オフィスで「クールビズ」が実施される夏になると、韓国・サムスン電子の社員たちの間で毎年論じられるイシューがあります。それは「半ズボンの着用」です。多くの社員が社内掲示板などで「夏だけは半ズボンの着用を認めてほしい」と根気強く訴えていますが、会社側は難色を示し続けています。サムスン電子の服装規定は、小奇麗な「ビジネスカジュアル」です。襟付きシャツやTシャツにコットンパンツというスタイルがサムスンマンのスタンダードです。ジーパンも認められません。
会社側は社員たちからの要求が相次ぐと、昨年には「週末や休日の出勤時には着用OK」という苦し紛れの妥協案を出しました。会社側は「自由な服装が仕事の雰囲気を阻害しかねず、ビジネスマナーにもそぐわない」と説明しています。「男性社員のすね毛が見苦しい」という女性社員たちの指摘もあったようです。
しかし「半ズボン派」の社員たちは「中高生でもない、大人の服装をどうして会社が縛るのか」「グローバルIT(情報技術)企業のサムスン電子が半ズボンのことでこんなにもめているなんて、誰も知らないはず」と譲りません。
文化の違いがあるとはいえ、グーグルやフェイスブックなど米シリコンバレーのIT企業は服装に非常に寛大です。『How Google Works 私たちの働き方とマネジメント』という本には、グーグルの服装規定を問う質問にエリック・シュミット会長が「何でも着なければならない」と答えたという逸話が載っています。実際に、グーグルの経営哲学10カ条の中には「スーツがなくても真剣に仕事はできる」というものがあります。
韓国のスタートアップ企業(起業したばかりの会社)にも、半ズボンにサンダル姿の社員、さらにはスケートボードでオフィス内を移動しながら働く社員もいます。「スーツを着ていても破れたジーパンを履いていても、仕事を最大限効率的にできるならそれが一番」ということでしょう。
こうした動きは大企業にも広がりつつあり、半導体大手のSKハイニックスは2014年から夏の半ズボン着用を認めています。ソウル市の公務員も半ズボンの着用が解禁されてから今年で5年目です。「スタートアップ・サムスン」という新たなスローガンを掲げ、コミュニケーションと実用性を重視するサムスンなら、開発職など内勤が主体の社員だけでも半ズボンの許可を検討してみてはどうでしょうか。