小学校一年生の思い出。

小学校一年生のときだった。ユウスケという友人の家に遊びに行った。女の子も入れて、五、六人はいたと思う。一つの部屋で、みんなでワイワイ遊んでいた。

ふと、ユウスケがこんなことを私に訊いてきた。

「ねえ、警察の電話番号って何番か知ってる?」

私は答えた。

「もちろん知ってるよ。110番だ」

すると、ユウスケは「分かった! ありがとう!」と言って、実際に110番にかけてしまった。当然、電話口に警察官が出る。ふざけ半分で電話をかけたユウスケは、警察相手に何を話せばいいか分からず、すぐにガチャンと切ってしまった。

一分後だか二分後だか、すぐに警察から電話がかかってきた。小学校一年生の私たちは、警察がこちらにかけてくるとは思っていなかったので、びっくりした。面白半分で110番をしたユウスケは電話口で警察に学校名や学年などを訊かれ、こっぴどく叱られた。

翌日学校に行くと、担任のカズエ先生がこの問題を取り上げた。

「昨日、お巡りさんに電話をかけた人! 前に出なさいッ!」

昨日、あの場所にいた五、六人が、すごすごと前に出た。

「誰が電話をかけたのッ!」

ユウスケが「僕です」と名乗り出ると、カズエ先生はユウスケを思いっきりひっぱたいた。

次に、カズエ先生は、

「ユウスケに警察の電話番号を教えたのは誰ッ!」

と訊いてきた。私である。

「僕です……」

そういうと、カズエ先生は、私の頬も思いっきりひっぱたいた。死ぬほど痛かった。

なぜ自分がひっぱたかれたのか、私には分からなかった(今でも分からない)。ユウスケは私に警察の電話番号を訊いてきたが、それはなぞなぞのような口調であり、まさかユウスケが実際にかけるとは思いもしなかったのだ。質問されて、その答えを知っていたから答えた。それだけである。なぜそれでひっぱたかれなければならないのか。

あの時のカズエ先生の対応には、今でも強い不満と怒りを持っている。ユウスケがたたかれたのは自業自得だが、私にその罪の一端があるようにはどうしても思えないのだ。

「小学校一年生のときの思い出はなんですか?」

と訊かれたら、私はあのときの光景を思い出すだろう。

悪いことをなにもしていないのに、思いっきりひっぱたかれたあのときの思い出を。

6 Responses to “小学校一年生の思い出。”

  1. kyotosometime Says:

    相変わらず、平凡じゃないエピソードの宝庫ですね。

    案外、ひな壇芸人が務まるかもと思いました。(ネタ話要員として)

    笑える受ける話として色付けして話す人もいるでしょうが、率直に、20年以上前の不満話を今でも根に持っています、と正直に言う二条さんが微笑ましいと思いました。

  2. watasimo Says:

    最低ですね。
    私もありました。理不尽な思い出。
    私は女ですので、ひっぱたかれることはなかったのですが、言葉の暴力はありました。
    給食当番のときに、今日は何かなっと給食を覗いて「わぁ、おいしそう」と言ったら、
    「つばが飛ぶから覗かないでくれる?」と言われました。
    あと、「あなたって、怒られているのにニヤニヤ半笑いしてるわよね。ねぇ、みんなもそう思わない??」とか。更年期障害なのか、イライラしたり、機嫌がよかったりと毎日態度が違っていて、ストレスの発散にされていたように思えます(涙)
    でも、もうそれは20年以上前の話です。あの時は、しおらしく「ごめんなさい」と謝っていましたが、今思うと謝らなければよかったと思います。
    二条さんの気持ちわかります。私も小学5年生の思い出と聞かれたら、先生の暴言しか答えられないです。

  3. ミント Says:

    はじめまして私は23の引きこもりです。(外に出られない)友達ももうゼロの状態です。検索していたら去年の11月辺りの記事にたどり着きそこから一気に読ませていただきました。
    そして皆さんがおっしゃる通り共感する所が沢山あって嬉しくなりました。
    そういえば私も小学校の頃の理不尽な思い出があります。やっぱり忘れられない物ですよね。
    その他、容姿に対する自分が人と比べて異様な気がするという感じや頭のおかしいカウンセラーや家に一人でいる快適さ等、私も同じ気持ちです。
    やはり理解して貰えずに私の場合は両親と同じ屋根の下にいます。そして家族とはいえ設定されただけのような違和感を感じとても息苦しいです。
    そのくせ一人では何も出来ないので
    ただ一人もがいている状態です;
    両親はほとんど何も言いませんが引きこもりに対して特に否定的ではないような感じで助かっていますがやはり今の現状がとても辛いです。
    これからも記事を楽しみにしています。

  4. 二条淳也 Says:

    kyotosometimesさん

    当事者としては、笑えない話ばかりですけどねえ。

    根に持っているというより忘れることができないという感じですね。

  5. 二条淳也 Says:

    watasimoさん

    言葉の暴力もこたえますよね。給食のときの思い出、つらかったでしょうね。

    私も「あのとき謝らなければよかった」という経験はたくさんあります。

    今、「今年の目標は『謝らない』にしようかな」と思いました。

  6. 二条淳也 Says:

    ミントさん

    はじめまして、こんにちは。

    記事に共感して頂けて、嬉しいです。

    両親との同居、つらいだろうなあと思います。私は一人暮らしのひきこもりなので、そのへんのストレスから逃げているので、同居のかたのつらさは大変だと思いますね。

    これからも、よろしくお願いします。

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