用意した言葉。

私のいる部署は、Aさんという女性がトップである。Aさんの指示で、私は仕事に取りかかる。が、Aさんの口調に我慢がならないことがある。

Aさんは、女性には10の役割しか期待しないけど、男性には20も30も期待する人である。「男性なんだから何でもできる」と思い込んでいるような人だ。だから、女性なら許される失敗でも、男性の私がやるとAさんはすごく怒り出す。

また、Aさんは、その日によって機嫌の差がとても激しい人である。

「今日は暑いわねえ! 体調、崩さないでね! 二条さんが頼りなんだから!」

とニコニコしながら肩を叩いてくる時もあるのだが、その次の日は、

「そんなこと聞かないでも分かるでしょう!」

などと突然怒り出してくる。こうなると、私にはAさんがいい人なのかイヤな人なのか分からなくなり、ただ漠然と「イライラさせる人」という印象だけが残る。Aさんに振り回されているという感覚が強くなり、Aさんと会うということ自体が強いストレスになる。

通勤に一時間ほどかかるのだけど、最近では、ずっとAさんのことを考えている。そして、Aさんに対して言いたい言葉を、いくつか考えついた。

「Aさん、あなたは会社の中で一番不愉快な人間です」

「Aさんといるだけで、強いストレスを感じます」

「社員の定着率が悪いのは、Aさんに問題があるからでしょう」

Aさんは女性だ。彼女が男性に言われて傷つくような言葉を、私は思いついた。どれもそれなりにダメージのあるセリフだと思う。ホントはもっとすごい言葉もストックしてあるのだけど、あまりにもきつすぎて、とてもここには書けない。私は、相手を傷付ける言葉はポンポン思いつくというイヤな男なので、これぐらいは朝飯前なのだ。

……だが、これらを言ってしまったら、Aさんとの関係はすごく悪くなるだろう。もしかしたら、関係の修復が不可能になるかもしれない。一時的な爽快感を味わうために、これら破壊力のある言葉をぶつけるのは、リスクが高すぎる。

私は自己抑制力がない。用意した言葉は相手にぶつけないと気が済まないタチである。だから、多少ニュアンスは変えてでも、大抵の場合、相手にぶつけてきた。

その結果が、ひきこもりである。用意した言葉を相手にぶつけた瞬間、相手はすごくひるむ。だが結果として、私はその集団にいられなくなる。明らかに、言わないほうがいいのだ。

世の中の人は、みんな我慢しながら生きている。

用意した言葉。我慢しなくちゃ。

2 Responses to “用意した言葉。”

  1. kou Says:

    こんにちは。度々のコメント、申し訳ありません。

    「通勤に一時間ほどかかるのだけど、最近では、ずっとAさんのことを考えている。そして、Aさんに対して言いたい言葉を、いくつか考えついた。」
    「私は自己抑制力がない。用意した言葉は相手にぶつけないと気が済まないタチである。だから、多少ニュアンスは変えてでも、大抵の場合、相手にぶつけてきた。」
    ただ単に私の我慢が足りないだけなのかもしれませんけど、むしろ私には二条さんが自己抑制し過ぎている(我慢強い)ように見受けられます。不快な言葉を吐かれてもその場ではすぐに返さず、時間をかけてその意味を吟味し、思いつく限りのあらゆる点を踏まえつつ、それが本当に適切なものだったか、相手の非をしっかりと点検する。そして最終的な対処(用意した言葉)まで思い浮かべ、来たるべき時のために準備しておく、といったように(もし違ったなら申し訳ありません)。こうして「用意した言葉」をぶつける二条さんに私は強い共感を覚えます(だから今まで通りぶつけてくれ、と言いたいのではありません)。

    「その結果が、ひきこもりである。用意した言葉を相手にぶつけた瞬間、相手はすごくひるむ。だが結果として、私はその集団にいられなくなる。明らかに、言わないほうがいいのだ。世の中の人は、みんな我慢しながら生きている。用意した言葉。我慢しなくちゃ。」
    二条さんの(実感や経験を込めた)この言葉にはすごく重みがあります。私にはかなりズシンと来ました。なぜなら、私は「用意した言葉」を使っていきたいと考えているからです。これを前提としなければ、逆にここから抜け出せないのです。と言っても、まだ一度たりとも実践できていませんが(ですので生意気に聞こえるでしょう)。むろん相手を傷つけるための言葉として「だけ」でなく(正直それも大いにあります)、傲慢な言い方になりますが、相手に気づかせる・教える言葉として「上手い言葉」をふたり?の関係から模索していきたいです。しかし、実現するにはおそらく大変な「労力」が必要でしょうし、そもそも私は人間関係を構築するのが苦手なため、失敗する(下手な言葉になる)可能性は極めて高いでしょう。そうなるとやはり、気まずい雰囲気になった職場から逃走/闘争する覚悟を持たなければならないのでしょうか……。結局グダグダ(愚だ!愚だ!)悩んでも外へ出れず、再び恐怖と悪循環の罠に掛かってしまう私は未熟者です。

  2. 二条淳也 Says:

    kouさん

    ああ、なるほど。そういわれてみれば、抑制しすぎの面もあるかもしれません。周囲を見てみると、発散するべきときはきちんと発散するというタイプが一番ストレスを溜めないみたいですね。

    それにしても、kouさんは、かなり論理的な考えかたをしますね。感情的な人よりは、好感が持てますね。

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