米ミサイル配備 真価問われる韓国外交=中ロ反発で緊張も

【ソウル聯合ニュース】韓国と米国が8日、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍への配備を決定した。中国とロシアの反発で北東アジア情勢の緊張が高まるのは必至だ。

 中国とロシアはTHAAD配備に向けた韓米の動きに反対を唱えてきた。これを意識してか、韓米はTHAAD配備の決定を発表した際、「増大する北朝鮮の脅威に対応するため」と繰り返した。また、「THAADが朝鮮半島に配備されれば、どこの第三国にも向けず、北の核・ミサイルの脅威に対してのみ運用することになる」と強調した。

 しかし、中国とロシアはTHAADが自国の「戦略的な安保利益を直接損ねる」との立場を取ってきた。米国の迎撃ミサイル体制が朝鮮半島内に構築されることで米国との核戦力の均衡が崩れかねないという懸念がにじむ。

 中ロ両国はTHAAD配備を、米国による朝鮮半島、北東アジアでの新たなミサイル防衛(MD)拠点の構築と認識している。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は先月の首脳会談で、「米国が北朝鮮の核・ミサイル計画を口実に北東アジアで新たなミサイル防衛拠点を構築することに反対する」と表明した。

 両国が単なる反発にとどまらず、ミサイル配備の強化など戦略的な対応に乗り出す場合、北東アジアの軍事的な緊張が高まり、さらにはこの地域の安保のあり方自体が揺らぐ恐れもある。チモニン駐韓ロシア大使は2月に韓国記者団との懇談で、THAADが配備された場合、「ロシアが対外政策を立てる上で(THAADは)考慮される」と発言している。

 米中は南シナ海問題でも対立が先鋭化している。今月12日には国際的な仲裁裁判所が南シナ海をめぐるフィリピンの申し立てに対し判断を示す予定だ。

 これにTHAAD配備問題も加わり、韓米日対中ロ朝という対立構図が鮮明になる可能性がある。その場合、中国とロシアは北朝鮮の核開発に対する国際社会の制裁協調から外れるまではないにしても、制裁の結束力を緩ませることになると懸念される。

 米国と中ロ間の緊張の高まりを歓迎するのは北朝鮮だ。この隙をついて対北朝鮮制裁の協調のバランスを崩しにかかると予想される。

 中国とロシアの反発の度合い、あるいは報復措置の有無次第では、韓国の対中、対ロ関係に飛び火し、韓国政府の外交が揺さぶられる恐れもある。

 韓米としてはTHAAD配備について中国とロシアに理解を求め、反発を最小限にとどめることが鍵になりそうだ。

 そのため韓国政府は、外交ルートで中国とロシアにそれぞれ事前にTHAAD配備決定について通知したとされる。今後もTHAADは北朝鮮の核・ミサイル脅威への防衛用という説明を繰り返すとみられる。

 韓国・亜州大中国政策研究所のキム・フンギュ所長は聯合ニュースの取材に対し、「中国とロシアは、米国が戦略的な利害のために防衛体制を朝鮮半島に築き、韓国がこれに便乗し韓米同盟が地域同盟化するという重要なシグナルとして受け止めることもあり得る」と指摘。韓国としては煩わしい状況も予想されるとしながら、その外交力を不安視した。

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