クローズアップ現代

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No.35162014年6月18日(水)放送
あなたの飲酒 大丈夫?

あなたの飲酒 大丈夫?

気付いた時には… アルコール依存

毎週開かれているアルコール依存症の女性たちの会。
働き盛りの会社員や主婦などが体験を語り合います。
仕事や家事をきちんとこなそうとして酒の量が増えていったという人がほとんどです。

参加した女性
「お酒をガソリン代わりにして、自分を奮い立たせていた。
それが最後には体がボロボロになってしまった。」

参加した女性
「3人の子育てを1人で頑張るしかないみたいな。
風呂に入れて、宿題やらせて、寝かせてみたいなことが、お酒を飲みながらやると、ふっと楽になる。」

自分は大丈夫。
そう思っているうちにアルコール依存症に陥ってしまう人も少なくありません。

去年(2013年)、アルコール依存症と診断された37歳の女性です。
専門の病院に通い治療を続けています。
女性は看護師として、大学病院の救急外来で長く働いていました。
25歳のころ、夜勤の前に仮眠を取るためビールを飲むようになりました。
やがて責任ある立場に就くと、重症の患者と向き合うストレスから職場でも同僚に隠れてビールを飲むようになりました。

37歳の女性
「白衣に着替えた後にも、1本飲んで。
アルコール置いておかないと、自分がだんだん落ち着かなくなってきて。」


さらに子どもを産んでからは、仕事と家庭を両立させようと一層、気が抜けなくなりました。
1日に飲むビールは、1ダースを超えるようになりました。
異変に気付いた家族や職場の上司から病院に行くよう勧められましたが、女性は受け入れませんでした。

37歳の女性
「アルコール依存症と自分では認めたくなくて。
私、仕事しているし、お給料ももらえてないわけじゃないし、何なのって、家族にも反抗して。」

結局、女性が依存症と診断されたのは、家族や上司から指摘を受けた3年後のことでした。
酒を断つため入院治療が必要となり、仕事は辞めざるをえませんでした。

37歳の女性
「失ってしまった無駄な時間、無駄なお金、子どもがすごくかわいかった時期。
飲んで過ごしていたり、全部水の泡になってしまった。」

酒が原因で体を壊しても病院で依存症が見過ごされるケースも多くあります。
46歳のこの男性は、酒の飲み過ぎで胃や胆のうなどの病気を繰り返してきました。

「どういう診察券?」

46歳の男性
「これは今までアルコールで内臓やられたり、搬送みたいな形で行った所の診察券なんです。」

しかし、いずれの病院でもアルコール依存症を指摘されることはありませんでした。
男性は内臓疾患の治療を受けて酒を飲める体に戻ったらまた飲み、再び病気になるということを繰り返してきました。
3年前、急性すい炎になった時、初めて精神科での治療を勧められアルコール依存症と分かりました。
今は酒を飲むと極めて不快な気分になる抗酒剤を毎日飲みながら治療を続けています。

46歳の男性
「内科に行っていてもアルコール専門病院クリニックとか、そっちへ行きなさいと一回も言われたことがない。
どこぞの先生でもそういうふうに言ってくれていたら、ちょっとは行っていたかもしれないですね、アルコール専門病院に。」

なぜ多くの人が仕事を失い、健康を損なってまでも酒をやめることができなくなってしまうのか。

30年以上、アルコール依存症を研究してきた精神科医の樋口進さんです。
依存症の患者の脳には特有の変化が見られると言います。

国立病院機構 久里浜医療センター 樋口進院長
「よく見ると、こちらの方が前頭葉、前の方なんですね。
前頭葉の方に黒い隙間がありますよね。
脳が小さくなってしまったために、この隙間ができてしまった。」

左は50代の酒を飲まない人。
右は30代のアルコール依存症の人の脳です。
左の脳に比べ、右の脳は前頭葉が萎縮した分黒い隙間が見えています。
前頭葉は酒を飲みたいという欲求を抑制する機能があります。

しかし、アルコール依存症になると飲みたいという欲求が大きくなるにもかかわらず前頭葉の脳細胞の一部が破壊されて欲求を抑制できなくなるのです。



国立病院機構 久里浜医療センター 樋口進院長
「お酒をコントロールしようとしても、ほとんど無駄なんです。
どんな意志が強い人でも、どんな方でもそれはダメ、できないのです。
だからそこが病気だと我々言っているわけです。
依存症に一度なってしまった方々が努力してコントロールしながらやっていくのは、ほとんど不可能に近いと。」

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