野球ファン。

以前は、わりとプロ野球を観に行くのが好きで、たびたび球場へ足を運んでいた。ところが、だんだん行かなくなってしまった。球場で知り合った人との交流に疲れてきたからである。

球場で観戦していると、隣の席の人と会話をすることがある。

「今年は○○選手は調子悪いですね」

「○○チームはケガ人が沢山出ていますね」

まあ、ファンにありがちな、ごくありふれた会話が始まるのだが、だんだんそこから会話が発展していくことがある。

「どこから来たんですか?」

「何年このチームを応援しているんですか?」

大体、このへんから会話の雲行きが怪しくなってくる。私は一人で来ており、相手も一人で来ているという場合、即席の友情めいたものが発生しやすいのだが、こんなものは長続きしない。相手の知識不足が露呈すると、軽蔑の念が現れてくるのだ。

私はAという野球チームを応援しているのだが、それほどAチームに詳しくない。去年までAチームにいた選手が今年どこへ移籍したのか知らないし、Aチームの○○選手がなぜ今欠場しているのか、よく分からない。Aチームが今、リーグで何位なのか知らないときもある。

そうなると、話しかけてきた相手は、

(この人、ファンなのに、こんなことも知らないの!)

と思うらしいのだ。私が長年このチームを応援していると告げたために、よけいにそう思うらしい。

(この人、長年このチームを応援しているのに、なんにも知らないんだな)

相手はそう思うらしいのだ。

ある日、ナイターを観に行って、隣の人と親しくなったことがあった。我がチームにチャンスがやって来て、代打の選手が出ることになった。何気なく、私は、

「○○選手が出るかもしれませんね」

というと、相手はびっくりしたような顔をして、

「え! こんな場面で○○が出るわけないじゃん! あんた、なに言ってんの!」

と呆れたような顔をした。そして、その瞬間から関係はギクシャクしてしまい、観戦自体がつまらなくなってしまった。

趣味を同じくする人たちと知り合うと、どうしても知識をひけらかす関係になりやすい。男性は特にそうかもしれない。充分な知識を持った相手は大事に扱うし、浅い知識しか持っていない人は軽く扱われる。少なくとも、私はそんな経験を何度もしてきた。ファン同士が交流すると、どうしても「そんなことも知らないの!」という言葉が出てきやすいのだ。それがイヤなら、その場所に行くのをやめるしかない。

なんにも知らないのに、試合を観に来ている。そんな人もいてもいいと思うのだが、熱心なファンには、それが気にいらないらしい。

ならば交流しなければいいと思うのだが、どういうわけか、私は隣の人から話しかけられやすいのだ。

2 Responses to “野球ファン。”

  1. あいさ Says:

    私はまったく野球に興味はないですが、

    まあ対策としては人から話しかけられないような服装をしていくぐらいでしょうか?

    私も野球に興味はないですが、漫然とテレビで野球中継をながら見するのは
    嫌いではないです。したがって、全く選手の名前も野球のセオリーもわかりません。
    あの雰囲気がいいんですね。特に夏は。高校野球はなんか「無理」と「強制」
    をひしひしと感じてしまうので嫌いです。

    自分が知っていること、興味のあることを共有したいというのは、人間のあたりまえの
    心理でしょうから、どこにいってもこうゆうことに遭遇しますね。

    小・中学校では野球に興味がないと男でないとか、男はどこかの野球チームの
    ファンであるべきだなど、学校の先生にも言われましたがw
    まあ、まわりと同じ趣味嗜好を持たないと肩身が狭いという経験はいっぱいあります。

    なにか同じでないと人間は感情の交流ができないんですかね。

  2. 二条淳也 Says:

    あいささん

    「人に話しかけられない服装」って、なんか面白いですね。

    同じ趣味の人と会うと、どうしても知識が足りない人を見下すようになってしまうので、疲れます。

Leave a Reply