韓国の大がかりな汚職防止法が経済界の反発に直面している。公職者に対する高価な食事接待や贈り物が禁じられれば、国内消費がさらに減退することになるという主張だ。
9月に施行される新法は公務員と教員、ジャーナリストを対象とし、事実上の賄賂の文化の是正を図る。アジア4位の経済国である韓国では、高額な接待や食事、贈り物がビジネスの一部と見なされている。
反対論は5月から勢いを増した。新法の内容が固まり、果樹農家や漁業者、酪農家、商店主などが反対を叫ぶようになったからだ。
公職者が3万ウォン(約2600円)以上の食事や5万ウォン以上の贈り物、10万ウォン以上の慶弔金を受け取った場合、最大3年の禁錮刑や3000万ウォンの罰金を科される。
「我々は、この法律が零細商店の売り上げに及ぼす悪影響を懸念している」と、韓国零細企業連盟のリー・ウォンソプ理事長は言う。同氏によると、零細企業が被る損失は年間2兆6000億ウォンに達する可能性があるという。「現在の消費者物価を踏まえて、食事と贈り物の上限額を引き上げるべきだ」
■「コネ重視の文化が腐敗の温床」
昨年の法案成立時には、急速な経済発展にもかかわらず腐敗が残り続ける韓国の分水嶺になると歓迎された。トランスペアレンシー・インターナショナルの2015年腐敗認識指数で、韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の中で27位だ。
「我々のコネ重視の文化が腐敗と不公正の温床を生み出している」と、市民団体「参加民主主義のための国民の結束」の弁護士チャン・ユシク氏は言う。
「司法を含む公的部門に人々が強い不信を抱く一方で、我々の社会は賄賂と情実主義で大きな経済損失を被っている」
新法は、韓国に根付いた商慣行の中核部分に切り込んでいる。朴槿恵(パク・クネ)大統領も経済成長に及ぼす悪影響について懸念を表明したほどだ。現代研究所によると、労働者の9%に影響が及ぶ可能性がある。
中国経済の減速を受けて輸出が落ち込むなか、韓国の今年1~3月期の経済成長率は前年同期に比べてほぼ半減の0.5%に落ち込んだ。家計の負債が重荷となって消費支出は0.2%減少した。
新法に対する反発は、善意の印と賄賂との区別がぼやけがちな国でビジネス文化を変えることの難しさを浮き彫りにしている。伝統的な祝祭の時期には、高級牛肉や果物、魚の詰め合わせなどが事業主から公職者に贈られる。
「高価な食事接待や贈り物は、韓国の商取引では当たり前のことと見なされている」と、トランスペアレンシー・インターナショナル・コリアのヨ・ハンボム事務局長は言う。