翻弄。

小学生の頃、学校から帰ってきて家に一人でいると、

「どうしてあんたは外で遊ばないの!」

と母に叱られた。その時、母は決まってこんなことを口にした。

「同級生のみんなは、帰って来ると、玄関にランドセルを放り投げてすぐに遊びに行っているのよ!」

そうか、一人で家にいることは良くないのか。そう思って、数日後、「ランドセルを玄関に放り投げて」遊びに出た。

すると、母親からこっぴどく叱られた。

「どうしてランドセルを放り投げて出かけるのッ!」

嘘のように聞こえるかもしれないが、本当の話だ。私の何が気にくわなかったのか、今でも分からない。こんなことは何度もあって「Aをしろ!」と母に言われたからAをすると、「どうしてAをするんだ!」と叱られたことは数え切れないほどあった。

これは私の仮説なのだけど、気分屋の親に育てられると、子供はどうして良いか分からなくなり、正常な発達に支障を来すのではないか。昨日言っていたことと今日言っていることが違うような親に育てられると、子供は親に翻弄されているような気持ちになり、自分自身で何かを決定することが怖くなる。何をしても叱られるので、常に親の顔色を窺うようになり、判断や決定を自分で行わなくなる。少なくとも、私の場合はそうだ。

親も人間だから、一貫した言動を取ることは難しいかもしれない。だが、それにも限度というものがある。小学生の私から見ても、母は「正常な人間」とは思えなかった。十八年一緒にいたけど、私が母に一番言いたかったことは、

「何がそんなに気にくわないの?」

ということだった。それほど母の言動は理不尽であり、理解不可能なものであった。

気難しい親に育てられた人は沢山いるだろう。そんな人すべてがひきこもりになる訳ではない。だが、そのような親に育てられ、常に翻弄されてきた子供は、成人になっても、かなりの確率で環境不適応を起こすのではないか。そして、それは、人間自体に対する不信感にも繋がるのではないか。

あんな言動を取った母に、未だに痛烈な仕返しをしたいと思っている自分がいる。

9 Responses to “翻弄。”

  1. 高齢引きこもり女 Says:

    『母親に痛烈な仕返しをしてやりたい』 私も長年故郷を離れたまま一度も戻ることなく、絶縁状態で母親が今どんな状態でどこに住んでいるのか、生きているのか死んでいるのかすらはっきり分かりませんが、仮に死んでいたとしても仕返しをしてやりたいという気持ちには変わりありません。
    私の母親もヒステリーと云うのか気分障害と云うのか常に情緒不安定でちょっとした事ですぐにキレたり暴発する性格で、母親の笑顔と言うものはこのかた一度も見たことがありません。
    『子供なんか金がかかるばかりで可愛くない!生むんじゃなかった!!』と毎日のように嫌みを言っているくせに、世間体や自分の虚栄心を満たすため、コントロールして自分に都合のいい手足代わりに利用したいという下心があるようでした。

    私が子供の頃、女の子の間でピアノを習うことが流行っていて、何を思ったのか母親に『お前も習いに行け』と言われ、いきなりなのでびっくりして返事をしないでいると『親の言うことが聞けないの!!』と腕をきつくつねられ、その後ピアノがうまく弾けるようになった女の子が少し羨ましくなって『私も習いにいきたい』と言ったら『お前みたいな指が短い不器用そうな手をしたしかもトロくさいバカになんか弾けるわけないじゃん!金をドブに捨てるようなもん』『そんなヒマあったらうちの手伝いでもしろ』と散々小バカにされました。
    亡くなった祖母が見かねて可哀想だと習いに行かせてくれ、意外と性に合ったのか特別努力することもなく1〜2年でコンクールに出られるくらいに上達したのですが、母親は『少しうまくなった程度で調子に乗んな!』と罵倒するのみで、外では『うちの娘はコンクールに出るのよ』と言いふらし歩いていたとか。
    一体どうしたら母親の気に入っるのか本当に知りたかったです。

    結局のところ自分の都合や気分によって自由自在に操れるあやつり人形にしたかっただけのでしょうか。

    私の度重なる自殺未遂も長年の引きこもりも、全てとは言いませんがこの母親の影響が相当大と思っています。

  2. なずな Says:

    今回のお話しはとっても興味深いです。私はどういう親御さんのお子さんがひきこもりになるのかが知りたいと思っています。子どものケアももちろん必要だと思うのですが、親のケアのほうがもっと必要な気がしています。

    以前テレビで、姉妹共に登校拒否になってしまった小学生ご家庭の様子をビデオ撮影し、家庭の様子を専門家にみてもらうというのをやっていました。その結果、お母さんが過保護過ぎるというか、何から何まで指示を出しすぎていて、お子さんが意思決定できなくなっているとのことでした。それで、お母さんに子供に指示を与えすぎないようにと、注意したところ、次第に二人は学校に通えるようになっていました。

    自分で決めて、その結果である失敗と成功とを経験し、知恵をつける。そういうことができないと、人は自分への信頼、つまり自信を養うことができないのかもしれません。

    二条さんのお母さんも同じ環境で育った人だと、想像できますが、代々連なる連鎖を断ち切れることを祈っています。

  3. 二条淳也 Says:

    高齢引きこもり女さん

    そうですか、引きこもり女さんはお母様と絶縁状態でしたか。かなりつらいことを言われてきたのですね。

    どうすれば母親に気に入られるのだろうという想い、けっこう沢山の人がしてきたのかもしれませんね。

    母親の影響って大きいですよね。。。

  4. 二条淳也 Says:

    なずなさん

    たしかに、子供のケア以上に親のケアのほうが必要かもしれませんね。

    悪い連鎖を断ち切るようにしたいですが、私は子孫を残さないつもりなので、このへんのことは考える必要ないかもしれません……?

