点滴の時間合わせでもう悩まない!滴下計算を簡単に行う方法とは?

慣れないと時間がかかってしまいがちな点滴の滴下速度計算。看護に関わる人でも計算が苦手という方は少なくありません。また、公式を丸暗記しようと思っても、なかなか覚えにくいところがありますよね。今回は主に実習や臨床でも楽に計算出来る方法ついてご紹介していきます。点滴の滴下速度計算に苦手意識を感じてしまっている方はぜひ参考にしてみてくださいね。

点滴の時間をどう決める?

点滴の滴下速度の計算が意外とややこしくて悩まれている方も多いのではないでしょうか。教科書に載っている公式も覚えにくいところがあり、研修や実習の場で点滴速度の計算に苦手意識を抱いてしまうことも少なくありませんよね。

もちろん計算が苦手な方では点滴滴下早見表を使用するという方法もあります。ですが、そうなると常に早見表を携帯していなくてはなりませんし、いつまでも計算で求めることが出来るようになりません。

また、実際の業務を行う際には残液から滴下数を計算したり、輸液速度の指示が変わったり、輸液総量がキリの良い数字ではなくイレギュラーだったりする場合も少なくありません。輸液管理は治療を行うために必須の技術ですから、ぜひコツを押さえて自分自身でしっかりと計算出来るようにしておきましょう。

点滴の基礎知識

点滴とは?

点滴とは、血管の中に管を固定し、菅で繋がっている薬剤の袋を高い位置に固定し、重力により少しずつ血管の中に薬剤を投与していく方法のことを言います。「点滴」という薬剤があるわけではなく、「管を血管に固定して薬剤を投与する」方法自体を点滴というのですね。

点滴であれば、薬剤を直接血管の中に投与することが出来ます。そのため、薬の経口投与が難しい場合や、経口で薬を服用して効果が得られるまでの時間を待つ余裕がない緊急事態の場合に点滴が行われます。また、中には点滴でなければ投与することが出来ないような薬剤もあります。

点滴を行う目的は3つある

点滴を行う目的は、大きく分けて「水分や栄養補給」「薬剤投与」「薬剤投与の準備」の3つがあります。

(1)水分や栄養補給

点滴を行う代表的な目的がこちらですね。何らかの理由により口から水分や栄養を補給出来なくなってしまったり、熱中症による脱水状態時などのように迅速に補給することが必要な場合に点滴が行われます。

通常、点滴は腕の静脈に管を入れます。ただ、長期間にわたって経口から食べ物を摂取できない場合は栄養補給を目的とした高カロリーの点滴が必要になるのですが、カロリーの高い点滴を細い静脈に入れると静脈炎を起こしてしまいます。そのため、高カロリーの点滴を行う場合は、大腿静脈や内頸静脈、鎖骨下静脈などの太い静脈に管を入れる必要があります。

(2)薬剤投与

薬剤の中には、経口薬が存在せず、静脈から投与する剤型しか無いものもあります。その場合、点滴の管を通して薬剤を血管に直接投与していきます。また、何らかの理由で経口から薬を服用で出来ない場合なども点滴から薬を投与することがあります。

(3)薬剤投与の準備

すぐに薬剤を投与する必要はないものの、いざ薬剤を投与しなければならない場合に備えて、事前に点滴の管を血管に入れておき、薬剤の投与ルートを確保しておくというものです。突然の痙攣や意識消失、不整脈などの可能性が考えられる場合は事前に薬剤を投与するために点滴の管を設置しておきます。

この場合、点滴の中身は水分補給に用いられる水分に電解質を混ぜただけのものが繋がれています。

点滴の管の種類には大人用と小児用がある

点滴の管(ルート)は2種類あり、一般的な大人用ルートと、微量ずつ滴下する必要のある小児用ルートです。大人用のルートは【1mL = 20滴】、小児用のルートは【1mL = 60滴】と定められています。

対象が大人であっても小児用のルートを使用する場合があり、その主なものには「少ない量の点滴(1000cc以下)を24時間キープで滴下する時」「一度に多量の輸液が体内に入ると、体にとって負担となる薬剤が含まれている時」「高齢者や心疾患など、大人用ルートで滴下すると負担となる要因がある時」などが挙げられます。

点滴の中身の種類

一般的な点滴の中身は、水分に電解質を混ぜたものです。ただ、中には抗がん剤治療に用いられるような特殊な点滴や、細菌を倒すための抗生物質が含まれた点滴もあります。

患者さんの中には「風邪が酷いので点滴をしてください」と言われる方もいらっしゃいますが、点滴の中身は水分に電解質を加えたものですから、これを血管内に投与しても風邪を治す効果は期待出来ません。また、抗生物質の点滴もありますが、大部分の風邪は細菌ではなくウイルスによるものですから、効果は期待出来ないのです。

