【ロンドン=小滝麻理子】欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の与党保守党の党首選は7日、残留派だったメイ内相(59)と離脱派だったレッドソム・エネルギー担当閣外相(53)の女性対決が決まった。議員の圧倒的な支持を得たメイ氏に対し、レッドソム氏は清新さを訴える。故サッチャー首相以来となる女性首相を懸けた勝負の行方は約15万人の一般党員に委ねられる。
7日の投票でメイ氏は第1回の議員投票に続いて、保守党下院議員の6割の支持を獲得し、圧倒的な強さをみせた。
メイ氏は党内の要職を歴任し、キャメロン政権下で6年にわたり内相を務めた。テロ対策などに発揮した手堅い政治手腕に早くから高い評価が集まった。国民投票では残留の立場だったが、目立った活動は控えたことも奏功。残留派と離脱派に分断された党や国内の融和を図れるとの期待が高まっている。
一方、ほぼ無名だったレッドソム氏は、国民投票キャンペーンで頭角を現した。元銀行員で、初当選したのは2010年と議員経歴は浅いながらも、離脱による経済の活性化を明朗に説く姿が新鮮に映った。ジョンソン・前ロンドン市長や元党首ら党の有力幹部が相次ぎレッドソム氏の支持を表明。実力者のゴーブ司法相が失速するなかで、離脱派の票を集めた。
両候補はこれから遊説演説など選挙活動に本腰を入れる。15万人の党員の最終投票を経て9月に新党首が決まる。議員の間ではメイ氏が圧倒的な支持を獲得しているが、党首選の最終決戦は一般党員の投票で決まる。草の根の支持をいかに広げられるかがカギを握る。05年の党首選では当初は無名だったキャメロン氏が当選した。
争点になるのはEUとの離脱交渉の進め方や移民政策だ。メイ氏は離脱の投票結果を受け入れるべきだと話し、国民投票のやり直しを否定している。EUとの離脱交渉は急がず、来年以降に英国にとって有利な条件を引き出せるようじっくりと交渉すべきだと主張。EU移民に対しても強硬姿勢で知られる。
一方、レッドソム氏は、交渉の長期化は英経済の不確実性を高めるとして、即座に離脱交渉を始めるべきだとの立場だ。新興国との貿易を促進し、高い技能を持つ移民を受け入れ経済を活性化させると訴える方針だ。
両候補ともに不安材料を抱える。メイ氏は沈着さが売りの一方で、頑固で昔ながらの保守党というイメージも強い。今回の党首選中も英国にすでに滞在するEU移民の今後の地位を「保証できない」と発言し、党内で批判を集めた。
レッドソム氏をめぐっても、党首候補になったことで、金融業界でファンドマネジャーだったなどとする過去の経歴に疑惑が浮上した。7日の演説では「同性婚を認める法律には反対だった」との発言が物議を醸した。