物語の結末を、最後に観客に観せる手法がある。
観ている側の想像を掻き立てつつ、
「なぜ、その結末に至るのか」が描かれていって、
最後に予想を裏切られるのは、気持ち良さがある。
この『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』も、
主人公(著者)が、レズビアン風俗で、
お姉さんと裸で対面しているシーンから始まる。
エロそうなおねえさんが「ごろんして」と
イイ感じに誘ってくれているのだが…
どうも主人公は怯えきっていて、
隠してるハゲがあり、自傷の跡もびっしり。
ここらへんで、単行本表紙のピンクの感じや、
裸の女子2人、そしてカバー中央の
乳首の突起(!)から、
仄かにエロ展開を期待していた僕は、
「あれ…絵は可愛いけど、
どうも様子がおかしいぞ…
単なるエロ漫画ってわけじゃない…?」
と気付いた。
そんなプロローグから彼女が、
「なぜレズ風俗に行くことになったのか」
が描かれていく。
楽しい高校生活から一転、大学を中退し、
鬱と摂食障害になった過去。
ここから、レズビアン風俗に行くまでの
10年間の、自分の心情や、
置かれていた状況に対しての、
すさまじい分析と言語化が行われる。
たとえば、体調不良や、怪我、身体の痛みで、
自分がボロボロになっていくことへの嬉しさに
ついて、作中ではこう描かれていた。
おお…「心」の不可視の痛みより、「身体」に可視のダミーの痛みをつくって見る方が落ちつく…自傷するってそんな精神状態なのか…
と、このようにかなりヘヴィーな精神状態が
描かれ続けるのだが、読んでいて不思議と、
凄い暗い気分になったり、気分が悪くなったりはしない。
なぜなら、この漫画自体が、
時間と労力をかけて分析・言語化されて、
「不可視の心の痛み」が説明されて、
ルポ漫画に昇華されているものだからだ。
そして、そのルポ漫画が、
Pixivで480万PV超という大人気で、
単行本化されていて、単行本の売行きも
現在4刷り(重版出来×4回!)
という事実が前提にある。
『さびしすぎてレズ風俗行きましたレポ』購入者限定で、とあるレズビアン風俗で、2000円割引のキャンペーンまで起きている。どんだけだ。
【レズ風俗スタッフブログ「レズ風俗大阪レズっ娘クラブ&レズ鑑賞クラブティアラのスタッフ御坊(おぼう)のブログ」へ】
(ちなみにここは、著者・永田カビさんが初めて訪れた、漫画に登場したお店なんです。)
その前提は、ものすごい希望であり、
途中、どんなどん底な状態が描かれても、
暗にハッピーエンドが約束されている物語なのだ。
果たして、
レズ風俗にいったら、人は変わるのか?
どん底からどう立ち上がったのか。
何が、彼女を奮い立たせたのか。
それは、ぜひ読んで確かめていただきたい!(大声)
僕は、この漫画の形をした「希望」を応援したい。
このルポ漫画は完結しているが、
もちろん著者・永田カビさんの人生は続いている。
そして今は『一人交換日記』という漫画を連載していて、
またしても人生との闘いをルポしている。
【『一人交換日記』を読む】
単行本を買ったり、WEB連載を読んだり、
感想をツイッターでつぶやいて拡散したり。
そんな形で、読者からの応援が届けば、
永田カビさんが持っている、赤裸々で面白い漫画を描く力によって、
言語化できない苦しみから、救われる人が増えるかもしれない。
それはとっても、素敵なことだと思う。
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