ひきこもりと一人暮らし。

ひきこもりの子供を一人暮らしさせたら、状況が改善するのではないか。そう考える親御さんも多いみたいである。私も一人暮らしをしているひきこもりなのだが、親御さんから見れば、「自立している」ふうに見えるようで、「うちの子も一人暮らしさせようかしら」と言われる。

一人暮らしをさせたら、ひきこもりは改善するか。

多分、「人によって違います」ということになるだろう。

一人暮らしをすることによって、様々な生活力が身につくかもしれないし、逆に自室に籠もりきりになり、事態はもっと悪化するかもしれない。

ただ、私に関しては、一人暮らしをして正解だったと思っている。というより、親と一緒に暮らしていたら、自殺するか犯罪者になっていたかのどちらかだろう。あるいは精神病院に入院していたかもしれない。親によって精神が追い詰められるということは、大いにあり得ることだからだ。

親と同居していた頃、私は多大なストレスを親から与えられていた。「家族」という言葉から、多くの人は温かいものを感じ取るようだが、私は「家族」という言葉から「地獄」を連想していた。実際、「家族の数だけ地獄がある」と思っていたぐらいだ(今でもこれは間違っていないと思っている)。

親と離れて暮らすことになった時、大変な解放感を感じた。学校と同じぐらい、家庭もつらい場所だったからだ。ひきこもり生活が正常な生活形態だとは思わないけど、自殺も犯罪も犯さなかったという意味で、私は救われたと思っている。

事実、ひきこもりには珍しく(?)、私は料理もするし、洗濯もする。あらゆる家事は自分で行うし、税金や保険、医療や賃貸住宅の契約更新なども、自分で行う。「労働」以外は、ほぼ全て自分でできる。親御さんがそれでもいいなら、あるいは一人暮らしをさせる価値はあるかもしれない。

だが、これは極めて親不孝な生活形態である。実家と比べて、親にかかる経済的負担がとても大きいからだ。大の大人が一人で暮らすのだ。一ヶ月十万円以上の仕送りは必要になる。これは親にとって、とてもきついことだと思う。

また、親というのは、一人暮らしをしている我が子が心配で仕方なくなるため、しきりに援助したがる。

「お米はまだあるの?」

「小遣いは足りているの?」

などといって、毎月決められた以上の仕送りを親が自発的に行いがちである。我が子が目の届かない所に住んでいると、親はしきりに物品を送りたがるものなのだ。

もし、ひきこもりの我が子を一人暮らしさせようか悩んでいるなら、半年などと、期間限定でやってみることをお勧めする。それで悪化するようなら、部屋を引き払って実家に戻ればいい。精神状態が改善しているようなら、親が耐えられる範囲でその生活を続ければいい。

親と離れてみて、ようやく到達できる境地もある。

親には悪いけど、私は親と離れてみて、ようやく心の平穏を得ることができた。

どんなに生活が追い込まれても、この生活を手放したくはないと思っている。

 

 

2 Responses to “ひきこもりと一人暮らし。”

  1. kyotosometime Says:

    >多分、「人によって違います」ということになるだろう。

    名言?だと思います。多分。。

    一人暮らしの結果、目に見えた成果を出しているわけではありませんが、実家に戻っても、状況が良くなることはない。私もそんな層の一人です。

  2. 二条淳也 Says:

    kyotosometimeさん

    親と同居することによって精神状態が悪くなっている人は、かなり多いと思います。

    子離れできない親が増えていることも、ひきこもり問題の一つかもしれませんね。

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