  5. 高齢引きこもり女 Says:

    そうですよね。。
    母親との関係で悩む人は少なくないと思います。
    日本では母親は無条件に子供を愛している、子供が可愛くない母親はいない、云々と言うのが世間一般の常識みたいになってますし。
    でもそれは所詮世間一般の思い込みや綺麗事、我が子が嫌い、可愛くない、愛情の欠片すらもないと言う母親は少なからず存在しているのが事実だと思います。
    少なくともうちはそうですから。

    私だって本当を言えば一応血の繋がりの母親を絶縁するような事はしたくはないです。
    だけど切らなきゃ生きていけない。
    絶縁するのは死ぬ代わりだと思っています。
    切って物理的に離れないととんでもない事が起きそうな気がして恐ろしいのです。

    かつて秋葉原で無差別殺人事件を起こした容疑者の母親の異常な教育が話題になったことがありました。
    『着る服は母親が選び、本人が選んだ服は床に投げつける』 『食事を食べるのが遅いと食事を新聞紙にぶちまけ食べさせる』
    『スタンプカードを作り、泣く度にスタンプを一つ押し10個貯まると暴力を振るう』
    『先生受けを狙うため学校に提出する絵や工作などの作品、日記や作文に手を加え、気に入らないと破ったり、代わりに自分が書いたり作ったりしたものを提出させる』等々。
    私も全く同じことをされていました。

    母親は私が生まれた時から虐待していて、髪を掴まれて引き摺られたり、叩く、つねる、殴る、時に蹴飛ばすなどの身体的暴力はしょっちゅうで、ねちねちとした陰湿な嫌みや精神的虐待で更に追い詰めてよりをかけるという感じでしたが、そんなに嫌いなら無視するなり、ほったらかしにしておけば良いものを、『教育』だけは何故か異様に熱心で、それは子供への愛情ではなく、『賢い子を育てた』という世間に対する見栄や虚栄心を満たすだけのものでしかなかったのだと思います。

    私も自分で選んだ洋服や着てみたい洋服はことごとく否定され、母親が選んだもの(とんでもない変な組み合わせや、従妹の汚れたお下がりなど)しか着させてもらえず、反抗すれば暴力が待っていることがわかっていたので、黙って着るしかなく、学校でからかわれたりいじめらたり、
    学校に提出する絵や工作など自力で作ったものは必ず出来がまずいと言ってダメ出しされて破られたり足で踏み潰されたりして破壊され、作文や日記などは筆跡を真似て書き換えられる(長くなりますので続きます)

  6. 高齢引きこもり女 Says:

    (続き)
    など異常に介入され、事実親が作った『作品』で表彰されたこともありますが、嬉しいと思った事はただの一度たりともありません。

    小学校のうちはそれでもまだ良かったですが、異常な介入は中学生になってからも続き、中学3年の時に家庭科の授業でパジャマを作ることになり、本来であれば授業中に仕立て上げて提出するのが理想なのですが、何分不馴れな事とてみんな思うように進まず、できなかった分は自宅で完成させて提出すれば良いということになり、ある夜遅くまでかかって頑張って自力で縫い上げ、明日提出しようと手提げ袋に入れて寝ましたが、、
    朝起きてみると縫ったパジャマがジャキジャキに切り刻まれて丸めてゴミ箱にぶちこんであり、驚いて手提げの中を確認してみると、、母親が縫ったパジャマが入れてあったのです。
    しかも同じ布、同じデザイン、同じ大きさで、、、
    パジャマの布は学校で一括購入したものではなく、市販のものを使って良いということで、みんな色も柄もまちまち、私の布も学校帰りに一人でお店に行き選んで買ってきたものなのに、、母親はあの子はバカでどんくさいからどうせまたしくじるに決まってるわと同じ布を密かに探し出して購入し、用意していたのかと思ったら、あまりの恐ろしさに戦慄が止まらず、もう20年以上前の事なのにその時の恐怖は未だに忘れることができません。

    私は子供の頃から人物を描かせると、さながらこけしかロシアのマトリューシュカ人形みたいな頭と胴体しか無いものを描いたそうです。

    思えば母親によって手足をもぎ取られたのかも知れません。
    そして手足をもぎ取られた結果、秋葉原の容疑者は不特定多数を狙った無差別殺人事件を引き起こし、 私は廃人同様の高齢長期引きこもりニートになってしまったのかも知れません。

    大変長々と失礼いたしました。

  7. 二条淳也 Says:

    高齢引きこもり女さん

    そうですか、だいぶ辛い想いをされてきたのですね。。。

    ただ、親と同居しているときと比べ、今は「少しはマシ」なようなので、少し安心しました。

    母親から受け入れられなかったという経験は、一生影響するように思います。

    お互い、それを断ちきり、前向きな人生を歩んでいきたいですね。

  8. 非24時間睡眠覚醒症候群 Says:

    うちは、母親じゃなくて父親がそんなふうなところがあった。
    親の方の劣等感がひどい場合は、そういうことになる場合があります。
    子供がライバルで、子供が他人からほめられると、頭にくる場合もあります。たとえば、子供が運動会の徒競走で一等賞になった場合、「あんなのより自分のほうが速い。なんだ!」と腹を立ててしまう親もいます。問題なのは、本人がそういう気持ちを自覚していないことです。

  9. 二条淳也 Says:

    24時間さん

    ホント、幼稚な大人っていますもんね。子供より幼稚な親もいるかもしれませんね。

    成熟してから親になって欲しいですね。

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