「制服が買えない」「給食がない夏休みはおなかがすいて、やせる」。そんな声が子どもたちから聞こえてくる。

 子どもの貧困への対策は待ったなしだ。支援の具体的な制度設計を急ぐべきである。

 子どもの貧困率は1980年代から増加傾向にあり、2012年段階で16・3%を記録。6人に1人が「貧困」とされる。

 最も貧しい層の子と標準的な層の子の格差は、国連児童基金(ユニセフ)によると、日本が41カ国中8番目に大きかった。

 貧困が広がるだけでなく、格差の度合いも大きい現実が浮かび上がる。格差社会の問題が、弱い立場の子どもたちにしわ寄せされているのだ。

 子どもの将来が生まれ育った家が豊かかどうかで左右され、自分は無理だと諦めさせる結果を招いてはならない。

 経済的に苦しいなかで十分な教育を受けられず、大人になっても貧しさから抜け出せない。そんな「貧困の連鎖」は断ち切らなければならない。

 ところが政府が一昨年発表した「子どもの貧困対策大綱」では、貧困率の改善などの数値目標が盛り込まれなかった。

 昨年末は、ひとり親世帯への支援が目玉の政策パッケージをまとめたが、児童扶養手当の支給が高校卒業で打ち切られるなど、まだまだ不十分だ。

 いま求められるのは実態を把握し、幼い時から大人になるまで切れ目なく支援することだ。

 親の就労も含め、教育、福祉、医療、労働などの施策を組み合わせる必要もある。

 一番の問題は、財源をどう確保するかだ。対象や支援の額などを詰めなければならない。

 参院選では、多くの党が子どもの貧困の公約を掲げたが、支援の「拡充」「推進」「充実」などあいまいな言葉が並ぶ。

 例えば大学進学の道を開く奨学金では、返済不要の給付型奨学金について自民が「創設に向けて検討」、公明や多くの野党が「創設」と掲げた。だが、どんな制度にし、財源をどうするかは必ずしも明らかではない。

 財源がないから、やらないという姿勢ではすまない。財源をつくりだしてでも取り組むべきである。

 子どもの貧困は、国家財政の点でも見過ごせない課題だ。

 対策を取らなければ、13年に15歳だった1学年だけでも生涯所得が計2・9兆円減り、国の負担が1・1兆円増す。そんな推計を日本財団が発表した。

 子どもの可能性をつぶす国に未来はない。社会全体で問題に取り組む覚悟が必要である。