挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
194/205

災難の始まり

香蜜花の園
丘の上には、いいにおいがするおおきな花がたくさん咲き乱れていた。
子猫ほどもある大きさの金色の蜂がせっせと動き回り、蜜を吸い上げている。
園の中央には大きな壷があり、蜂たちは時折集めた蜜をその壷に入れていた。
「ふん。これが香蜜花か……」
アベルは遠慮なく園の中に踏み込み、一輪の花を摘み取る。
次の瞬間、ブーンという音がして、黄金色の蜂がアベルを取り巻いた。
「なんだ?なんか文句でもあるのか?ああん?」
アベルはヤンキーみたいな口調で蜂たちを威嚇する。
「シャアアアア」
次の瞬間、全方位から蜂たちが襲い掛かってきた。
「ふん。『太陽剣』」
『鋼の剣』を吹いて、光の魔力をこめる。光り輝く剣を蜂とすれ違いざまに一閃すると、胴体から真っ二つに切ることができた。
仲間を殺され、蜂たちはますますいきり立つ。10匹以上がアベルに向かって鋭い針をつきたてようと襲い掛かってきた。
「危ない!アベルちゃん!」
とっさにカエデが持っていたスピアを振ると、先から突風が出てる。蜂は思わぬ風に煽られて、バランスを崩して地面に激突した。
「今よ!」
墜落した衝撃で、動きが鈍くなった蜂を見てカエデが叫ぶ。
「任せろ!『勇光弾』」
アベルの手から光の弾が出て、次々と蜂たちを撃つ。弾に当たった蜂はひとたまりも鳴くはじけとんだ。
「おっと」
『勇光弾』の一つが外れ、香蜜花の園の中央においてあった壷に当たる。それは木っ端微塵に壊れ、中から甘いハチミツがこぼれて飛び散った。
「あっ、壊しちまったな。まあ、いいか」
別に悪いとも思わず、アベルは平然と近寄ってひとなめする。
「おいしそうね。私も」
カエデも来て、二人は思う存分取れたての蜂蜜を堪能するのだった。
「カエデ姉、さっきはありがとう。それにしても、いつの間にあんな風魔法が使えるようになったの」
アベルは照れながら、さっき助けてもらったことの礼をする。
「それが、なんだか急にどうすればいいかわかるようになったの」
カエデは無邪気に笑う。その首には、キラキラと輝く『風のエメラルド』がかかっていた。
「そうか。カエデ姉も勇者である僕の伴侶として成長したのか……」
アベルはそうつぶやく。
「は、伴侶?」
改めてそういわれて、カエデの顔が真っ赤になった。
アベルはそんなカエデにやさしく笑いかけると、足元の花を摘み取り、カエデに捧げる。
「はい。カエデ姉。香蜜花の花束だよ」
「きれい……」
色とりどりの花の美しさと、いい香りに包まれれて、カエデはうっとりとした。
「カエデ姉……」
「アベルちゃん……」
色とりどりの花が咲き、上品な香りが匂い立つ花園で、二人の顔が近づき、やがて重なる。
その足元には、勇者によって切り刻まれた蜂の死体や、戦いによって踏みにじられた花園の花が散らばっていた。

アベルとカエデは花園を去って二時間後-
農夫の格好をした村人たちが香蜜花の園にやってきた。
「黄金蜂たちの蜜採取はそろそろおわったころだな」
「やつら、邪魔すると襲ってくるからな」
「まあ、刺激しなけりゃ蜜を分けてくれるし。俺たちは花の世話に精を出そうぜ」
わいわいと言い合いながら、園に到着した農夫たちは、一目みて目を見開いた。
「こ、これは!」
「どういうことだ!誰がこんなことを!」
驚きのあまり錯乱する。黄金蜂たちの死体が転がり、香蜜花は踏みつけられて滅茶苦茶な状態だった。
「だ、誰がこんなことを!おらたちが精魂こめて作った花を……」
「蜂たちとは協定を結んでいるのに……」
村人たちは呆然とする。彼らがいうように、何百年も前からヨーホイ村と黄金蜂たちは共生関係にあった。村人たちは彼らの食料になる香蜜花を植え育て、蜂たちは蜜を採取してその一部を人間に分ける。そうやってずっと共存してきたのである。
「まさか黄金蜂を倒す奴がいるなんて……」
たまに盗賊が来ることもあったが、蜂たちに撃退されて逃げ出すのが落ちだった。それで村人たちも油断していたのである。
「それより、今すぐ逃げないと!」
「蜂が復讐にくるぞ!怒りがおさまるまで、隠れるんだ!」
農夫たちはヨーホイ村に帰るとそのことを触れ回り、文字通り蜂の巣を突いたような騒ぎになる間だった。
価値同報告に一巻の情報がありますので、よろしくお願いします
cont_access.php?citi_cont_id=875042061&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