親孝行のしかた。

ひきこもっていると、無性に親孝行がしたくなる。普段、多大な迷惑をかけているので、それを挽回したい想いがあるのだ。また、親が死んだ時、大変な後悔に襲われることが既に分かっているので、それを回避したい気持ちもある。

だが、親孝行というのは、どうしたら良いのだろう?

私には、親孝行の方法というのが、全く分からない。何をするのが親孝行なのか、それがハッキリしないのだ。

だが、これは世の中の多くの人も同じらしい。色んな人に、

「親孝行って、どうやってするんですか?」

と尋ねてみたが、明確に答えられる人はいなかった。ある人は、

「うーん、つまりだねえ、親を愛し、親のことを大切に想い……」

などと抽象的な答えに終始し、ある人は、

「あなたが元気でいることよ」

といった一般論に終始した。私が元気でいることは確かに親孝行かもしれないが、それだったら親孝行とは自己の健康に気を付けることになり、親に対しては何もしなくて良いことになる。そうではなく、私は親に何かしてあげたかったのだ。

だが、多くの人は親孝行の具体的方法を答えられなかった。

それがなんとなく、「具体的方法」に感じられた。

つまり、親孝行の方法とは、誰にも分からないものなのだ。私は「親孝行しておかないと、将来、大変な後悔をする」と、今からとても心配しているが、「親孝行しないで後悔した人」が圧倒的多数なのだ。そして、それが普通のことなのだ。

親が死んでから、ようやく親孝行したいと思い始める。親が死んでやっと、親孝行しておけば良かったと思う。それが普通のことなのだ。そう思う。

鉄道は廃線になると、「やっぱり乗っておけば良かった」と思う。消滅して初めて、接触しなかったことを後悔する。それが普通のことなのだ。普段、山手線に乗りながらしみじみしている人がいたら、そっちのほうが変である。普段は気にも留めず、この世から消えて初めて、それを切望する。それが普通であり、それが健全なことなのだ。

世の中は「親孝行の方法が分からない人」ばかりで構成されている。

世の中の人は多かれ少なかれ、「もっと親孝行しておけば良かった」と後悔しながら生きている。

私も親が死んで初めて、親孝行しなかったことを後悔すると思う。

でも、それでいいと思う。

私の親も、たぶんそう思いながら生きているのだから。

2 Responses to “親孝行のしかた。”

  1. エリナ Says:

    世の中、親孝行の方法がわからない人ばかりってことはないと思いますよ。
    親を温泉旅行に連れていくとか、孫の顔を見せに帰省するとか、親孝行な人たちはいるでしょう。
    でも親孝行って、大それたことでもなく、経済力がなくても、ちょっとしたお手伝いでもいいのではないかと思います。食事を作るとか掃除をするとか。女性ならそういうのが思いつくのですが、男性はやりにくいのかな。それぐらいならやってるということでしたら失礼しました。

  2. 二条淳也 Says:

    エリナさん

    お久しぶりです。

    「親孝行って何をすればいいですか?」という問いに対して「よく分からない」という人が大半でしたね。私の訊いた範囲では。

    たしかに、男性は照れ屋さんが多く、親孝行に及び腰の人が多いですよね。

    私は毎月親にお小遣いをあげていますが、もっと何かをしてあげたいと思っています。

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