手を抜く。

職場にかなりサラリーマン経験の長い人がいるのだけど、その人がこんなことを言っていた。

「仕事は適当に手を抜かないとダメだよ。いつも全力でやってたら、すぐにバテちゃうよ」

そうだろうなあと思ったけど、正直、なんのアドバイスにもなってないと思った。私には「適当」の意味が分からないからだ。

私の父も「適当にやれ」と助言してくれるのだが、そういう人は「どこで手を抜いたらいいか」が分かっているのだろう。ところが、それが私には分からない。あるレストランで働いていたとき、親切なおばさんから、

「二条くん、適当に手を抜きなさい」

と言われたので、

(そうだな、手を抜こう)

と思って火のついたカレー鍋を放置しておいたところ、完全に焦げ付いてしまい、ランチの用意ができなくなり、レストランが大混乱したことがある。

「○○さんが手を抜けって言ったから……」

そう言い訳すると、その親切なおばさんは、

「あんた、手を抜く箇所を間違えてるでしょ……」

と呆れたように言った。

私には、どこで手を抜けばいいのかが分からない。「適当に」と言われても、どうすることが「適当」なのかが分からない。「あてずっぽう」で手を抜こうとすると、大抵致命的なところで手を抜いており、大勢の人に迷惑をかける結果になる。

前述した人の言った、「全力でやってるとバテちゃう」という、その言葉の意味は分かる。だが、それを実行する方法が分からない。手を抜いていい場面というのが分からないのだ。それが分かっているから、私は全力でやるしかない。そして全力を続けて、バテて辞める。それはとても愚かなことかもしれないけど、手を抜いていい場面が分からない以上、そうするしかないのだ。

長く仕事を続けられる人は、手を抜いていい場面が分かっている。それまでの職業経験でそれを習得した人もいるし、高校生のアルバイトでもそれが分かっている子もいる。たぶん、手を抜いていい場面が分からない人間のほうが少数だろう。

全力で続けて、力尽きたら辞める。

その繰り返しは本当にうんざりするけど、私にはそうするしかないのだ。

10 Responses to “手を抜く。”

  1. 豚猫 Says:

    こんばんは。
    私も「適当」の意味が分からず悪い意味で全力を出してしまう一人です。

    前々から思ってましたがわたくしと同様「発達障害」の特徴が貴ブログからうかがえます。
    ひきこもりの中には発達障害持ちが少なからずいるようです。
    どんなにあがいても社会に「適応」できなくてひきこもるケースが多いようです。

  2. りゅま Says:

    こんばんは、自分も発達障害かもしれません、しかしどこに相談すればいいかわかりませんし、精神科医にわかるわけないですし、普通の人から見れば怠け者にしか見えないでしょうね。

  3. ぴぴぴ Says:

    時々お邪魔させて頂いています。
    適当に手を抜く、というのを自分の経験談から、具体的に書いてみます。

    まずス-パ-で精肉加工のバイトをしていた時は、
    上司の目がない時は、床に器具を落としても洗わずにそのまま使ったり、
    いちいち手を洗わなかったり、とマニュアルを無視して、手を抜いていました。
    面倒だったので。
    (衛生上どうかということはまた別の話なのでご勘弁)

    しかし出来上がった商品に異物が混じっていないか、とか、値札を間違えないか、ということについては
    手を抜けません。
    これは目に見えるものなので、何かあればクビになりますから。
    二条さんの場合は、鍋のカレ-をきちんと仕込むという作業は、手を抜く場所ではないですね。
    きちんとしたカレ-を作る、というのは「目に見える仕事」です。

    あとは勤務中、何度かトイレに行って休むとか、
    要は目に見えないどうでもいいことは、適当にしていいってことですよ。
    職種が違うと参考にはならないと思いますが。
    すみませんが、時々訪れますのでまたお話させて下さい。

  4. 非24時間睡眠覚醒症候群 Says:

    料理の腕は、いまの生活に生きてますか?
    一人暮らしだと、自分でご飯を作って自分で片付けないといけないので、大変ですよね。自分も十数年?前から、自分で作って自分で食べて、自分で片付けてます。
    母親の介護をしていた時は、腕をふるって料理を作っていたんですが、いまは、料理をつくるのがかなり面倒ですね。

  5. kyotosometime Says:

    あまり頭の調子が良くないので、深く文章が読めていませんが、他の方のコメント内に”発達障害”の単語が読み取れたので、私も便乗して、前から、取り上げたかった書籍を一つご紹介しておきます。

    http://neccocafe.com/news/20130918-3.html
    http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4591136361/
    ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護 (ポプラ新書)

    私自身は、法の保護を受けられるほど重症ではないですが、やはり、普通の人がたやすくできる事で困難なことがかなり多いです。。

  6. 二条淳也 Says:

    豚猫さん

    こんばんは。

    カレー鍋の件は、アスペルガーを彷彿させるでしょうね。

    ただ、アスペルガーの人でも社会で働いている人はたくさんいるので、私も人並みにはなりたいなと思います。

  7. 二条淳也 Says:

    りゅまさん

    こんばんは。

    精神科医自身がおかしいこともありますもんね。怠けとも違うというのは、すごく分かります。

  8. 二条淳也 Says:

    びびびさん

    どこで手を抜けばいいのか、とっさには分からないんですよね。。。まあ、考えても分からないんですが。

    やっぱり自宅でできる仕事を開拓するしかないかなあと思います。

  9. 二条淳也 Says:

    非24時間睡眠覚醒症候群さん

    料理のほうは、多少なりとも役に立っています。疲れて帰ってきても、料理をするのはそんなに面倒ではないですね。

    お母様の介護をしていらしたのですか。大変でしたね。。。

  10. 二条淳也 Says:

    kyotosometimeさん

    そうですか、kyotoさんも困難なことがありますか。コメントを見る限り、普通ですけどね。。。

    なんとか、社会で生きられる場所が欲しいところです。

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