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【政治】

「票が消える…」新宿区の謎 持ち帰り? 過去4回の選挙で毎回100票前後

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 参院選(10日投開票)と都知事選(14日告示−31日投開票)を前に、東京都新宿区の選挙管理委員会が候補者とは別の意味で「一票の行方」に気をもんでいる。2014年11月以降の国政選挙や区長選など四つの選挙で、交付した投票用紙の数と開票結果が合わず毎回、100票近くが行方不明(不足票)になっているためだ。区は有権者の持ち帰りが原因とみるが、不自然な量の多さで、投票所の係員を増やして本番に備える。 (皆川剛)

 区によると、不足票は一四年二月の前回都知事選は五票だったが、同十一月の区長選で九十九票に急増。同十二月の衆院選は小選挙区が八十九票、比例代表が百七票。昨年四月の統一地方選の区議選でも百二票が消えた。この際は最下位当選者と次点の差が二十九票で、百票は当落に影響する数字だ。

 この四回の選挙で二十三区内で投票者数の近い中野区と比べると、新宿区の不足票の多さが際立つ=表参照。より投票者数が多い区を見ても、昨年四月の区議選の場合、約三十万人と最多だった世田谷区で不足票が二、練馬区と大田区が九、江戸川区が三など一桁にとどまる。

 不足票が出る主な原因は、有権者が投票せずに投票用紙を持ち帰る場合と、選管が投票済みの用紙を紛失した場合のいずれか。新宿区選管の説明によると、直近の選挙となった昨年四月の区議選の事務手順は次の通りだった。

 期日前投票の投票箱は毎夜、施錠した部屋に保管。箱自体も施錠し、開票日まで開けなかった。当日投票でも午後八時を過ぎたら箱を施錠。開票ではすべての投票箱を投票管理者、立会人、警察官が同乗したタクシーで開票所に運び、機械で百票ごとに仕分け、機械の中に票が残っていないことを確かめ、もう一度票を積み上げて確認。作業はすべて区職員が行い、立会人らが場内を見回った。

 百二の不足票が判明したのは、確定時刻の翌日午前零時四十七分の直前。票を探したが、見つからなかった。

 区選管は「開票事務は正確に執り行った」と、持ち帰りが原因とみているが、貴重な票が多数消えるという事態を重視し、検討チームをつくった。今回の選挙では、投票箱のそばに職員を新たに一人配置し、投票に来た人を「こちらにどうぞ」と箱に誘導するという。

◆不正なければ調査されず

 不足票は、不正が見つからなければ原因特定のための調査はされず、「持ち帰りとみられる票」として統計上処理される。総務省選挙部管理課の担当者は「不正がない場合は、数が多くても特段問題視はしていない」と話す。

 過去に問題になった例では、2013年7月の参院選で、高松市の選管事務局長らが約300票の不足票があったと誤認して白票を水増ししたことが発覚。局長は公職選挙法違反罪で有罪判決を受けた。この場合も、仮に水増しがなく不足票の報告だけだったとすれば、国の中央選挙管理会も警察も調査はしない。

 有権者が交付された投票用紙を持ち帰った場合も、罪には問われない。

 

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