同僚がゴミをくれる。

「二条くん、料理を勉強しているなら、この本をあげるよ」

そういって、同僚のMさんが料理の本をくれた。「もういらないから」と彼は言うのだが、正直、私もいらない。

Mさんはなにかにつけ、私にものをくれる。それがすべてゴミのようなものなのだ。古い週刊誌、見る価値もないチラシ、どうでもいいような割引券……。そんなものを、毎日のようにくれる。はっきりいって、すごい迷惑である。

二条なら使うだろうと思って持ってきてくれているみたいなのだが、実際はMさんの都合だと思う。私の家族にもいるのだが、世の中には「ものを捨てるのがイヤな人」がいる。そういう人は「捨てるぐらいなら人にあげたほうがマシ」という理論を持っていて、その機会が来るやいなや、しきりにそのブツをあげたがる。Mさんは「いらないものを放出できたし、捨てることもせずに活用できた」と喜んでいるのだが、実際の話、もらった私はいつもそれを捨てているので、状況は変わりない。Mさんが捨てる代わりに私が捨てているだけの話だ。

だったら断ればいいじゃないか。

そういう人もいると思うのだが、なかなかそうもいかない。Mさんは同僚のなかでもかなり重要な人物であり、私としては彼の機嫌を損ないたくない。彼が渡してくる「ゴミ」を断ったとき、彼がどんな反応を見せるのか分からないが、やや感情的になりやすい人なので、もしかしたら私に不利なことになるかもしれない。そう思うと、なかなか断れないのだ。親切にしてもらっているだけに、断りにくいという実情もある。

だが、だんだんMさんと会うのが憂鬱になってきた。ゴミを託されているということが、なんだかMさんから軽く見られている象徴のように思えて、いい気はしない。「そこまで生活に困ってませんから!」とびしっと言ってやればスッキリするかなあと思うのだが、実際は生活に困っているので、自信を持ってそんなセリフが言えないのもある。

明日もMさんはなにかくれるのだろうか。

こういう小さなストレスが、長期ひきこもりから出てきたばかりの私には、じわじわ効いてくるのだ。

4 Responses to “同僚がゴミをくれる。”

  1. kayo Says:

    はじめまして。
    私も同じ経験がありました。その人は上司だったので、なるべく受け取るようにしていましたが、あまりに続く場合は、「この前妹からもらったばかり・・」とか、「この前友人に勧められて買ったばかり・・」と言っては、やんわり断っていたら、言ってこなくなりました。あと、もらったのに、わざとらしく自分の机の上にずっと置きっぱなしなどして、いらないアピールしてました。 人間、2、3回ぐらい上手く断わると、断られるのが面倒で言ってこなくなるみたいですよ。Mさんもそういう人だといいですね。

  2. 猫の鈴 Says:

    とても身につまされます。私も軽く見られるのかよく「いらないモノの最終処分係」になります。断りづらいという事もよくわかります。昔の職場で、同僚が履き古した靴をくれようとしたときは断りました。サイズが合わないから角が立たないと思ったんです。でも同僚は不機嫌になり「無理すれば履けるわよ!」と言うので、しかたなく目の前で履いて見せました。案の定無理しても私の足は入りません。同僚は怖い顔で「あなたって随分足が大きいのね!」と。私の為にわざわざ重い思いをして持ってきてくれたとのことで、とてもありがたかったです(笑)。

  3. 二条淳也 Says:

    kayoさん

    はじめまして、こんにちは。

    kayoさんは断りかたが上手ですね。「もらったばかり」「買ったばかり」というのはうまいと思いました。

    Mさんが敏感に感じ取ってくれればいいのですが……。

  4. 二条淳也 Says:

    猫の鈴さん

    やっぱり軽く見られている証拠なんですかねえ。

    それにしても、履き古した靴は困りますね。やはり「捨てるよりは……」と思うのでしょうか。

    重い思いをしてまで持ってこなくていいのに(笑)。

Leave a Reply