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【首都スポ】

冨田千愛&大石綾美が五輪代表 ボート女子軽量級ダブルスカル

2016年7月7日 紙面から

目指すは日本女子初の五輪決勝進出!! 公開練習を終えて、笑顔でポーズを取るリオ五輪ボート日本代表の冨田千愛(左)と大石綾美=埼玉・戸田漕艇場で(久野功撮影)

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 おしとやかな雰囲気が、いざオールを握ると一変する。リオデジャネイロ五輪ボート女子軽量級ダブルスカル代表の冨田千愛(ちあき)(22)=明大院=は誰にも負けない猛練習に次ぐ猛練習を積み重ね、五輪代表にまで登り詰めた。もの静かな語り口とは対照的な負けず嫌いの思いを胸に秘め、一心不乱にオールをこいでリオでの活躍を期する。 (川村庸介)

 滑らかに水上を進むボート。だがオールを握る冨田はおだやかな水面(みなも)とは正反対、がむしゃらにこぎ続ける。「私はどうしても体力でガツガツと行ってしまうところがあって」。苦笑いするが頭の中は一心不乱。水質汚染が心配されるリオのコースについても「汚いから気を付けた方がいいと言われているけど、割と鈍感なので他の人はコースによって水質の違いで重く感じることがあっても気付かないので何でもできる。大きく構えていけばいいかな」と何のその。いざこぎ出せば頭の中にあるのは少しでも速く、前へ、それだけだ。

 おっとりした語り口。だが自己分析は口調とは少々異なる。「気分屋で、あまり先のことは考えずにとにかくやると決めたらやる。やるかやらないかで悩んだときも、やらないで後でモヤモヤするぐらいならやった方がいい。やらなかったら負けたことになるので、悩んだ時点でやる」。迷ったら進め−。ボートは後ろ向きにこぐが、とにかく前へ前への思いでこれまでの競技人生も進んできた。

 鳥取県立米子東高で、2歳上の姉菜月さんがボートをやっていた影響でボート部に入部。「みんなが高校から始めるので、努力次第で結果がついてくるところに引かれた。インターハイや全国大会を目指すにはもってこいだと思った」。インターハイ4位、国体7位の実績を残すと大学進学では明大を選択する。「大学の女子でボートが強いのは早大だったけど競技成績が足りなかったし、明治はインカレでいつも早稲田に負けていたので、自分たちの代で勝てたら面白いと思った」。強豪、名門への対抗意識を胸に競技、練習に励み、ユニバーシアード金メダル、U−23世界選手権銀メダルなどの実績を積み重ねてきた。

 特筆するべきはその練習量だ。大学3年の冬に呼ばれた日本代表の合宿、午前中に30キロ、午後に20キロとこぐメニューを与えられるようになってから意識が変わった。「勝つためにはこんなにこがないといけないのかと思った」。バスケ部だった中学時代、駅伝の助っ人に呼ばれるなど体力には自信があったがそれでも最後の1周はフラフラになってこぐなど衝撃を受けた。そこからは「これをやると決めたら絶対にやる」という持ち前の性格に火が付いた。大学に戻ってからの練習でも「減らそうと思えば減らせるけど、20キロこがないといけないと知ってしまったので、もう減らせなかった。勝ちたかったのでやるしかなかった。強くなるなら今日もこぐ、明日もこぐ」。自らがむしゃらだったと振り返る日々が、一層の飛躍につながった。

 今春からは明大の院に進学。それも勉強と競技の両方を見据えての決断だった。「大学時代に思う存分競技に集中できて、お互い刺激し合いながら伸びてきたので、環境を変えてみたいという思いもあったけど、このまましっかり練習に集中して勉強も頑張りたかった」。政治経済学部からそのまま政治経済学研究科に。「せっかくオリンピックに出るので、スポーツと政治を絡めた研究をしたい」と何事にも全力投球の姿勢は文武両面でも変わらない。

 大学に入ってから自信があった体力と持ち前の負けん気、そして猛練習がマッチして急成長を遂げた冨田。実は当初思い描いていたのはリオではなく地元開催の2020年東京五輪だった。「最初は東京オリンピックに出たい、出られたらいいなと思っていた」。だがリオを視界にとらえ、そして実際に手にして考えは変わった。「東京の前のリオに出られちゃったけど、リオを東京の前の経験にはしたくない。今は目の前のリオしか考えていない」。オリンピックでの日本の女子ボートの最高成績は9位。「女子で初の決勝が目標」と意気込む冨田。やると決めたらとことん、がむしゃらな思いを胸に今日も明日も、オールをこぎ続ける。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。

 

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