以前は、点滴にビタミン剤を加えて投与していたこともありましたが、現在は風邪の治療にビタミン剤を使用しても効果がないことが証明されているため、そのような点滴を行うことはなくなっています。

点滴滴下数計算方法とは

早見表を利用する

点滴滴下数の計算がどうしても苦手な方や、計算に慣れるまでは早見表を使用するという方法があります。点滴滴下早見表を使用する場合は、輸液の総量とどの輸液セット(成人用:20滴/mLまたは小児用:60滴/mL)を使用するのか確認してから使用するようにしてください。

基本の滴下数計算

それでは、実際に点滴の滴下数を計算してみましょう。まず医師からの輸液指示を確認します。実際の指示は以下のような形で行われることが多いです。

・(輸液製剤名)200mLを2本/日
・(輸液製剤名)500mLを80mL/hr
・(輸液製剤名)250mLを2時間かけて

ここでのポイントは、「何mLを」「どのくらいの時間で」落とすことです。それでは、計算していきましょう。

<基本的な計算方法>

1分間当たりの滴下数 = (指示された輸液総量)÷(指示された輸液時間〔分〕)×(輸液セット1mL当たりの滴下数)

輸液指示は時間(hr)で指示されることがほとんどです。そのため、滴下速度を計算する場合は、時間を分に直してから計算する必要があります。2時間であれば120分、6時間であれば360分、24時間であれば1440分ですね。では実際に計算してみましょう。

(例1)小児用ルートで、500mLの点滴を12時間かけて輸液する

まず、12時間を分単位に直します。12(時間) × 60(分)= 720分ですね。
ですから、1分間当たりの滴下数は、500(mL)÷ 720(分)× 60(滴/mL) ≒ 42(滴/分)

と求めることが出来ます。

(例2)成人用ルートで、100mLの点滴を30分かけて輸液する

1分間当たりの滴下数 = 100(mL)÷ 30(分)× 20(滴/mL) ≒ 67(滴/分)
成人用ルートと小児用ルートで用いる数字が異なりますので、注意するようにしてくださいね。

(例3)小児用ルートで、200mLの点滴を3時間かけて輸液する

まず、2時間を分単位に直しましょう。3(時間) × 60(分)= 180分ですね。
ですから、1分間当たりの滴下数は、200(mL)÷ 180(分)× 60(滴/mL) ≒ 67(滴/分)

となります。

1秒あたりの滴下数計算

実際に業務を行う場合、「5秒または10秒で、何滴落とす」「何秒で1滴落とす」と計算出来るようにしておくと、輸液管理が行いやすくなりますので、ことらも覚えておきましょう。

1秒間あたりの滴下数は、1分間当たりの滴下数を60で割ると求めることが出来ます。

10秒あたりの滴下数計算

業務で一番活用しやすいのが、こちらの10秒当たりの滴下数かもしれませんね。10秒間当たりの滴下数は、以下の方法を用いると比較的簡単に求めることが出来るようになりますので、ぜひチャレンジしてみてください。

<計算方法>

1)1時間に何mL輸液するのかを計算する(輸液総量〔mL〕÷ 指示輸液時間〔hr〕)
2)小児用ルートならば「6」、成人用ルートなら「18」で、1)で求めた数字を割る

(例1)小児用ルートで、500mLの点滴を12時間かけて輸液する

10秒間当たりの滴下数 = 500(mL)÷ 12(時間)÷ 6 ≒ 6.9(滴)

(例2)成人用ルートで、100mLの点滴を30分(0.5時間)かけて輸液する

10秒間当たりの滴下数 = 100(mL)÷ 0.5(時間)÷ 18 ≒ 11(滴)

(例3)小児用ルートで、200mLの点滴を3時間かけて輸液する

10秒間当たりの滴下数 = 200(mL)÷ 3(時間)÷ 6 ≒ 11(滴)

点滴滴下速度をもっと簡単に計算する方法

輸液量 ÷ 時間

小児用ルートをメインに滴下数を考えるようにすると、比較的簡単に滴下数を求めることが出来るようになります。例えば、500mLを4時間で落とす場合、これは1時間当たり125mL(500mL ÷ 4時間)を落とすということですよね。現場においては、「125ソク」「125ピッチ」などと指示されることが多いです。

125mL/時間の指示流量ということは、小児用ルートでは1分間に125滴を落とすことになります。これはどういうことかというと、公式を利用して求めると、1分間当たりの滴下数は、500(mL)÷ 〔4(時間)× 60(分)〕× 60(滴/mL)ですよね。この時、一度60(分)で割って、その後60(滴/mL)をかけているわけですから、これらを打ち消すことが可能です。

つまり、125mL/時間の指示流量であれば、そのまま1分間に125滴と考えることが出来るわけです。小児用ルートであれば、このまま60秒で125滴ですから、1秒あたり約2滴となります。また、成人用ルートであればこの3分の1になるわけですから、大体3秒で2滴と考えることが可能です。

指示が60mL/時間であれば、1秒1滴!

