汗を流して働くこと。
もう十年以上前になるけど、引っ越し屋のアルバイトをした。七月だったから、ちょうどいまぐらいの時期だ。梅雨明けはすでにしており、毎日とても暑かった。
私は、四人か五人のグループに入り、一戸建てからマンションへの引っ越しを担当した。バイト初日だったので、なにをやればいいのか、まったく分からない。とにかく、リーダーの指示通りに動くことにした。
「おい新人! これを三階まで運ぶから、持ち上げるのを手伝え!」
そう言われて、やたらと大きい洋服ダンスを持ち上げるように言われた。木でできたとても大きい洋服ダンスで、「これを二人で持ち上げるのは無理じゃないか?」と思わせるほど、重量のあるものだった。
洋服ダンスが傷つかないように、緩衝材でくるみ、怒ってばかりのリーダーと二人で三階まで運ぶ。バイト初日であることの緊張と猛暑の暑さで、私は汗だくだった。
すると、突然、洋服ダンスの片方を持っているリーダーが怒り出した。
「おい新人! 汚いから汗を流すな!」
作業員が汗を流すのは汚らしいからやめてくれというのだ。びっくりした。
猛暑のなかで力仕事をするのだ。汗を流すのは当然である。しかも、バイト初日であることの緊張と、怖い先輩がいるというストレスも加わっている。汗を流すなというほうが無理なのだ。
なるほど、たしかに、汗を流すのが不愉快というお客さんもいるかもしれない。だが、それを非難するほうが間違っていると思う。
以前、真夏に焼き鳥屋さんに行ったとき、お店の人が汗をだらだら流しながら焼き鳥を焼いているのを見たことがある。店員さんの流した汗は明らかに焼き鳥にたれていたが、お客さんは誰も文句を言わなかった。暑いなかで熱いものを焼いているのだから、汗を流すのは当然だとみんな思っていたのだ。発汗という生理現象は自分でコントロールできないものだから、そんなことを注意するほうがおかしいとみんな分かっていたのだ。
「汗を流して働くことは尊い」というのはウソである。世の中には、発汗という生理現象自体を咎められる職場もある。明らかにおかしいことだけど、そういう職場もあるのだ。
猛暑のなかで力仕事をしても汗を流さないというのは無理なので、このバイトはすぐに辞めたけれど、今日もどこかで発汗を咎められている人がいると思うと、やりきれない気持ちになる。
7月 9th, 2013 at 7:39 PM
運動系のお仕事って大変ですよね。私は運動系のお仕事は接客のみですが、真夏大変だった記憶があります。クーラがあまり効いていない店舗。汗をかくなっていうのが正直無理ですよね。
そういう上司になった経験はないので詳しくは書けませんが、もしそういう上司に出会っていたら、
ますますトラウマが多くなっていたでしょう。上司運ってやっぱりありますね。。
7月 10th, 2013 at 4:17 PM
あいさん
クーラーの効いてない店舗ってすごいですね(笑)。汗をかくななんて理不尽ですが、なかにはそんな職場もあるのです。ホント、イヤですね。
上司運っていうのは重要ですよね。