野々村被告判決 政活費の透明化足りぬ
政務活動費(政活費)をだまし取ったとして詐欺罪などで起訴された元兵庫県議の野々村竜太郎被告に対し神戸地裁は、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。判決は「金銭欲から県民を裏切り、制度の信頼を損ねた刑事責任は重い」と厳しく指摘した。
政活費は政策の調査研究などのため、報酬とは別に住民の税金から地方議会の議員に支給される。その不適切な支出が全国各地で次々と明るみに出る発端となった事件である。全ての議会が判決を司法からの警告と受け止めて、制度改革の教訓にしてもらいたい。
判決によると、被告は領収証を改ざんして3年間に計344回、東京や福岡、城崎温泉(兵庫県)に日帰り出張したなどと虚偽申請し、約913万円の政活費を詐取した。食料品購入や国民年金保険料支払いに私的流用しており、公金意識はあまりに乏しい。だが、これを被告だけの問題として済ませてはいけない。
被告の不正が2年前に発覚し、各地の議会で疑惑が表面化した。事務所費を二重計上したり、架空の領収証で県政報告会を開いたと見せかけたりするなど、でたらめな処理が相次いだ。宮城県議会では不正支出の疑いを市民団体に指摘された議員が議長を辞め、堺市は不正支出の疑いがあるとして市議を詐欺容疑で刑事告訴した。
議会が住民の信頼を取り戻すには自発的に改善を進めるほかない。
議員個人に政活費を定額で前払いする方式は、使い切るために不正処理を招くという批判が強い。そのため兵庫、徳島両県議会は前払い式を見直して、会派がチェックして事後精算する方式に変えた。一定の不正防止効果は期待できるが、この精算方式さえ、取り入れている都道府県議会は少ない。支給ルールの厳格化の動きはまだ足りない。
一方、領収証をインターネットで公開する議会は増えている。都道府県議会では高知県議会が先駆けて導入し、大阪市議会が先月、政令市で初めて実施した。住民が監視しやすく、高級店での飲食や不要な備品購入に歯止めがかかるはずだ。使い道をガラス張りにする効果は大きい。
政活費の支出には原則として領収証の添付が義務付けられている。だが、自動券売機で切符を買う場合などで例外を認める規定がある。悪用されやすいため、見直す必要があるだろう。
政活費で処理できる経費の基準はあいまいで、目的に合った内容かどうかの線引きは難しい。外部から支出をチェックする第三者機関を設置して透明化を図ることも有用ではないか。監視の目を緩めずにいたい。