皆さんは地図を「読む」ことってありますか。僕は最近まで地図は読むんじゃなくて「見る」ものだろうと思っていたのですが、そんな考えを少し変えてくれる作品に出会ったのでご紹介します。デンシバーズで連載されている高舛ナヲキさんの「ジグソークーソー」というタイトルです。
「ジグソークーソー」は作者がコミティアで発表していた同人誌をベースにした作品。「凸凹コンビで贈る地理ミステリー!」と銘打たれており、とある高校でサークル立ち上げの認可を行う優等生ダイチのもとに、「空想地図研究会」を立ち上げたいと、高身長で巨乳の少女チリエがやってくる場面から始まります。申請時刻を過ぎていたこともあり、けんもほろろに突き返すダイチでしたが、チリエが丸筒に入れて持ってきた巨大な地図には興味津々な様子。「地図はある種のパターンで、どこか人間の営みの痕跡が残る」と説くチリエに対し、ダイチはサークルを認可する代わりにと、こんな相談を持ちかけます。「僕は幼いころ江戸川区に住んでいたんだろうか? 教えてほしい」。
聞けばダイチは幼少期の記憶と、生まれ育った場所が一致しないというのです。両親にも確認を取ったものの、江戸川区に住んでいた過去はない。しかしなぜか江戸川区で暮らした記憶がある。チリエはダイチの証言にある神社や病院、橋などの情報から、彼の記憶にある場所を絞り込んでいきます。はてさてダイチが抱えた謎は解決するのか。
この作品に登場する地図は「見る」よりも「読む」という使い方をされています。「神社というのは性質上、昔からあるものなのでダイチの記憶にある場所は、近年できたような埋め立て地にはない」など、その街の歴史とともに地図を読んでいく。それを象徴するようにチリエは「地図のパターンを読み解く事ができればいろんなことが分かる」と言っています。僕はこれまで地図なんてスマホやカーナビで目的地を入力して現在地からを線で結ぶ、という使い方しかしていませんでした。でもたとえば旅行などに出かける前に、目的地の立地や区画、現地の建物などを地図帳で読みこんで「この場所は◯◯な地形だから××が発展したんだ」と知識を深めておけば、より旅が味わい深いものになるかもしれませんね。
さてこの「ジグソークーソー」ですが、現在デンシバーズでは3話目までが公開されており、ダイチが抱えていた謎については一旦決着が着きました。ただチリエが立ち上げようとしている研究会には、なぜ「空想」の言葉が冠されているのかなど、物語にはまだまだ謎があります。ダイチのサポートを得てサークル発足へと動き出す「空想地図研究会」が、今後どうなっていくのか注目しましょう。