモスは、僕の人生の師匠です。
息子は、将来、ウルトラマンになるんだって言ってます。親子二代でウルトラマンって、まだないですよね。夢ですね。今年は、『ウルトラマン』は50周年ですが、『ウルトラマンコスモス』は15周年なんですよ。これも言っておかないとね(笑)。僕にとって、すべてのウルトラマンが、希望の光です。
※2 第65話「真の勇者」
杉浦太陽氏 プロフィール
1981年3月10日大阪府寝屋川市出身。1998年テレビドラマ『おそるべしっっ!!!音無可憐さん』でデビュー。
2001年『ウルトラマンコスモス』で主演・春野ムサシ役。2002年公開の『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET』で映画初主演。翌年『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』公開。
2009年公開の『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で6年ぶりにムサシを好演。2012年公開の『ウルトラマンサーガ』、2015年公開の『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』でもムサシを演じる。