仕送り。

毎月仕送りをもらっている。そのなかには、お金だけではなく、食料や日用品も含まれている。月に一度、宅急便で送られて来るか、車で両親がやってきて置いていくのだ。その際、米や肉といった「買うと高い食品」を置いていってくれるのだが、そのどれもが高級品なので、イヤになる。両親が持ってくる米はいつだって最高級のものだし、牛肉もまた、スーパーで売られているようなものではなく、デパートで売っているような高いものである。

どうしてこういう高級品を買ってくるのか、私には理解できない。

実家の生活は切羽詰まっている。なにしろ、中年のひきこもり息子に毎月多額の仕送りをしているのだ。ただでさえ生活が苦しいところへ、成人男性一人を養う負担が重くのしかかっている。一円もムダにできない生活なのだ。その証拠に、会えばいつでも、将来に対する不安を二人は口にしている。

「これからどうなるんだろう」

「将来はホームレスになるのかな」

そんなことばかりを、両親は口にしている。

ならば、なぜ高級な食料品を買ってくるのか。米は最低のものでいいし、肉もまた、一番安いもので充分の筈である。グレードがあればその最上級を買ってくるというのは、生活困窮者がする行動ではない。正直、私には両親の行動がまったく理解できない。

あるいは、両親なりの贖罪意識がはたらいているのかもしれない。

働いていた職場を辞め、ひきこもりになり、一時期は精神科に通うまでになった。そうまでしたのは親の責任だ。だから、そのお詫びとして、せめておいしいものを食べさせてあげたい。そんな贖罪意識から、高級品の購入という行動に出ているのかもしれない。

だが、その行動は間違っている。私は味が分からないので、三千円の肉も五百円の肉も同じ味としか感じられない。米も同じだ。高級品を買ってきても、私は満足などしないし、逆に罪悪感を刺激するだけなのだ。

両親には一日でも長く元気でいてほしいし、私もまた、一日でも長く生き延びようと思っている。ならば、一円でも多く貯め込んでおくべきなのだ。

もうすぐ仕送りが届けられる時期だ。

また高級食材がぎっしり届けられるのかと思うと、本当に暗い気持ちになる。

8 Responses to “仕送り。”

  1. あいさ Says:

    実際のところ、考えられのは、(1)両親は節約しなければならないほど経済的に困ってはいない、あるいは(2)長年の習慣(高い食材を買う)をやめられない。あるいは、二条さんは贖罪意識ととらえているようですが(3)普段食事が一緒にできないので(おそらく自分たち=両親が食べているものよりも二条さんはいつも美味しい物を食べていないだろうから)、美味しい物でも送ってやろうという考えかもしれません。

    私は、それほど深い意味(=贖罪意識)はないように思います。だぶん(3)だろうと想像します。

    二条さんはご両親に高い物を送られると罪悪感を感じると伝えたことはありますか? 
    もしかしたら、伝えても「なぜそう考えるのか? 単に美味しい物が食べられるのだから喜べ」というかもしれません。

    もしこうなら、そこまで人の心の働きを理解できる親ではないと諦めるしかないです。一つの行為でも、親が考える喜び(高いものを送りたいという心の動き)と二条さんの心の動き(受け取った罪悪感)は違うのですから、この贈り物をやめてもらうのに費やすエネルギーを考えると(おそらく送らないと親は罪悪感(=「(高い)物も送れないのか!」)を感じるかもしれません)、二条さんが罪悪感を感じないように「いつものことだ」と考えて、毎月の贈り物をもらうのがベターだと思います。

    両親以外からもらう高い物とは区別してそう割り切るしかないように思います。

    もちろん節約して欲しいという二条さんの気持ちもわかりますが、それは両親に期待できることなのでしょうか? 歳を重ねると大脳皮質が退化して我慢が出来なくなっていきますから。

  2. ゆういちろう Says:

    二条さんの気持ちは分かるけど、そりゃあ、どこの親も子どもには美味しいものを食べさせたいと思いますよ。(一方で自分本位で子どもにお金を要求する親もいますが。)
    息子を思ってあえて高い食品を買う親の気持ちを考えたら、食べてあげることがあなたの「役目」というか「使命」でないでしょうか。そして高いものを食べながら、節約する日々を送らなければならないことも、自分に課す仕事だと思うべきです。
    それはあなたが仕送りを頼りにしているからという理由で言っているのではなくて、そういう二条さんの考えは、自分の稼ぎで何とか頑張って生活している人でもよくあることです。
    ただ私として、老いた両親の楽しみを減らさないでほしい・・と思いました。
    ちなみに気分を害するかもしれませんが、お金はご両親が貯めるというより、二条さんが仕送りの中からでも、少しずつ貯めてもいいのではないか・・と感じました。

  3. エリナ Says:

    親から高級食材を届けられるって話を職場でしたら、そりゃ「おぼっちゃま」って言われると思ってしまいました。
    ひきこもりになった原因に、親が贖罪意識を持っているから、高価な食べ物を仕送りすると書かれていますが、ひきこもりとか精神科に通うことが、親のせいにしていいのは20代くらいまでかもしれません。

  4. 二条淳也 Says:

    あいささん

    あいささんは、すごくよく分かっているんですね。あいささんが想定した三つの条件、すべて当たっているように思います。実はそれほどお金に困っておらず、さらに長年高級食材を買っていたためにそれが辞められず、その上私に少しでもおいしいものを食べさせたいと思っている……たぶんそんなことだろうと思います(生活苦は多少あると思うのですが)。

    そしてまさしく、それらの行動に「深い意味はない」のだと思います。

    だとしたら、素直に受け取るしかないのかもしれませんね。

  5. 二条淳也 Says:

    ゆういちろうさん

    なるほど、どこの親も子供にはおいしいものを食べさせたいのかもしれません。そして、それは親の楽しみなのかもしれません。

    たしかに、私本人が貯金に励むべきでしょうが、親にも節約して欲しいのです……。

  6. 二条淳也 Says:

    エリナさん

    職場では「食材を送ってもらってる」なんて話はしません。

    また、親のせいにしていいのは二十代までとありますが、責任の所在は年齢で決まるものではないと思います。

  7. あや Says:

    まずお聞きしたいのですが、二条さんはその気持ち(別に高級品じゃない普通の食材でいい、その方がいい)をご両親に伝えたことがありますか?家族という存在は近すぎるためいろんなことを言葉にして言わなくなってしまいます。そうすると相手がどう思っているかを聞く前に「これれが相手を喜ばせるはず」などと思い込んでいたりします。もしかしたらご両親は高級品を送ることで二条さんが喜ぶと思っているかもしれませんよ。きちんと思いを伝える価値があると思います。

    また、エリナさんの言っている人のせいにしてもいい年齢制限の話ですが、私も年の数で決まるものではないと思います。(みなさんそれぞれ事情があって一概には言えないので)
    ただ、責任や原因を追求する行為に見切りをつけて、自分で自分の人生と向き合うかどうかを決められるのも本人だけだと思います。

  8. 二条淳也 Says:

    あやさん

    自分の気持ちを親に伝えたことは、ありません。そういえば、自分の気持ちを親に伝えたことなど、今までの人生でなかったかもしれません。たしかに、伝える価値はあるかもしれませんね。

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