医師からの指示が60mL/時間(60分)の場合、1mL = 1分(60秒)ですから、小児用ルート(1mL = 60滴)であれば、1秒1滴と考えることが可能です。成人用ルートであれば、この3分の1ですから、3秒で1滴ですね。

125mL/時間の場合であれば、60mL/時間の約2倍の流量ですから、小児用ルートの場合は1秒2滴、成人用ルートであれば3秒2滴となります。また、80mL/時間なら、60秒で80滴落とすわけですから、小児用ルートでは3秒4滴となります。

「60mL/時間の場合は1秒1滴」を覚えておくと、色々な場面で応用が利くようになりますので、ぜひ頭の中に入れておくようにしてみてくださいね。

点滴は時間以外も注意する

患者の症状により臨機応変に調節

点滴の滴下速度は、主に患者の年齢や体重により目安が決められることが多いですが、注意が必要なのは体重だけではなく、腎機能や肝機能、心機能、内分泌異常、体液喪失といった症状がある場合には、これらの症状も考慮する必要があります。

これらの症状が特にない場合は、概ね500mLの点滴を3時間くらいかけて落とすのが目安となりますが、もし心機能が低下しているとすると食塩含有量の少ない輸液を目安時間よりもゆっくりと落とす必要があります。

また、腎機能が低下している場合は、カリウムと食塩含有量の少ない輸液をゆっくりと落とさなければなりません。特に高齢者は心機能が低下している場合が多いですから、500mLの点滴を行う場合は3時間以上かける必要が出てきます。

点滴時間は、患者の年齢や基礎疾患の有無、肝・心・腎機能の状態などをしっかり確認するようにし、その都度臨機応変に対応するようにしてください。通常、これらのことについては医師から指示があることが多いですから、きちんと確認することを忘れないようにしましょう。

患者の体勢で滴下速度は変わる?

点滴速度は患者の体勢によっても変化します。例えば、患者が立って歩いたり、腕を曲げたりすると滴下速度は遅くなります。そのため、もし立った状態で滴下速度を合わせてしまうと、患者がベッドに横になった途端にすごい速度で点滴が落ちてしまうことになるのです。

そのため、点滴滴下速度を合わせる時は、最も点滴の落ちが良い状態(寝て、腕を伸ばしている状態)で1滴多めに合わせて、滴下時間を調整しているという看護師の方もいらっしゃいます。

もちろん、点滴滴下速度をきちんと合わせるためには、点滴中に何度か滴下速度を確認しに行く必要があります。点滴滴下速度が速くなりすぎてしまうと、患者に大きな負担をかけることになりますから、十分に注意するようにしてくださいね。

点滴漏れが起きた時の対処法

どんなに完璧に点滴を刺せたとしても、100%点滴漏れが起こらないとは限りません。点滴が漏れると漏れた部分の皮膚周辺が損傷してしまうため、点滴中は点滴漏れがないかどうかしっかりと確認する必要があります。特に、栄養状態の悪い方や糖尿病の方は漏れやすい傾向にありますので注意してください。

もし点滴漏れが起きたら、点滴を一旦中止して針を抜きます。その後、漏れた部位を避けて新しく点滴を指しましょう。可能であれば反対の手にすることをお勧めします。また、通常少しの漏れであれば特に処置は入りませんが、温めて吸収させる必要がある場合もあります。

注意が必要なのは炎症を起こしている場合で、この時は温めるのではなく冷やすことで炎症反応を軽減させる必要があります。これらの対応は病院に点滴漏れの際のマニュアルが用意されていることが多いです。また、薬剤によって対応が異なるものもありますので、分からない場合は薬剤担当者に確認するようにしてください。

点滴滴下速度を計算出来るようになろう!

点滴の時間をはかるために点滴滴下速度の計算をしますが、苦手な場合点滴滴下早見表につい頼りがちになってしまいますよね。ですが、点滴滴下速度の指示は早見表に載っているキリの良い数字ではないことも多いですし、患者さんの症状によっても異なります。

点滴滴下数の計算にばかり捉われてしまうと、患者の病状や症状の把握がおろそかになってしまうこともあります。きちんと自分の頭で計算出来るようにしておき、どのような状態でも臨機応変に対応出来るよう日頃から心がけるようにしてみてくださいね。

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