ボーっとしてんじゃねえよ。

「ボーっとしてんじゃねえよ」

新しい職場に入ると、かなりの確率でこう言われる。

新しい職場に入ると、自分が何をすればいいのか分からない。「よけいなことはするな」と、新人が勝手に動くことを迷惑がる人もいるし、「自分から動けよ」と、新人に自発的な行動を求める人もいる。でも、新しく入った人にはそれが分からない。だから、先輩の指示があるまで動けないのだ。

今まで数え切れないほど、

「ボーっとしてんじゃねえよ」

と言われてきたが、私はボーッとはしていなかった。それどころか、神経は研ぎ澄まされていた。あくまでも「黙って立っていて指示を待っているだけ」であり、ボーっとはしていないのだ。

「黙って立っている」という状態が「ボーッとしている」となれば、新人のほとんどすべてはボーっとしていることになってしまう。だが、新しく入社した人でボーっとしている人はまずいないだろう。仕事を覚えようと必死になっている人もいるし、先輩の指示を緊張しながら待っている人もいる。「ボーっとしてんじゃねえよ」という言葉には、先輩としての優位性を知らしめてやろうという魂胆しか感じられない。

バイトの場合、最初の一ヶ月を頑張れた人はかなり長く続くが、その「最初の一ヶ月」がもたない人がすごく多い。多くは「根性が足りない」という言葉で処理されるが、私は「新人を罵倒したくてたまらない」という先輩の側に問題があると思っている。新人に長続きしてもらいたいなら、それ相応の心配りをするべきであって、最初の一日二日でイヤな想いをさせてしまったら、もうその新人は働く意欲をなくしてしまう。

私の見た限り、「入れ替わりの激しい職場」は、先輩の言葉遣いが荒いことが多い。多くの新人がすぐに辞めていくため、新しく入った人に対しても、

(どうせこいつもすぐに辞めるんだろ)
という意識が働いてしまい、最初から扱いが雑になるのだ。その結果、古株の人だけに強い連帯感が築かれ、新人がその輪に参入できなくて孤立する、という構図が描かれやすい。
バイト初日の人に、
「ボーっとしてんじゃねえよ」
と言うようなマネだけはしたくないと思う。

2 Responses to “ボーっとしてんじゃねえよ。”

  1. りゅま Says:

    同じ経験あります。自分が職場で新人より絶対的に優位である事を周りに知らせるためにわざと大きな言葉でいいますね。そう言われない為にこっちは一生懸命やれば「そんなあせったら怪我するぞ」と罵声浴びせてきました。多分一種の快感になってるんでしょうね。

  2. 二条淳也 Says:

    りゅまさん

    そうですか。同じ経験、なさいましたか。結構こたえますよね。

    あんなんで快感を味わう人間にはなりたくないですよね。

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