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【栃木】

<参院選>政治と向き合った若者たち 疑問出し合い賢い有権者に

自ら企画した「選挙カフェ」で進行役を務める山本さん(左)=宇都宮大で

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 十代の若者が初めて投票する参院選の投開票日が迫る中、県内の大学にも、わが事として政治に向き合おうと奮闘する学生たちがいる。「政治に無関心」と一くくりにされがちな世代だが、自分たちの未来を左右するテーマに向ける視線は真剣そのもの。宇都宮大峰キャンパス(宇都宮市)を舞台に、二つの取り組みを見つめた。 (大野暢子)

■選挙カフェ

 五日午後、教室で談笑する七、八人の学生がいた。ドアの近くには「選挙カフェ」との表示がある。

 「実家は福島県だけど、投票できるかな」「投票日にアルバイトがあるの」

 不安そうな学生たちに、教育学部四年の山本和香菜(わかな)さん(21)は「不在者投票や期日前投票って知ってる?」と、朗らかに話しかけた。

 法律を学ぶゼミに所属する山本さん。安全保障関連法や憲法改正を巡る動きにも「人ごとではない」と感じる。そのため、「政治家がだめだから政治に興味が持てない」と話す同世代に、もどかしさを感じてきた。

 「国民が政治に無関心だと、政治家はさらに好き勝手に振る舞えてしまう」。この状況に一石を投じようと、法律の知識を生かし、選挙に戸惑う学生らを助ける場をつくることにした。

 他のゼミ生らも賛同し、参院選期間中に、計四回の選挙カフェを開催。期日前投票所の情報に加え、参院選の争点をまとめた資料も手作りして配った。

 投票の疑問が解決すると、話題は自然と政治の方へ。「高校でも政治を学びたかった」「選挙はどんな幸せがいいかを選ぶ日だね」と言葉にも熱がこもる。

 「私たちも政治について考えるから政治家もしっかり働いて、と伝えるのが投票。賢い有権者になろう」。山本さんの言葉に、他の学生らも深くうなずいた。

■18歳と憲法

 「自民党の改憲草案に書いてある『国防軍』と、自衛隊の違いって何?」「現行憲法が掲げる戦争放棄は、そもそも可能なのかな」

 憲法九条と自民党の改憲草案にある九条を読み比べて憲法への知識を蓄えようと、学生有志が五月、初めて自主勉強会を開いた。二十人ほどが集まり、三時間近く熱心に語り合った。

 勉強会のルールは、他人を否定せず、結論を出さないこと。最終的に、改正への賛否は半々程度だった。

 発起人の一人で国際学部一年の小川龍一さん(18)は、「意見の違う相手をたたくより、議論を深めることが大切だと実感できた」と語る。

 企画のきっかけは、同級生の田畑達也さん(18)、中国籍の何一凡さん(20)との間で、「憲法や安保がよく分からないから、一緒に勉強しない?」という話題になったことだ。

 小川さんと田畑さんは、高校三年生だった昨年、安保法を巡る論争を知り、「自分にも影響がありそう」と国会中継に見入った。しかし、政治家の個人攻撃やパフォーマンスばかりが目につき、法律の中身は理解できなかった。「政治を監視しないと、国がどうなるか分からない。見つめ続けなければ」との危機感が、勉強会につながった。

 日本では投票できない何さんも、積極的に勉強会の告知や記録に取り組んだ。「日本と中国の政治制度は違うけど、多様な意見が聞けて新鮮だった」と目を輝かせる。

 大きな収穫を胸に、初めての投票へ向かう若者たち。その姿から、年長世代の有権者や政治家らが学ぶことは、少なくないはずだ。

 

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