すぐに辞めていれば……。

ひきこもりになった理由は複合的で、いくつもの要因が絡んでいるのだけど、かなり重大な要因が一つある。

仕事にしがみつき過ぎてしまったこと。

これである。

ある職場で、人間関係にひどく困ったことがあった。ペアを組んでいる先輩から怒鳴られ、その部屋から追い出され、仕事中なのに行く場所がなくなってしまった。職場内をただ歩き回っていたが、そんなことで時間が潰れる訳もなく、そんな私を見ている同僚の目も哀れむような目だったので、一秒一秒がつらかった。

「こいつは何をやらせてもだめだ」

そんな評価が私に下され、ついに「製品を台の上に置く」というだけの、どうでもいいような仕事だけが与えられた。

普通、こうなったら殆どの人は職場を辞めるだろう。「この職場は自分には合わない」。そんな結論を下して、さっさと辞めてしまうだろう。

だが、私は違った。なんとかしてこの仕事にしがみつこうとした。

「どんなことがあっても仕事を辞めてはならない」

といった強迫観念があったのと、

「こうなったら辞める前に一円でも多く稼いでやろう」

といった見当違いの前向きな姿勢が混ざり合って、この職にしがみつこうとしたのだ。

これが間違いだった。

なにしろ一秒一秒が苦痛なのだ。こんな職場で頑張ったところで、何かが得られる筈もない。働けば働くほど精神は追い詰められていった。職場にいる時間、私はずっと自殺のことを考えていた。

あの時早く辞めていれば、十年もひきこもることはなかったと思う。どうしようもない職場にしがみついてしまったために、私は自分で傷口を広げてしまった。早く撤退すればすぐにその傷は回復したかもしれないのに、何ヶ月もしがみついたために、回復するのに十年以上を要するようなダメージを受けてしまった。

自分に向いてないと思ったら、すぐにその仕事を辞める。多くの人はそれを非難するかもしれないが、私はこれはかなり良い方法だと思う。「長期」にこだわり過ぎると、取り返しのきかない傷を負うことがある。傷が浅いうちに、その場から離れる。それこそが、上手い生き方だと思うのだ。

あなたが今の職場をつらいと思っているなら、私は「頑張れ」とは言わない。間違っているかもしれないけど、「早く辞めなさい」と言うかもしれない。

あなたに、私と同じ想いはして欲しくないのだ。

3 Responses to “すぐに辞めていれば……。”

  1. kyotosometime Says:

    二条さんの言う事に何時も100%同意というわけには行きませんが、貴方は、何時も、一般論で上手くいかないマイノリティーの悲痛な胸の内を、こちらの胸に突き刺さるように書いてくるから、書き手として是非必要な存在だと思っています。
    (前回のブログへのカキコに返信付けてなくてスミマセンでした。ちょっと体調悪くなってPC開いてなかったので。。。)

  2. kyotosometime Says:

    そして、この種の件、個人的な体験を言えば、ほぼ二条さんと同じ様な内容になります。

    「直感に従って、早めに辞めておけば良かった」「変な我慢をして、失敗体験を重ねて、また無力感を学習してしまった。。こんな自分は、もう存在したくない。。」

    確かに、世の中の多数派の人は、続けていれば、それが何かの縁になってプラスが生まれ、だから、「努力は裏切らない」って言葉が言えるんでしょうが、どうも私なんかは、その人らと、人間的構造が違っちゃっていると言う気がしてしまいます。。

    愚痴スイマセンでした。
    ただ、何か自分が生きていけるような隙間道を見つけたいとは思っています。

  3. 二条淳也 Says:

    kyotosometimeさん

    kyotoさんも「早く辞めておけば」と思ったことがあるのですか。変な我慢はあとあとまで悪影響を及ぼしますよね。

    世の中の人はとにかく「続ける」ことを強いますが、そればかりを追いかけると、かえって精神を蝕みますよね。

    お体のほう、大丈夫でしょうか。

    無理なさらないで下さい。

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