道重さゆみ卒業後もさらなるアップデートを 17周年迎えた「モー娘。」この秋、誕生17周年を迎えた「モーニング娘。'14」。あらためて17年という年月の長さに驚かされる。メジャーアイドルグループの中で、メンバーチェンジを繰り返しながらも、ここまで長い期間続いているのは、「モー娘。」以外にないと思う。 あれはまだ新人記者で青森支局に赴任していたときのこと…。県内出張で訪れていた城下町弘前の商店街の大通りを、1台の改造車に乗り込んだヤンキー風の青年が、発売されたばかりの「モー娘。」のデビュー曲『モーニングコーヒー』を大音量で流しながら疾走していた光景がふと思い出された。きっと彼は彼なりの不器用な方法で、東京のオーディション番組から生まれた新人アイドルグループの船出を応援したかったのだろう。 こうした全国津々浦々のファンの応援もあり、「モー娘。」はヒット曲を連発し、やがて国民的アイドルに成長していった。20~30代の男性の中には少年時代、人気メンバーの安倍なつみや後藤真希にほのかな恋心を抱いていた人も多かったはず。女の子にとっても憧れの的だった。 だが初期・中期の人気メンバーが次々と卒業していくうちに、知名度は徐々に低下。長い低迷期(この時期にグループのダンスや歌の表現力が向上したとしてファンはプラチナ期と呼ぶ)の後、再び「モー娘。」に輝きを取り戻したのが8代目リーダー、道重さゆみ(25)だった。バラエティー番組では清楚な雰囲気ながら、ナルシストキャラや毒舌をさく裂。AKBグループが急成長していく中で、まさに孤軍奮闘していた。 そして2013年、「モー娘。」に転機が訪れる。メンバー全員による、一糸乱れぬ本格的なフォーメーションダンスが「格好いい」と評価され、オリコン週間チャートで久しぶりに1位を連発。今年に入ってからは「モーニング娘。'14」と改名。大手携帯電話会社CMに出演し、“再ブレーク”を果たした。 だが正直な話…現在の「モー娘。」と聞いて、多くの人が名前を思い出せるのはリーダーの道重一人だったのも事実だ。そんな中、道重は今年4月、地元山口での公演で突然、秋ツアーの最終日をもって卒業することを表明し、多くのファンに衝撃が走った。「一体なぜ?」と。 道重はその公演後に自身のブログで、「リーダーになってから大好きな『モー娘。』に恩返しがしたかった。その恩返しとは、『モー娘。』をたくさんの人に知ってもらう…ことでした。そんな中で、シングルで5作連続1位をとれました」(一部略)と心境をつづり、「ものすごく後輩たちが頼もしくなったって感じました。なんか…安心しました」と告白。その上で「でも、まだ時間はあるし、もっともっと後輩たちに伝えたい事や、みせたいと思ってる事もあります」と決意を表明している。 卒業の理由はきっと一つではないと思う。だが、この文面からわかるのは道重が本当に「モー娘。」が大好きで、だからこそ自分が身を引くことでもっと後輩たちに光を当てたいという切実な願いだろう。 バラエティー番組でも知名度とトーク力のある道重だけに出番が集中する。そのことに道重自身も悩んでいたのではないか。だからこそ、さらなる進化のために自身が卒業してグループを「アップデート」すべきだと決意したのでは…。そんな思いに駆られた。 一方で、人気メンバーの卒業でファンが離れてしまわないのかという心配もしてしまう。かつてエースだった安倍なつみが卒業したときのようなハレーションはないといえるのだろうか。 だが、その心配はきっと杞憂に終わる気がする。ライブ会場に詰めかけて声援を送るファンの多くはそんな道重の「真意」を、ここのコラムに書くまでもなく、よく理解しているように感じられた。 日本人ファンだけではない。先日、「モー娘。」は米ニューヨーク単独公演を成功させたが、同行したスタッフによると、会場の外国人ファンからも「道重が卒業することは悲しい。でも『モー娘。』は人が入れ替わりながらも続いていることが魅力。僕たちはこれからも『モー娘。』を応援し続ける」といった声が多く聞かれたという。 道重の意志を引き継ぐ後輩メンバーをすべて紹介しきれないが、実は人材がなかなか豊富なのだ。米国公演で道重以上の声援の大きさに本人も周囲も驚いたのは、ぽっちゃり体型(失礼!)の鈴木香音(16)。「やっぱり私がアメリカンサイズに対応していたからかな。活動の幅は広げたいけど体の幅はちょっと狭めたい」と笑う屈託のなさが魅力である。久しぶりに法事で会った遠い親戚のきれいなお姉さん的雰囲気があるのにまだ17歳という若さに驚かされるのが、サブリーダーの譜久村聖。グラビアでも活躍している。そして「センターをねらいます」と宣言しながら、ギャグがいつも滑り気味。そこがけなげな生田衣梨奈(17)も捨てがたい。先日、新加入した新メンバー4人(12~15歳)も英会話がペラペラ、書道7段、フィギュアスケート経験者、アヒル口が特技…といった注目株がそろっている。 11月26日にいよいよ卒業する道重。自身にとってラストとなるグループ57枚目のシングル『TIKI BUN/シャバダバ ドゥ~/見返り美人』の発売イベント開演前、報道陣から「卒業した後も『モー娘。』は大丈夫?」と聞かれ、「大丈夫だから卒業するんです」とまっすぐな瞳で語った。その視線の先には、さらにアップデートされた同グループの未来が広がっていたに違いない。 個人的には、アイドル界にとどまらず、『LOVEマシーン』『I WISH』『ザ☆ピ~ス』といった、多くの人が歌詞を口ずさめるような、時代を象徴するヒット曲の出現にも期待したい。(関口康雄・共同通信記者) 【共同通信】
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