一緒に通勤。

ある会社に契約社員として入社した時、たまたま家が近所の先輩がいた。

「僕は○○というところに住んでいます」

というと、その人(Kさん)は、

「おお、偶然だなあ。俺の家もすぐ近くだよ!」

と驚いた後、私に向かってこう言った。

「俺、車で通勤しているんだ。車に乗せてやるから、明日から一緒に通勤しようぜ!」

……冗談じゃないと思った。一日九時間一緒にいるだけでもうんざりなのに、どうして通勤まで他人と一緒にいなければならないのか。本当に怒りを覚えた。怒りを覚えたけど、Kさんが「どうだ、嬉しいだろう』という顔をしていたので、どうしても反対意見を言えなかった。Kさんは、自分の提案が素晴らしいものだと確信しているようだった。

ここで、本音を言うかどうか迷った。

(僕、通勤電車の中で読書をするのが楽しみなんです。邪魔しないで下さい。それに、他人と一緒にいる時間は一秒でも短くしたいんです)

……言えるわけもなかった。言ったら即、変人扱いである。発言や態度から、Kさんは「誰かと一緒にいたほうが楽しい」というタイプであることは明らかだった。このようなタイプは、孤独を好む人をどうしても理解できない。一人でいようとする人を見ると、からかってくるようなタイプである。ここで私が勇気をふりしぼって本音を言ったところで、理解される筈もない。

「いやあ、Kさんに悪いですよ」

と何度か言ってみたのだが、Kさんはそれを受け入れず、結局、一緒に通勤するハメになった。

地獄だった。

朝八時から同僚と一緒にいるのは、まだ我慢できる。その時間は給料が出るのだから。だが、Kさんと一緒に通勤している時間は、給料が出ないのだ。精神的苦痛という意味では、Kさんとの通勤も給料が欲しいぐらいだった。

しばらくして、Kさんは通勤中の車内で私に不満を言ってきた。

「二条は動きがのろい」

「二条は仕事に一生懸命じゃない」

「二条は同僚と積極的にコミュニケーションをとろうとしていない」

……そんなことを、車内でずっと言ってくるようになった。挙げ句の果てには、Kさんが加入している消防団に私を誘い、それが断られると、

「お前は変わっている!」

と大声で責めるようになった。最悪である。

結局、その会社は二ヶ月で辞めた。

仕事が原因ではなく、通勤が原因で仕事を辞めたのは珍しいケースだが、そんなかたちで退職した職場もあった。

仕事がつとまらないどころか、通勤すらつとまらない。

これではどこへ行ってもダメである。

6 Responses to “一緒に通勤。”

  1. kyotosometime Says:

    そりゃあ災難でしたね。そうとしか言いようが無いです。
    普通の人でも、通勤まで一緒で嬉しい人の方が少数派だと思うから、
    その話をしたら、7割以上の人に同情してもらえると思います。

    二条さんが社長になって、孤独好きの人ばかりの会社を作れば良いのに、、、なんつッ亭。

  2. DOT35 Says:

     どうも、2回目のコメント投稿です。

    今回の投稿を読んで、頭にきました。

    自分も同じような上司や先輩に同じようなことを言われた経験があるので・・・

    生まれた環境も親の性格にも恵まれ、人といることが心地よかった連中は

    そうじゃない人の気持ちなんて理解できません。

    人によっては、他人と関わることが善で、そうしない奴は悪であるかのようなとらえ方もします。

    「変わっている」というセリフを見て、

    思わず「お前が基準かよ?お前がルールかよ?」

    と、以前を思い出しながら、感情的になって突っ込んでしまいました。

    ただ、ビジネス(商売)の世界では、フレンドリー気質のほうが利益をだしやすく、

    社会では高い地位や立場につきやすいのも残念な事実です。

    自分の考えをゴリ押ししても、気にしない連中のほう成功も出世もしやすいです。

    悲しいことに現実では、大多数であり力をもっている勢力が、ルールや常識になります。

    従わない者は排斥されやすくなります。

    自分は現在ひきこもりですが、

    他の人は、花見、運動会、飲み会、社員旅行など、業務以外のつきあいを

    心から楽しんでいるのだろうか?と考えます。

    多くの人がしょうがないから、排斥されたくないからという理由で参加していると思います。

    ブログ主様は物腰が柔らかで、相手からの印象が良いから誘われやすいのでしょうね。

    自分としては、上手なかわし方、いなし方を身に着けたいものです。

  3. 夜桜 Says:

    二条さんおはようございます。
    私はたぶん二条さんほど対人は苦手では無いと思いますが、出会ってまだ日が浅くどんな人かもわからない人にこのような提案をされたら、ものすごく違和感を感じます。同性の先輩であってもまず断りますね。
    その先輩は人懐こく面倒見のいい人なのかもしれませんが、大半の人が「え、それはちょっと…」と思うのではないでしょうか。誘いを断っただけで変わっているという発言も、私からしたらその先輩のほうが遥かに変ですが…。通勤すらつとまらない、なんて嘆く必要は無いと思います。
    そして二条さんはとても打たれ弱い人には見えないです。本当に弱ければそれだけ沢山の職場へ面接を受けに行けないと思いますよ。面接でトラウマがある私には到底真似できません…。

  4. 二条淳也 Says:

    はい、災難でした(笑)

    孤独好きの人ばかりの会社……利益出ますかねえ(笑)

  5. 二条淳也 Says:

    DOT35さん

    ホント、「あんたが基準かよ!」て思いますよね。

    たしかに、フレンドリーな人のほうがビジネスの世界では成功するようですね。

    それにしても「いなす」っていう言葉、久し振りに聞きました。いい日本語ですね(笑)

  6. 二条淳也 Says:

    夜桜さん

    どうも、こんにちは。

    やっぱり一緒に通勤なんてイヤですよね。たしかにこの先輩は人なつこくて面倒見のいい人だったのですが、ちょっとそれが押しつけがましかったですね。

    私の場合、どうしても一人暮らしを維持したいので、面接はやたらと受けましたね。

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